１９７５年のアメリカ社会の激動を背景にウォーターゲート事件やマイクロソフト創業、経済危機などその年に生まれた革新的な映画群を深掘りする。当時の社会の混乱がどうクリエイティブな爆発を生み出したかにせまる。映画というレンズを通して生き生きと時代を再現する。７０年代の世界がひっくり返った混沌がいまのポストパンデミックをも連想させる。１９７５年をハリウッド黄金期のピークと転落の始まりと位置づけ時代を構造的に分析する。映画人や批評家、歴史家が交互に語り多角的に検証する解像度のたかいドキュメンタリではある。

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ちょうど50年の節目ということもあるが、1975年に着目したのは慧眼。確かに、この年（アメリカ建国200年前夜）を境に、映画も社会も流れが変わったし、現代の繁栄と迷走の萌芽が見られたわけで。

ベトナム戦争終結、ブラック・スプロイテーション、サタデー・ナイト・ライブ、ビル・ゲイツ、カーター、レーガン、良くも悪くも、ここから始まったというべきか（多少のこじつけも許せる範囲）。

これらが1974年末から1976年初頭に公開された映画を軸に語られていくわけだが、それにしても、この時期の映画ラインナップの充実度には驚かされる。

以下、声に出して読みたいならぬ、画面を静止させてメモりたい名言。

・映画は人を眠らせることも目覚めさせることもできる。私は「目覚めさせる部分」が面白い。

・（『ジョーズ』の大ヒットをきっかけに）最も稼いだ映画を人々が見に行くようになった。

・80年代が見えてくると企業が力を取り戻した。映画はどうでも良くて、金しか興味がない人々だ。

・芸術形式を資本主義の産物に変えたら、何かが失われる。映画による代弁は廃れなかったが。

・1975年はアメリカが何かを言いかけた年だ。それをほんの一瞬、映画や大衆文化が捉えたが、重すぎて我々は目を背けた。

いずれにせよ、70年代映画（特に60年代後半〜70年代前半）の愛好者には堪えられないドキュメンタリー。

あと、余談になるが、中盤で引用されている70年代のシットコム『All in the familiy』で、主人公の娘婿を口ヒゲ長髪で演じているのは、先日息子に撃ち殺されたロブ・ライナー監督。

1975年を境に米映画がどう変わったかを、作品と歴史的出来事を振り返りながら分析するドキュメンタリー。俺は言うなれば今エンタメを縦断的に制覇してる最中だが、だからこそ70年代という横断的ダイジェストをこのタイミングで摂取できたことに大きな意味があった。まさに点と点が繋がり線と線が交わるというやつ。言及される作品のちょうど半分くらい知ってる状態というのもあって、この世で俺ほどこの作品から楽しさ恩恵共に得られた人間もいないと思う。とりあえず、まだ見てないやつを見たらまたここへ戻ってくることにする。