ソファーにどかっと腰を下ろす紺色のジャンパー姿の男、びっしりと生え揃った白髪と髭、男はアルフレッド・ヒッチコックの58年作『めまい』を叩き台にゆっくりと話し出す。高所恐怖症の主人公ジェームス・スチュアートに訪れた絶体絶命の危機に大学時代の男は魅了され、映画監督を志す。今作は1940年生まれで、77歳になったブライアン・デ・パルマの50年強にも及ぶキャリアを、デ・パルマ自身が一作毎に解説したドキュメンタリーに他ならない。政治的に先鋭だった68年の『Murder a la Mod』から始まり、最新作である2012年の『パッション』まで1時間50分に及び語り尽くしている。ニュージャージーに生まれ、イタリア系の外科医だった父親の影響で幼い頃からメスや手術を見慣れたデ・パルマ家の三男坊は、オペに次ぐオペの連続で忙しかった父親とは疎遠な幼少時代を過ごす。カトリック教徒だった両親の影響で宗教に心酔した少年時代、高校卒業後は、コロンビア大学で物理を学んでいたが、在学中に『市民ケーン』『めまい』に衝撃を受け、専攻を映画に変える。ユニバーサル・ピクチャーズから奨学金を得てサラ・ローレンス大学修士課程に進んだデ・パルマは、徴兵拒否の実体験を基にしたロバート・デ・ニーロ出演の群像劇『ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン/BLUE MANHATAN2・黄昏のニューヨーク』で一躍注目を浴びる。