今まで見たことありそうでなかった、とんでもなく不思議な空気の映画。こんな興味深い映画なのに、日本ではアクセスしづらいという…。好きな人結構いると思うねんけど。カフカやハクスリーやタチなどが好きなら確実に楽しめる。いきなり冒頭、地下鉄の駅で目を大きく見開いたまま、はげしくディープキスをしてるカップルが画面に現れる。けど、まったく心こもってなさげだし、愛情もなく、ただキスという行為をするためだけにキスをしてる感じ、それを横目で見たあと、近づきつつある電車に飛び込んで自殺する主人公。このプロローグがまさしくこの映画全篇で描かれるテーマを如実に表していたことが、徐々に明らかになる。どこまでも整然と美しい街並み、愛想のいい同僚と上司、何ら文句を言わないガールフレンド、表面上まったく問題が起こらず、怒りも悲しみも煩わしさ痛みもないまま、すべての営みが滞りなくスムーズに運んでいく代わりに、人間的な温もりも、心の奥から湧き上がる喜びも、味も匂いもない、そんな世界で淡々と生きる人々のなか、どうしても不自然さを感じ、馴染むことができない主人公の不可解な不条理アドベンチャーを、ファンタスティックで悪夢的美しさに満ちたシュールな映像と音楽で描き出す、ゾッとするほどこわ〜い寓話。ほんとに映像がすばらしくて、それが謎に満ちた本作の最大の魅力だと思う。ある意味最初から最後まで意味がわかりにくい話なのに、まったく退屈することなく、没頭できるのは、精緻に構築された映像世界に魅せられ続けるからだと思う。終盤には下手なホラー映画より断然こわいとこにまで行ってしまって、うわーほんと面白いなーと思った。でも、寓話とは言え、こういう現実って確実に存在するよな。波風を立てないためだけに、人間的感覚を麻痺させて日常を淡々とただ生きている人たち。こういう世界にだけはぜったい馴染みたくないと思う。やっぱ泥臭さも苦悩も歓喜も、あってこそのライフだな。

カフカの「城」を想起させる不条理ワールドはいいが、狙いが見えてしまいそこまで乗れなかった。
北欧映画の無機質な色合いはどうも合わない…
キスシーンは衝撃

• #tjr2017

んー駄作っ