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不知火海
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『不知火海』に投稿された感想・評価

私が水俣病事件に関心を持つなかで、とりわけ強く印象に残ったのは

ユージン・スミスの写真集『Minamata』(1975年)、
桑原史成の写真(1962年9月15日、富士フォトサロンで写真個展「水俣病―工場廃液と沿岸漁民」を開いた)、
小説と言っていいのか分からないが『苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子(1969年)、
原一男のドキュメンタリー『水俣曼荼羅』、(2021年)

そして土本典昭監督のドキュメンタリーだ。(『水俣一揆』『水俣 患者さんとその世界』)

1965年、公式に水俣病が確認された。が、放出が止まったのは1968年。
1959年に熊本大学や厚生省の研究班が危険性を国や企業に報告してから約10年が経っていた。

水俣病事件は2023年の今も解決していない。

水俣では、今だに水俣病の話しはタブーだと以前観たドキュメンタリー『水俣曼荼羅』で被害者の方が言っていた。

石牟礼によれば、
「私が小さなころ、水俣は人々の誇りでした。チッソがあるからです。」近代化の象徴だった。地元の誇りだった。

 1960年代当時、水俣市民の多くはチッソで働いているか、もしくはそこで働く人を相手に商売をしているなど、家族、親戚、知人の誰かがチッソと関係があった。

周囲に対する気兼ね、目に見えない圧迫、金が欲しいから等々の中傷や非難、差別があり自分が水俣病であると言うには1960年代や1970年代ではあまりにもハードルが高かった。今も低いとは言えない。患者自身が水俣病と認めたくない、もしくは家族が身内に水俣病患者がいるということを否定したいなど病気以外の面でも被害者を苦しめた。

海水に含まれるメチル水銀が病因と明らかになった後も、行政との間で「患者認定」と被害者補償を求める裁判闘争が続いている。
裁判で負けても国も県もほぼ無視、放置している。(その様子は『水俣曼荼羅』で取り上げられている)

今回、観た『不知火海』はカラー作品。
1975年のドキュメンタリー映画だ。
海、海、海。

雲の隙間から太陽の光がさす不知火海が印象に残る。

このドキュメンタリーでは水俣病第1次訴訟で勝訴した後の患者たちを撮影していく。それから水俣市以外にも水俣病になっている可能性が高い近隣の島にもカメラを向ける。

土本監督は最初に水俣病の被害者を撮影する際についてこう言ったいた。「一番苦労したのは僕をいれて4、5人のスタッフが患者さんを囲んでいますから威圧感を感じるのが当然です。こちらに対する安心感をどう作ってもらえるかをいつも考えていました。」それで「誰でも人に一番見てほしいもの、撮ってほしいもの、分かって欲しいものを、必ず一つ二つは持っているんです。例えば自慢のメジロを飼っていたり、かわいい子猫とか、水俣病とは関係ないけれど、とても慈しんでいるものがある。それを最初に撮ることにしたんです」
その態度はこのドキュメンタリーにも感じられる。

このドキュメンタリーの中で忘れることの出来ないシーンがある。
「一人の若い胎児性の女性患者が原田医師に『頭の手術は出来ないのか』と質問し、何を見ても美しいと感じられず、自分のことがわからないと泣く。その問いに驚き原田医師がこう聞き返す」
「このまま治らなかったらどうする?」
原田医師は専門家で、治らないことは誰よりも分かっている。それでも患者さんの思いの中に「『治ったら何をしたい!』というものがあるかもしれないと、ふっとそれを訊く気になったのでしょう。原田さんだからこそ訊けたと思った。だからその質問の言葉と表情は(カットした方がいいと外野から言われたが)残したままにしておきました。観る人がこの矛盾したやりとりをそのまま受け取ってほしいのです」(土本典昭)
スタッフは撮影しながら泣き、土本も撮影後帰る道すがら、車を途中で停め、外に出て泣いたと言う。

このシーンの後に海辺の防波堤に立っている坂本しのぶさんのカットがはいる
『水俣曼荼羅』で
原監督に「おんな寅さんみたいだね」と言われた坂本しのぶさんがまだ10代の姿で映っている。
『水俣曼荼羅』では片想いに終わった数々の恋バナを語り、そのお相手たちに会いに行く坂本しのぶさん。
調べてみると凄い人だった。
1956年に水俣の漁師の次女として生まれ、
2才の時に水俣病患者だった姉が3才で亡くなる。
1962年6歳のときに「胎児性水俣病」と認定された。
1969年、12歳のとき、母・フジエさんと共に水俣病第1次訴訟の原告となり、16歳のときに勝訴。
1972年には国連人間環境会議が開かれたストックホルムで水俣病を訴えた。
水俣病の問題を世界に伝えるとともに、加害企業や行政などに対し「水俣病は終わっていない」と訴え続けている。
依頼した原監督も監督だが、引き受けた坂本しのぶさんもよく引き受けたと思った。

ユージン・スミスが撮影にこだわった田中実子さん(『水俣曼荼羅』にも出られている)もほんの数秒ほど映っていた。

石牟礼道子と仲の良かった水俣病患者の杉本栄子さんも出ていた。
 杉本さんは後年、2008年に癌で死期が迫っていた時にこんな言葉を石牟礼道子さんに話したという。
「もう、私たちは許すことにした。全部許す、日本ちゅう国も許す、チッソという会社も許す、色々差別した人も許す、許さんば、きつくてたまらん。それで、皆の代わりに、私たちが病みよっとばい」。
 石牟礼道子はTVでこの言葉についてこう言った。
「代わりに病んでいる人たちから許されて生きている...(我々、日本人は)罪なことですね。...。代わりに病んどるって。日本人の代わりに」と。
もちろん、このドキュメンタリーの頃は許してはいない。
リハビリ施設の明水園の胎児性水俣病患者を中心に撮った傑作の中の傑作。
みんなも言ってるが、海岸での患者の少女と医師の対話を背後から撮ったショット、とカメラのパンの場面はこの世に現存する全ての映画の中で最も美しいかもしれん。ピンマイク録音の効果も冴え渡っている。

何度も流産した女性の話が長い割になにいってるかよくわからんくて良かったのと、仕事のやりがいを語る男性も印象深かった。(ちなみにこの2人は『水俣 患者さんとその世界』にも出演している。)
患者2人による二人羽織の場面な中々強烈である。

青い海に浮かぶ白い帆船の群れ(紳士協定のため風の推力のみで底引きするらしい)、ラストの海のショットに被さる歌、海にまつわる場面が全てよすぎる。神。
フィルマークスでは、情報一切無し。映画って何なんでしょうね?

たまたまですが、スクリーンで想思社のオープニングイベントに遭遇。『みな、やっとの思いで坂を登る』、70年代の水俣湾、有明湾に思いを致す。

明日は『みなまた日記』と『水俣 患者さんとその世界』に伺います。どうやったら若い人たちに劇場に来ていただけるのでしょうか…

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