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千羽鶴
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『千羽鶴』に投稿された感想・評価

増村版も大好きだけど、吉村信者なのでやっぱりこっちがスキ。宮川一夫の撮影に伊福部昭の音楽、完璧なのです。そして「千羽鶴」においてほぼ主役なのではないかと思わせる栗本役の杉村春子センセイの素晴らしさ。線路を渡る後ろ姿ひとつでどんな人物なのかがわかる。そして吉村センセイは「誘惑」の杉村センセイと同じような嫉妬に狂った表情をこの作品でもさせていてゾッとする。
4.5
会話シーンを撮るのがめちゃくちゃ上手いのでメロドラマ映画としてとても面白い。石段の上で菊治と太田夫人が話す場面は物凄い。背景の大きな円覚寺の門と前景の菊治を望遠レンズによる撮影で圧縮し、対比させるので、話している二人の存在が大きな環境の中に位置づけられるような感覚がある。続いてカメラが後退移動し、そこへ不意に太田文子がフレームインするショットも見事で、完璧な構図からカメラが移動していくだけでも緊張感と動きのサスペンスがあるのに、そこへ人がフレームインすることでさらに意表を突かせるような効果を生んでいる。軽井沢の別荘で夜、菊治と太田夫人がテラスで話をする場面では、コンティニュイティラインを跨がない非常に古典的なショット/切り返しショットが徹底されるが、場面の終わりで太田夫人が菊治に抱き着くことで二人が初めて同一フレーム内のクロースアップで捉えられるので、切り返しによって生じた断絶の感覚を一気に超えるような効果を生んでいる。このことは二人の禁じられた関係性を示唆し、それを太田夫人が踏み越えてしまうことを表しているように思う。後半は杉村春子があまりにも悪く描かれ過ぎていて笑ってしまう。彼女のキャラクターの良さって一見お節介で俗悪に見えても、そういう仕方でしか他者と関われない人だと分かるところにあるような気がしていて、単純な悪女にしてしまうと良さが半減する。心なしか雷雨のシーンも、ガラス越しのショットで二人が話している内容が聞こえてこないという非常に実験的な演出をしているにもかかわらず、同じ雷でフラッシュバックするやり方や杉村のクロースアップで照明が目にピカッと当たる感じが非常に俗っぽい。ただ、杉村春子が森雅之が脱いだ服を畳むシーンは非常に面白い。立っている男に対して座っている女という位置関係は明らかに男性の優位性を示すもので、森がぞんざいに脱いだ服を地面に落とすさまは明らかに杉村に対する当てつけなのだが、それでもなお杉村が森を圧倒しているという印象を抱く。その印象は恐らく杉村が服をたたむ動作の大胆さと森が服を脱ぐ仕草の緩慢さが対比されているからだと思うが、このジェンダー的な力学を反転させる能力こそ、杉村春子の凄さだと思った。
理不尽とも捉えられる一方的な求愛に、多少の不快感はあるものの、戦時中に馳せた愛とは凄まじい物だと再認識。行き場のない感情も、抑えきれない欲望も、理性だけではどうにもならない。愛することが人を生かしもすれば、人を壊しもする。恐ろしい映画だった。

吉村公三郎さん、お恥ずかしながら名前も聞いたことない様なレベルでしたが、この解説付き上映と休日が重なったことで出会えました。

第一印象としては
「昔の映画なのにセリフが聞き取りやすい!」
「画面構成楽しい!」「ごめん遊ばせ」

特に映像表現で印象的だったのが障子に人物の影を映し、嫉妬心を浮き彫りにする場面。ウィリアム・ワイラーを意識した画面の奥へと視線を導く縦方向の構図。

人物の配置や空間の奥行きそのものから、当時の暮らしや人間関係を伝えていく。まさに“映画的ストーリーテリング”で衝撃を受けました。

映画批評家であり、早稲田大学文学部教授でもある藤井仁子さんによる「千羽鶴(1953)」解説トークが上映後に行われ非常に学びになりました。

更にフィルム上映を見れたのは恐らく初だと思うので本当に貴重な映画体験でした。

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