【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
　○: 観客の緊張感を煽る
　○: 超常現象なし

◆作品名:
インサイド・マン (2006)
◆サスペンスの要素:
・銀行強盗一団との攻防

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・白昼、マンハッタンの中心で銀行強盗事件が発生。敏腕捜査官フレイジャーらNY市警の面々は銀行を包囲し、人質を取って立てこもった武装犯グループと交渉を始めるが、一味のリーダー、ダルトンの巧みな計略に対応を苦慮させられる。
・膠着状態のまま時がむなしく過ぎていく中、同銀行の会長ケイスから直々に指名を受けた女性弁護士ホワイトが犯人グループとの交渉役として現場に姿を現わすが…。

〈見処〉
①それは、一見誰が見ても完璧な銀行強盗に思われた…
・『インサイド・マン』は、2006年に製作されたアメリカ映画。
・本作は、ニューヨークを舞台に数々の映画を演出してきたスパイク・リーが、新人脚本家ラッセル・ゲワーツが手掛けた脚本をもとにメガホンをとった密室系の痛快クライムサスペンス。
・スパイク・リーと『マルコムX』にて共作しているデンゼル・ワシントンを筆頭に、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスター、ウィレム・デフォー、クリストファー・プラマー、キウェテル・イジョフォーら、実力派スターによる知能戦は見応え満点。スパイク・リーの新境地作品として、全米ナンバーワンヒットを記録している。

②結び…本作の見処は？
犯行手口や人物描写は、NETFLIXドラマ『ペーパーハウス』のほうが勝る。
○: 出演陣がとにかく豪華。刑事役のデンゼル・ワシントンと主犯格クライブ・オーウェンの知能戦を中心とした、演技合戦が見もの。
○: 発砲や戦闘などのアクション・シーンがなく、駆け引きを中心に物語が展開。最後まで善悪の境界線が不明瞭で、敵と味方の判別がつかないスリリングな作品。
▲: 作中に数回差し込まれる、複数容疑者の尋問シーンにて、犯罪の結末が容易に予測出来てしまい「衝撃の結末」とは言い難い。
▲: キャラクター描写が弱く、とくにジョディ・フォスター扮する女性弁護士の浅さにはガッカリ。人種格差問題に固執するスパイク・リー監督であるが、本作ではその要素は不要だったのでは？


2019年にはキャストを刷新したビデオスルーの続編が製作されているが、B級作品臭が漂うので、ウォッチ・スルーしたい。

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『インサイド・マン』
原題 　INSIDE MAN
製作年 2006年。上映時間 128分。
銀行強盗グループと事件解決に向けて奔走する捜査官、そして現場に駆けつけた女性交渉人らの心理戦を描いたサスペンス。
監督はスパイク・リーが務め、監督とは『マルコムX』以来2度目のタッグを組んだデンゼル・ワシントンが主人公の捜査官にふんする。

銀行強盗をクライブ・オーウェン、交渉人をジョディ・フォスターが演じ、ハリウッドを代表する演技派たち豪華キャストの手に汗握る演技合戦が見どころ。
マンハッタンの銀行で強盗事件が発生し、犯人グループのリーダー、ダルトン（クライブ・オーウェン）は人質を取って銀行に立てこもってしまう。
現場に急行した捜査官フレイジャー（デンゼル・ワシントン）は事件発生から7時間経っても行動を起こさない犯人たちに対し、時間稼ぎをしているのではないかとの疑問を抱き始める。

個人的に今作品は巧みなスリラーだと思った。
腕力よりも頭脳を美味しく提供することで我々を常にイジってくれる。
また、ニューヨークの雰囲気を存分に味わえる今作品は、『狼たちの午後』と『ユージュアル・サスペクツ』のような巧妙なサスペンスを掛け合わせたような雰囲気を持ってた。
スペインのテレビドラマシリーズ、韓国ドラマでもリメイクされた『ペーパーハウス』は少なからず今作品の影響は受けてると見受けられた。
クライブ・オーウェンの観客に向けた印象的なモノローグが、手がかりに注意を払うよう警告するのに続き、オープニングシーンでは、スパイク・リー監督が初めてニューヨークのさまざまな人種や移民の衝突や溶けない"鍋"を、それ自体を褒める目的ではなく、ただの完璧な犯罪強盗映画になりかねなかったものを盛り上げて、消えたような"禍"の"過"ちの"渦"を作り色づけるために使用していることが設定されています。
コニーアイランドからブルックリンを縦断し、世界各地に散らばる多様な民族の居住区を経て、世界の金融権力の中心であるウォール街のガーゴイルまで、一転して、ダンスとインドのディアスポラ音楽を融合したバングラの旗手、パンジャービーMCによるシンボリックなボリウッド・ジョイントのビートに乗って執拗に目的に向かって進んでいく。
警官や銀行員の中に様々な人種がいることが最初に紹介されたとき、リー監督が『サマー・オブ・サム』(1999年 )で見せたようなアバウトなステレオタイプをまたやるんかぁって心配したが、その代わりに、ラッセル・ゲヴィルツのジェットコースター・デビュー作の脚本の中で、赤ヘル、袋小路、最後の結果がすべて巧妙に設定されていた。
アルバニア人、シーク教徒、アルメニア人、ユダヤ人の祖母、人種差別主義者の警官、性差別主義者のパンク、金持ちのWASPパークアベニューのCEO、それにニューヨークのアジア人、ラテン系、労働者、政治家、老若男女の虹を見ることができ、巧みなのセリフは、メインアクションにほとんど勝る生のアイデンティティーの交換のポイントになっている。
多くのセリフが笑を誘い、皮肉に満ちていました。
オーウェンは、『ダイ・ハード』のアラン・リックマンから『ファイアウォール』のポール・ベタニーまで、我々が見てきた冷たい不良英国人のステレオタイプを演じてから、自分なりの正しい行動をとる。
一方、利口な生意気坊主は、自分の暴力と人種差別のTVゲームで銀行強盗を驚かせながら、どの第二次世界大戦映画劇団にも必ずいるブルックリンというあだ名を持った新入りを面白おかしく思い出す。
誰もが偏見や先入観や取引を持ち、強盗の物理的かつ戦略的なマスク（偶然にも『Vフォー・ヴェンデッタ』におけるガイ・フォークスのマスクの象徴的使用を想起させるし、勿論、『ペーパーハウス』も）と巧みな編集による位置のシャッフルによって混乱させられる。
狡猾なデンゼル・ワシントンによる人質のフラッシュフォワード尋問は、他の刑事役のときよりも鋭い台詞で舌を巻くのを楽しんでいるようで、全体に粒子の少ないルックで不気味に統合されており、何が本当に起こっているのかを明らかにする手がかりを与え、たとえ彼があまりにも怪しく見えても、見た人について何も決めつけることはできないことを強調している。
これは、視覚的なパンくずを垂れ流しながら、常に相手を推測させる物語。
因みに、尋問シーンはほとんどアドリブやそうです。
また、ジョディ・フォスターが、アクションヒーローではなく、おしゃべりなタフな女子を演じているのは嬉しい。
たとえ彼女のお調子者のフィクサーが、プロット上では100％意味を成さないとしても、911を称える旗の前で極悪非道の交渉をするのは、アメリカ流について苦笑もの。
クリストファー・プラマーは、この当時、上品な腐敗したタイプを繰り返しており、彼の説明はストーリーに対して少し都合よく提供されすぎていたかな。
ワシントンの相棒役のチウェテル・エジョフォーとテクノクラート役のウィレム・ダフォーは、抑制の効いた役柄で終始使われていない。
このジャンルでは珍しく、ワシントンのセクシーな恋人が同僚の警官として出てくるんは評価できるけど、彼女が彼の半分の年齢と思われるのは残念やった。
いつもはコミカルなダリル "チル "ミッチェルが、ちょっとシリアスに登場したのは良かった。
ニューヨーク市警の緊急時の対応、市役所の現市長のブルペンオフィス、行政の実在の人物の紹介など、プロダクションデザインの細部に至るまで、ニューヨークの正確さが感じられ、とても楽しめました。
サウンドデザインも、リアルで手に汗握る体験を後押ししている。
テレンス・ブランチャードの音楽は、リー監督の他の作品に比べるとジャジーさはなく、スクリーンに映し出されるアクションや人間の多様性にマッチしていた。
エンディング・クレジットは、俳優のペルソナを一致させることで、非常に大きなアンサンブルに全神経を集中させる寛大さを持っていたかな。
暴力は現実的というより暗示的で、それでも怖い。
台詞には露骨な冒涜が横溢しているけど、個人的には嵌まった。
面白い作品でした。

　狭い部屋でも、刑務所の部屋と普通の部屋では大違いだというダルトン・ラッセル（クライブ・オーウェン）の独白。ニューヨーク・マンハッタン、彼をリーダーとする4人の銀行強盗が、パーフェクト塗装サービスを装い、マンハッタン信託銀行を襲撃する。その手口は鮮やかで、銀行員は呆気に取られるが従うしかない。たまたま銀行前を通りかかった警備員の通報を受け、NY市警のフレイジャー（デンゼル・ワシントン）とミッチェル（キウェテル・イジョフォー）は現場に急行する。フレイジャーは以前関った麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに、今回の事件は汚名返上のチャンスだと張り切る。また、銀行の取締役会長アーサー・ケイス（クリストファー・プラマー）の命を受け、ニューヨークでも指折りの弁護士マデリーン・ホワイト（ジョディ・フォスター）も呼び出される。

　閑職に追い込まれそうな刑事フレイジャーとベテラン白人警部ジョン・ダリウス（ウィレム・デフォー）との対比。一見ただの銀行強盗に思えた一味は、「ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある」との事細かな要求をするが、人を殺すでもなく、金を盗むでもなく、銀行を襲う必然性がなかなか見つからない。そこに今作の最大の旨味は隠されている。最新作『ブラック・クランズマン』に見られた黒人×白人の入れ子構造のような二重性は、主人公と犯人とを奇妙な因果で結ぶ。犯人が仕掛けた完全犯罪トリックの全貌が掴める中盤以降、いかにも白人インテリ・エリートのマデリーンの介入あたりから、物語が失速するのはやや残念だが、ナチスの灰色の影をチラつかせたクライマックスまで徹底したエンターテインメントで迫る。