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悪の神々
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『悪の神々』に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

3.3
 革ジャンを着込んだ男が長い刑期を終え、ミュンヘンの刑務所を出所する。そこに迎えの訪問者などいない。男はミュンヘンの街をあてもなく彷徨いながら、やがて一軒のバー「ローラ・モンテス」を訪ねることになる。今作はファスビンダーの処女作である『愛は死よりも冷たい』の正当な後日譚である。前作では監督であるファスビンダー自身がフランツを演じていたが、今作では見た目もキャラクターもまるで違うハリー・ベアが陰鬱な役柄を継承する。前作のクライマックス、ブルーノとヨアンナとフランツの緊密だったトライアングルが崩れ、銀行強盗は失敗に終わり、後部座席でブルーノはあっけなく命を落とす。どこに怒りをぶつけて良いのかわからないフランツは「娼婦め」とヨアンナに決別の言葉を吐くのだが、その逃亡の道中には明るい未来など一片も見えない。殺し屋と娼婦の間柄だった男と女の関係が、刑期を終え、ハンナ・シグラと再会した際の主人公の驚きは想像に難くない。

ハンナ・シグラが改名した「ローラ・モンテス」とは云うまでもなくマックス・オフュルス監督の傑作ミュージカル映画『歴史は女で作られる』の主人公の名前であるが、かつて男に奉仕するだけだった娼婦は、皮肉にも場末のスターへと見事に昇格を果たしている。彼女が歌うマレーネ・ディートリヒ『私のブロンドのベイビー』の退廃漂よう美しさは、これまでのファスビンダー作品のヒロインには見られなかった洗練された味わいを誇る。かつて娼婦だった女の優雅な歌声と自信、それを苦々しい表情で見つめる男の対比的構図。前作のクライマックスで破綻していた2人の関係性の上に、更に泥を塗るかのような陰惨さはファスビンダーの専売特許である。自分のために罪を被った男の出所を慎ましく待つ任侠映画のヒロインのような慎ましやかな女はここには存在しない。ベッドの上で頬を摺り寄せるヨアンナの至福の表情に、フランツの苦み走った何とも言えぬ表情。この絶望的な2人の距離感と対比するかのように、その後の出会いがフランツの運命を変えることになる。ヨアンナの束縛に耐え切れず、兄の元を訪ねた弟は、無残にも転がった死体を目撃し、再び絶望感に苛まれる。『愛は死より冷たい』の復讐は今も地続きなものとして、フランツに避けられない火種を燻らせる。だがフランツは愛する兄を殺したかつての仲間であるゴリラと出会い、『愛は死より冷たい』でブルーノと交わしたような深い友情で結ばれてしまう。

今作は『愛は死より冷たい』、『出稼ぎ野郎』の演劇的なフレームワークとは対照的に、ファスビンダーが演劇性を脱皮し、初めて本格的にフィルム・ノワールに挑戦した作品として記憶される。最低限スピーディな物語の運び、見違えるほど性急になったカット割りや場面転換によるドラマ性は前2作の固定されたカメラによる絵画的な構図から一転し、しっかりとしたリズムを刻んでいる。『愛は死より冷たい』に顕著だった白を基調とした白昼夢のような映像も鳴りを潜め、フランツの内面に呼応するかのように、今作では光と影の鋭いコントラストが強調される。その最も顕著な例は暗闇の中で扉を開けたマルガレーテとフランツの抱擁の場面だろう。暗闇の中で光を探し続けた一度挫折した男は、この魅力的な女性との出会いにより息を吹き返す。このマルガレーテとの出会いと共に、フランツを蘇生させるのはゴリラとの一蓮托生の関係性に他ならない。ストリートで出会った2人とマルガレーテは、もう一人の協力者であるかつての仲間ジョーを自らの仲間に引き入れようと彼のアジトを訪ねることになる。ここでファスビンダーのカメラは唐突に空撮となり、フランツ一味の車の動きを逐一追う。このファスビンダーの突然の空撮ショットの挿入が、ヌーヴェルヴァーグの旗手ジャン=リュック・ゴダールの影響色濃いのは言うまでもない。ファスビンダーは主人公の前にピストルと女が登場する物語を、ゴダールに捧げている。

クライマックスで図らずも再登場したスーパー・マーケットの場面。この素晴らしい動線の長回しのフレームワークは圧巻である。『愛は死よりも冷たい』同様に女の密告が男たちの野望を打ち砕く悲劇的なクライマックスの退廃的な世界。そのことを同じように嘆いてみせるヨアンナ、マルガレーテの胸の内と愛情の欺瞞を暴いてみせるファスビンダーの手腕。シュレンドルフ『バール』の現場で一緒になったギュンター・カウフマンとの運命的な出会いと、ヨアンナ、マルガレーテという2人の女性との関わり合いを通じ、極めて商業映画に近付き、ジャンル映画に奉仕した初期ファスビンダーのターニング・ポイントとなる作品である。冒頭に流れたRay Charles『Here we go again』の破れかぶれの素晴らしさ、クライマックス前、情報屋がふと口ずさむメロディはロバート・オルドリッチ『ふるえて眠れ』の主題歌に他ならない。今作はそういう数ある映画史の引用を通して、フィルム・ノワールを再構築したファスビンダーらしからぬ珍しい作品なのである。
mi

miの感想・評価

3.7
ハンナシグラの憂いを帯びた表情を愛でる作品。
とにかくオープニングがくそカッコいい。とぶぞ!
ファスビンダーの作品群の中ではかなりまともなノワール映画で、とりわけ内容的に特筆すべき点はないように感じたけど、主人公が寡黙で感情的でないのはかなり珍しい部類に入ると思う。
唐突な空撮もさることながら、友達の家の家畜小屋にダイブする黒人、急なガチ格闘、まだ強盗もしてないのにぶっ殺しといて一仕事してやったぜみたいな顔する奴など、トリッキーなシーンもあってやっぱとにかくファスビンダー好きだわ。
エロ本買ってたのファスビンダーだろ!
sonozy

sonozyの感想・評価

4.0
引き続きR.W.ファスビンダー監督の初期作。
ムショから出たイケメン男が、無気力モードで漂うノワールテイストな作品。

ムショから出たフランツ(ハリー・ベアー)を捉えるトラッキングショット、マルガレーテ(マルガレーテ・フォン・トロッタ)が営むカフェ、壁に埋め込んだスロット風ゲーム、ジュークボックスから流れる♪にのせて二人が無言でダンス&シンプルなクレジットが流れるまでのオープニングのカッコよさ。

フランツは「Lola Montez」という店でストリッパーをしている元カノのジョアンナ(ハンナ・シグラ)や、フランツの兄マリアンと再会。

マリアンの妻マグダレーナ(イングリット・カーフェン)や、ある事件を追ってジョアンナに近づく刑事も登場。
一番奇妙な役柄の女性カルラ(Carla Egerer)は、籐の小さなトランクケースにエロ本を入れていてそれを売ったり、何故か色々な情報を持っていてそれを売ったりしている。
全体的にノワールなテイストとカメラワークのカッコよさが味わえますが、ちょいちょい可笑しみシーンもあるのが楽しい。

フランツがジョアンナと離れマルガレータと過ごし、愛称ゴリラと呼ぶ仲間のギュンター(ギュンター・カウフマン)や、ジョーという郊外に夫婦で暮らす男と再会すると、再び犯罪を計画する・・・

この時代のハンナ・シグラは魅力的です。
それと、出たがりなのか(笑)ファスビンダー監督、本作もちょい役で登場します。

それから、ギュンター・カウフマン。このジャケ写が分かりにくいですが、右のシャツを脱ごうとしてる男です(左はフランツ)。
愛称通りゴリラ系のルックスの彼は、当時既婚でしたが、バイセクシュアルのファスビンダー監督のアプローチでラブな関係になったようで、この二人の関係を女性に置き換えたのが『ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)』みたいですね。

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