カミーロ・カステロ・ブランコという作家が、いかに偉大な人なのかをさっぱり知らないので、どう観たら良いかわからないというのはあるんだが、俳優が演者／演じている存在として混在して登場するのは、面白い趣向だった。常に虚構と囁かれているようなものだから、平凡な伝記映画に陥ることがない。様々な問題も注釈のように語られて、良い意味で感情移入を許さない造り。

ためらいないカメラ目線。口述筆記する女性を手前に配置し、奥の安楽椅子（？）で葉巻を燻らせる。「庭に続く階段の踊り場」とその階段に配置される複数の人物。冒頭、簡易舗装された道路の上を回転する馬車の車輪のアップ。ラスト近くではカメラは透明アクリル板に覆われていたのではないか。風にそよぐ木立のカーテンショット。ラスト近くにはカメラは木立にもう少し寄る。ゆっくりと移動するカメラ。車輪の音が聞こえるが、カメラの動きとは同期しない。教会。さらに寄るカメラ。「寒い」。大胆な空間の切り取り方。音楽にはワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」「バルジファル」を使用、とのこと。

月並みな例えにはなりますが、窓から差し込む光がハンマースホイのようで、静寂が画面に漂っていました。
窓からの陽光にそぐわない雨音が心地よく、夜更かしした次の日には沁みます。