前衛的な冒険活劇の基盤。

絵に描いたような世界を
まだ映像技術も発達しかけの頃に
よくこんなものが作れたなと。

CGとVFXの時代になったら不出来な合成を見なくて済むようになり、一方でこの作品みたいな作り物臭さも失せてしまい、ちょっと寂しいです。VFXの巨大キノコより手作りの中を歩くほうが夢を感じます。
そして1950～60年代はトカゲやイグアナが大活躍。どうやったってトカゲはトカゲで恐竜には見えませんが。何とか工夫してそれらしく見せようと努力した作品は微笑ましいというか、味があって懐かしい。
2024年の感覚ではチャチな作品でしょうけど、個人的には4点献上いたします。　

「5月の最後の日、日の出の頃、スカルタリス山がその道を示すだろう・・・」(アルネ・サクヌッセムの遺品から)


　学生のアレックはある店のショーウィンドウで大きな溶岩の塊を手に入れると騎士の称号を授けられた教授のオリバー卿にお祝いとして贈ります。
　イタリア沖のリーパリアイランドの溶岩と目星を着けたオリバー卿は溶岩の重さに気がつき、中に隠れていた何者かが弱々しい文字を書き込んだ測量用の道具を取り出します(弱々しい文字の原因は、食糧難か骨折によるもの)。
　そこには100年(300年？)も前に行方不明になったアイルランドの地底の研究者で若い頃はアトランティス大陸の研究をしていたアルネ・サクヌッセムの署名があり「地球の中心」への旅の行程が記されていたのです。

　オリバー卿はスウェーデンの地質学者ゲタボルグ教授に手紙で内容を知らせるのですが返事はなく、ゲタボルグ教授はどうやら先を越そうと「地球の中心」の出発点に向かったようなのです。

　オリバー卿は早速アレックとアイルランドへ向かったのですが、到着して間もなく何者かに襲われ小屋に閉じ込められ、アヒルを連れた逞しいハンスに助けられます。

　ゲタボルグ教授の泊まるホテルに着いたオリバー卿、アレック、ハンスの3人は忍び込んだゲタボルグ教授の部屋で教授の遺体を目にします。
　生前のゲタボルグ教授に呼び出されていた婦人のカーラは、夫の死を知ると「地球の中心」へ同行することを条件に、夫が揃えた探検の道具など一式をオリバー卿に提供します。

「5月の最後の日、日の出の頃、スカルタリス山がその道を示すだろう・・・」
　アルネ・サクヌッセムの記した言葉通り、カーラとハンス、さらにハンスのアヒル「ガートルード」を加えた5人の目の前の山肌に『その入り口』は、くっきりと照らされ、確信を持った5人はリーパリアイランドの休火山の噴火口から「地球の中心」に向かいます。

　ゲタボルグ教授を最後に訪ねたサクヌッセム伯爵(アルネ・サクヌッセムの子孫)は地下の全ての所有権を主張してもめたゲタボルグ教授を殺害し、オリバー卿とアレックを小屋に閉じ込めたのでした。

　密かに5人を追い地下道に入ったサクヌッセム伯爵は休息中のオリバー卿達を追い越し、アルネ・サクヌッセムが残した正しい道の目印を消してしまいオリバー卿達を妨害します。
　オリバー卿に捕らえられたサクヌッセム伯爵は許され、一緒に「地球の中心」を目指すのですが、やがてサクヌッセム伯爵の身勝手な行動がメンバーに大きな悲劇を・・・。

　落ちれば奈落の底のそそりたつ壁面の小径、下りの地下道を転がりながら追いかけてくる丸い大岩、袋小路に流れ込む大量の地下水、探検の果てにはぐれてしまうアレック・・・、長旅で食料と、命綱となる灯りの燃料は尽き・・・。公開当時はきっとドキドキのシーンの連続です。

　巨大キノコの森、地底に広がる大海、背びれを持つ大とかげ、北極南極の中間での磁気あらし・・・ハンスが造った巨大キノコの軸のイカダは皆を乗せたまま大渦に飲み込まれ「地球の中心」を通過(地球の中心は超高温の固体じゃなかったのか？？)した一行は海岸に打ち上げられ・・・。
　サクヌッセム伯爵の裏切り行為はハリスの怒りを買い追い詰められたサクヌッセム伯爵は崩れた岩の下敷となり命を落とします。

　オリバー卿達はアルネ・サクヌッセムが旅の到達点としていただろう『伝説の島アトランティス』の廃墟にたどり着き、そこで足を骨折したアルネ・サクヌッセムの亡骸を見つけます。

　アトランティス大陸を発見したオリバー卿達なのですが、たどり着く方法は先行したアルネ・サクヌッセムが遺品に記しているのですが、体験していない還る方法は誰も知らないのです。
　一年近くを費やした世紀の大発見となる地底の旅の報告も、恋人ジェニーの元に還りたいアレックの思いも還り道が見つからなければ・・・。
　そして突然大地を揺るがす地震と共にマグマが・・・。


　今(オリバー卿達)よりも条件の悪い時代にアルネ・サクヌッセムは、灯りが尽きてしまう漆黒の地底世界でどうやって「地球の中心」に辿り着けたのかがわかるシーンと、「地表にたどり着く前に焼け死ぬか、着いてもショック死だよ」と、取って着けたような稚拙な復路は子供の頃に観た時の印象が深く残っていたのですが、その復路にはあえて突っ込まれないような伏線が隠されていました。


　CG馴れした若い世代の人には全編に渡る背景は物足りないかもしれないのですが、ジュール・ヴェルヌのSF・冒険小説『地底旅行』を映画化したはじめて地底探検旅行映画(？)はスリルに溢れたアイデア満載の映画で、後に描かれる地底探検旅行映画のバイブルになったと言えるスタジオ撮影シーンが盛り沢山です。
　下りの地下道を転がりながら追いかけてくる丸い大岩に追われるシーンや還りの乗り物のシーンはきっと「あの映画に使われている」と、思うはずです。
　背びれを装着されたトカゲの作りも良く、着ぐるみやストップモーション・アニメに頼らなかった美術スタッフの表現力(発想)が旧き良き時代を感じさせてくれます。

　何の役にもたたなさそうなガートルード(アヒル)は道に迷ったオリバー卿達を何度も救ってくれるのですが・・・。


「貴方がもし、もう一度あそこへ行くことがあるなら、私は喜んで一緒に行きますよ」ハリスはオリバー卿に笑顔で言うのですがその還り道はもう存在しないのでは？。