りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 87ページ目

僕はイエス様が嫌い(2019年製作の映画)

3.5

ひとりの少年の心の揺らぎを丹念に追うことで、ミニマムな視点から世界を描こうとするドキュメンタリーのようなアプローチと、子供たちの生の感情を引き出そうとする距離は是枝裕和に通ずるものがあるかもしれない。>>続きを読む

君は月夜に光り輝く(2019年製作の映画)

2.5

永野芽衣のパシリと化す北村匠海が完全に受けの芝居のみとなっており、演技的にボールを永野芽衣に投げ返さないので、勝手に人生を悲観的に捉えていた永野芽衣が、人生を肯定的に捉えるきっかけが分からず、非常に閉>>続きを読む

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.5

冒頭の水溜まりから、破水、さらには海と、水のイメージをモノクロで重ねつつ、無機質な死と有機的な生。男に頼らず生きていく女性たちの寄り添いを、一定の距離間で傍観するかの如し。

キュアロンの私的映画であ
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運び屋(2018年製作の映画)

4.5

もはや凄みは影を潜め、高齢により皮と骨が目立つようになったイーストウッド。そんな自らの老いにシンクロするかのように、本作は一切の贅肉をそぎ落とし、まるで枯山水のような映画話法の境地に達したような感さえ>>続きを読む

沈丁花(1966年製作の映画)

3.8

父親が死んで歯科医院を継いだ長女の京マチ子、次女の司葉子。既婚で子持ちの三女の団令子。婚約が決まった四女の星由里子。まずこの四人が高峰秀子の衣装監修のうえ美しい着物姿で横一線で歩いていく冒頭から心躍る>>続きを読む

翔んで埼玉(2018年製作の映画)

3.6

冒頭でエクスキューズとして原作者が改めて本作はフィクションであることを強調するものの、東京民から迫害され差別される埼玉民の構図は、部落問題やホロコーストさえ連想され少し驚く。ただしそれをひたすら劇画調>>続きを読む

グリーンブック(2018年製作の映画)

4.4

人種問題の描き方についてクローズアップされている本作だが、物語の本筋は立場も性格も正反対の男のバディものであり、行って帰ってくる過程で様々な体験をし、元の場所がまた違ったように見えてくるロードムービー>>続きを読む

岬の兄妹(2018年製作の映画)

4.3

本作はまず兄妹を足元から映し出す。片足を引きずりながら歩みを進める兄と、段ボールで日光を遮断した室内に鎖で繋がれる妹。あるいは地べたに這いつくばって土下座し、砂浜で元雇用者にもみ合いになる。この最底辺>>続きを読む

あの日々の話(2018年製作の映画)

4.2

三浦大輔の戯曲から着想を得た玉田企画の舞台原作。カラオケルームという密室で繰り広げられる、あるサークルの一夜の物語。同調圧力の中でマウントを取り合う先輩後輩。誰をお持ち帰りできるかという男女のチーム戦>>続きを読む

アリータ:バトル・エンジェル(2018年製作の映画)

3.7

「トータル・リコール」「A.I.」「ローラーボール」といった先行したSF映画の世界観やキャラクター造形に既視感はあるものの、本作が突出しているのはアリータの独特の実在感だろう。脳だけは傷つかずに捨てら>>続きを読む

パドルトン(2019年製作の映画)

3.4

ガンで余命宣告を受けた階下の親友の安楽死を幇助することになる男とのバディもの。

巨大な壁に向けてテニスボールを打ち、跳ね返った球がドラム缶に入れば成功というスポーツや、誰にも知られていないカンフー映
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半世界(2018年製作の映画)

4.0

田舎の家屋での場面も、扉の開け閉めや敷居をまたぐというさりげない描写で登場人物の心情を表現する巧みな描写は見事。特に北海道から戻ってきた長谷川博己の家に稲垣吾郎が手伝いに行き、話しかけようとすると雨戸>>続きを読む

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.4

英国王室を舞台にした豪華絢爛なコスチューム劇の様相を見せる本作は、ランティモスの手にかかれば一筋縄で行くはずもない。魚眼レンズによって効果的に映し出される閉鎖的で歪んだ世界は、支配欲、性欲、承認欲とい>>続きを読む

ビール・ストリートの恋人たち(2018年製作の映画)

3.5

前作「ムーンライト」に続き、バリー・ジェンキンスの構築する世界観は、儚く、脆く、それでいて美しい。心の琴線に響く劇伴のリフレインと、微かな音への心配り。あるいは、黒人の肉体が神々しく見えるような画作り>>続きを読む

アクアマン(2018年製作の映画)

3.1

ジェームズワン監督による海洋冒険もののアメコミ映画は、世界の大海を地域や種族に分けて無数のキャラクターを創造し、海の王座を巡って争う壮大な兄弟ゲンカに巻き込む形でバトルを繰り広げる。その量と手数の多さ>>続きを読む

ジュリアン(2017年製作の映画)

3.7

冒頭から子供の親権について夫婦双方の弁護士が意見を早口で述べる。18歳になった長女は自由だが、まだ少年であるジュリアンは手紙での必死の訴えも虚しく、2週間に1回は父親と一緒に休日を過ごさなければいけな>>続きを読む

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.5

韓国の貧富の格差を背景にした、神隠しであり、神殺しの映画であり、どこか神の存在を意識させる傑作。

まず、農村出身の青年が幼馴染の幻影を追い続ける片想いのラブストーリーとしてあまりにも切なすぎる。整形
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ファースト・マン(2018年製作の映画)

3.8

本作はニールアームストロングを主人公とした実話であるが、彼の英雄譚という人類史における客観的足跡ではなく、あくまでも彼の主観から、主にクレアフォイ演じる夫婦の関係性に焦点を当てる作りになっている。冒頭>>続きを読む

ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点-​​(2019年製作の映画)

2.9

ソダーバーグが全編iPhone撮影かつ、ドラマパートに実際の選手の独白を挟む独創的な構成でストーリーを運びながら、オーナー側や代理人が選手から容赦なく搾取するスポーツビジネスの裏側に焦点を当ててみせる>>続きを読む

叫びとささやき(1972年製作の映画)

3.9

同じお腹から産まれた姉妹なのに、何故こんなにも反発してしまうのか。冒頭の霧のかかった屋外シーンから全編にわたって漂う閉塞感と息苦しさ。彼女たちがいる赤い部屋は、まるで母親の子宮のようにも見えてくる。>>続きを読む

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

4.2

冒頭から女性たちの顔が完璧なアングル、サイズで連ねられる至福の時間。そこにまるでホラー演出のような呼吸で意表を突いたショットを挟み込み脈を乱すスリリングな映画であり、それが単なるイメージ映像の羅列では>>続きを読む

天才作家の妻 -40年目の真実-(2017年製作の映画)

4.0

ティムバートンの「ビッグアイズ」に似ている話であるものの、本作はグレンクローズの繊細な演技を柱に、派手ではないが台詞回しや回想場面のタイミング等々、隅々まで気配りが行き届いている丁寧な演出によって、ま>>続きを読む

ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー​(2019年製作の映画)

3.2

呪われた画によって、それに関わる人間が次々と不審死を遂げるオカルトホラー調な一作だが、そこにダンギルロイは絵画という大金が動く割に、価値や金額は絶対化されない脆く危い世界の中で蠢く胡散臭さの塊のような>>続きを読む

ポーラー 狙われた暗殺者(2019年製作の映画)

3.5

一匹狼の殺し屋が想いを寄せてしまった女を救ったために身を滅ぼすという誰もが好きな話を、ネット配信の強みを生かした、セックスとバイオレンス描写をギャグすれすれにまで炸裂させて色付けしたエクストリームな劇>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

4.5

今泉監督作品ならではの単なるラブストーリーを超えた、もっと人間の本質的な部分をまさぐり掴もうとする傑作。原作の力も借りてか、今泉監督作品では珍しく直接的な肉体関係を描いており、また
過去作と比較しても
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十二人の死にたい子どもたち(2019年製作の映画)

2.5

一言でいうとそれぞれ事情を背負った自殺志願者が集ったグループセラピーにミステリー要素を足しただけの映画。思わせぶりな謎解きとそれぞれの登場人物の過去が台詞で説明されていく。ただし12人それぞれにきちん>>続きを読む

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー(2019年製作の映画)

4.5

広告代理店的な発想とアイデアで大風呂敷と理想だけで突っ走る危険性。誇大広告やハッタリが後に自らの首を絞め、それを隠蔽し絵にかいたような失敗を果たす滑稽さ。カリスマ性のあるボスに何も言えずに暴走を許して>>続きを読む

フォルトゥナの瞳(2019年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

相手の運命が見えるフォルトゥナの瞳を持った神木隆之介が、携帯ショップの店員である有村に告白するまでのくだりは、気恥ずかしいくらいの展開。だが実は、両親を亡くした飛行機事故で助けられなかったと思っていた>>続きを読む

21世紀の女の子(2018年製作の映画)

3.7

ジェンダーやセクシャリティーの揺らぎをテーマにそれぞれの筆跡筆圧で各章を綴られたオムニバスは、ラストに母なる存在と化した教祖の山戸監督がまとめ上げ、聖典が完成する印象さえも受ける。

作品を貫くテーマ
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眠る村(2019年製作の映画)

3.0

毒ぶどう酒事件の現場に降り立ち、村人たちにも取材はしているものの、真犯人を徹底究明するような内容でもなく、犯人とされた奥西さんの墓が共同墓地に移されたというエピソードはあるものの、村全体の暗部を過度に>>続きを読む

七つの会議(2018年製作の映画)

4.5

山一証券に代表されるように、日本の会社の体質にメスを入れ、そこにドロドロと流れるどす黒い血を浴びながら、縦割り行政、お上への忖度、隠蔽と左遷、責任転嫁を繰り返す平成日本の空気感を、適度にカリカチュアし>>続きを読む

愛唄 ―約束のナクヒト―(2019年製作の映画)

1.5

ヒロインを演じた清原果耶が闘病中の役柄を熱演しているからこそ、同じく余命限られているはずの主人公演じる横浜流星の説得力がない。外見上もいたって健康に見え、普通に外出しているので、具合が悪くなって倒れる>>続きを読む

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)

2.8

「アイズ・ワイド・シャット」風の音楽が鳴り響き、豪華絢爛げな雰囲気を醸し出しているものの、ホテルの客は仮面を被っていて素性を明かさず自由を謳歌しているというテーマと物語がリンクせず、ラストの仮面舞踏会>>続きを読む

夜明け(2019年製作の映画)

3.3

是枝裕和、西川美和作品に携わり、満を持してデビューを果たした分福所属の広瀬監督の手腕は、確かに柳楽優弥にオーバーアクトをさせず、彼が演じる主人公の心の機微に寄り添うような丁寧な脚本が光っている。特に自>>続きを読む

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)

3.5

「アンブレイカブル」「スプリット」のクロスオーバー作品として、シャマランユニバースを形成した本作は、悲しき過去を背負った三人の男たちの病院からの脱走と対決、志半ばでの破滅を描いているものの、そのスケー>>続きを読む