TaiRaさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)

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原作あってもやっぱチャーリー・カウフマン。観ていて辛くなった。

原作はシンプルにミステリー形式で書いてあるらしい。おそらく最後に意味が分かる構成なのだと思う。カウフマンはそれを冒頭で明かしちゃってる
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ヴァスト・オブ・ナイト(2019年製作の映画)

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とてもミニマルだが細かいネタがたくさん仕込まれており、モチーフには古さと新しさを混ぜている。

ラジオが「何か」の音をキャッチする。50年代アメリカの田舎町、高校バスケットボールの試合で街中から人が消
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シルヴィ〜恋のメロディ〜(2020年製作の映画)

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架空の映画史に対するノスタルジーという変化球。1950年代に存在し得なかった映画を回想してみる。

夢を追う黒人カップルの数年間を描くメロドラマ。1950〜60年代を舞台に、当時のメロドラマを再現して
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フランクおじさん(2020年製作の映画)

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アラン・ボール自身の経験に、彼が母親から聞いた父親の過去を掛け合わせた物語。

ゲイの伯父を持つ姪の視点で語られる自己肯定と居場所の獲得について。敬虔なカトリックの家庭や保守的な地元に居場所を見出せず
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タイム(2020年製作の映画)

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オバマが褒めてた。サンダンスでも評価されてたみたいだしオスカーもあるかもね。

20年前、強盗未遂を犯して懲役食らった夫婦。妻は司法取引などもろもろで3年ほどの実刑。夫は禁錮60年。執行猶予も保護観察
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アイム・ユア・ウーマン(2020年製作の映画)

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70年代犯罪映画を踏襲しつつ再解釈するみたいな。地味だけど良い。

マイケル・マンの『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』に出て来るチューズデイ・ウェルドから発想したらしい。故にスペシャルサンクスにマ
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鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

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正月だし楽しい映画観ようと思ってこれにした。準備から撮影まで2週間弱で作ったと知ってシンプルに驚いた。

ちゃちゃっと作ってこのクオリティってのがヤバい。マキノにとって113作目(監督13年目)って時
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ソング・トゥ・ソング(2017年製作の映画)

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100点満点で0点なのではなく、0点満点で100点出して来るという何時ものマリック作品。

『ツリー・オブ・ライフ』以降の自伝シリーズが一段落した後に残り物で作った様な感じ。撮影時期が2012年くらい
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非常線の女(1933年製作の映画)

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日本がまだモダンだった頃の小津による和製ギャング映画。やっぱ「アメリカ映画」の人だね。

昼はタイピスト、夜はギャングの情婦やってる田中絹代という時点で何だかとっても良い。ドレス着た田中絹代初めて観た
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風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

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ずっと不穏で怖ろしい映画。病院での「泣き声聞こえない?」とかもうホラー。

戦後、夫の復員を待ちながら貧困に耐える妻。子供が病気になってしまい、その入院費用の為に売春に手を出す妻と、復員して早々その事
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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

5.0

ライカートの描く人たちは中々目的を達成出来ない。何かしたくても出来ない、何処かへ行きたくても行けない。

冒頭の犬と散歩する横移動が何だか最高。左から右への動き。『オールド・ジョイ』にも登場したライカ
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マーティン・エデン(2019年製作の映画)

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ジャック・ロンドンの自伝的な小説を、舞台をイタリアに置き換えて映画化したっていう変な企画。

原作は20世紀初頭の話だけど、今回の映画も時代は同じくらいかな。時代モノではあるけど流れる音楽はイタリア歌
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ペイン・アンド・グローリー(2019年製作の映画)

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アルモドバルの自伝的な映画なのだけど、とにかく体調が悪いという事がリアルに描かれていて面白かった。

体中のあちこちにガタが来て満身創痍の映画監督が主人公。冒頭に分かりやすく症状の解説をしてくれる。背
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処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ(2014年製作の映画)

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評判を聞いて日本公開したら観たいなぁとか思ってたら6年も待たされた。最高だった。

冒頭に丁寧な前作の振り返りがあって、話は直後から始まるのに一作目を観てなくても大丈夫になってる。この安心設計は『死霊
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

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「あの頃」と変わらない俺たち、を取り繕ってみるけれど、俺たちどうしようもなく未来へ来てしまった。

もうすぐ父親になる男は、その自覚が芽生えたからこそ逃げ出したくなってしまう。妻はとっくに逃げ出せない
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

5.0

「私ぐらい孤独な人間、他にいるんだろうか──いた。隣の郡に」

女は余りにも退屈だった。自己規定が揺らぐ程の退屈。夫を仕事に送り出し、幼い子供たちの世話をして、空いた時間を埋める事も出来ずくるくる回っ
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処刑山 -デッド・スノウ-(2007年製作の映画)

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続編が観たくて観賞。ウィルコラのサービス精神はとても好み。

雪山に遊びに行った若者たちがナチスゾンビ軍団に襲われちゃう偏差値ゼロ快作。ナチソンビは伝統的にたくさんあると思うけど、アインザッツグルッペ
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無頼(2020年製作の映画)

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井筒とスコセッシはやっぱ近いね。『ガキ帝国』『ミーン・ストリート』から『無頼』『アイリッシュマン』まで。

本当は実録ヤクザ映画なのに「実録」を謳えない裏社会事情の方が興味深かったりする。基本的には後
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バクラウ 地図から消された村(2019年製作の映画)

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どういう映画か知らずに観たので、中盤の展開以降めっちゃおもろかった。『ランボー ラスト・ブラッド』と二本立て出来る。

ブラジルの辺境にある村を舞台にしてるが、前半は特に話が展開せず、どこの向かってる
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

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既に名作みたい扱いされてるので、ちょっとハードル上がったが余裕で素晴らしかった。

ビジュアル含めたベースには『仮面/ペルソナ』や『ピアノ・レッスン』なんかを敷きつつ、18世紀から現在に通ずる女性たち
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アングスト/不安(1983年製作の映画)

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変な撮影とクラウス・シュルツの音楽と冷淡な視線が絶妙。ノエが好きなの分かる。

実際にあった殺人鬼による一家惨殺を淡々と再現しつつ、どこかユーモアも混ぜ込んだ凶悪さが良い。GoProみたいな役者に着け
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ポゼッション(1981年製作の映画)

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劇場で観直したら思いの外オモシロ映画だった。こんなに全てが過剰だったのね。

カミさんに浮気されたら世界が滅びるという監督実体験映画。撮影も音楽も芝居も全てがフルMAXで楽しい。カメラの異様な落ち着き
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Mank/マンク(2020年製作の映画)

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ハイコンテクスト過ぎて誰の為の映画なのか分からなくなってる。フィンチャーにしてみれば父親の為なんだろうけど。

『市民ケーン』の脚本を書いたマンキウィッツの伝記、なんて単純な映画ではもちろんない。ポー
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喜劇 男は愛嬌(1970年製作の映画)

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この映画の渥美清は何時にも増して狂気的で、完全にカオスの使者。故に悲哀を抱えてるってとこまで表現する渥美清の芝居の上手さ。

少年院帰りの俺っ娘、倍賞美津子を更生させたい幼馴染みの寺尾聰。そこに諸悪の
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愛してるって言っておくね(2020年製作の映画)

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子供を失った夫婦の再生を描く10分アニメ。両親の為に死んだ子供の魂が健気に頑張る。King Princessの「1950」を送る子供のセンスよ。子供との最後の朝、両親の魂が体現する無力感が切ない。タイ>>続きを読む

魔女見習いをさがして(2020年製作の映画)

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おジャ魔女世代の為のメタ映画。こういう構造の作品なんかあった気がするが思い出せない。

おジャ魔女リアタイ世代から後追い世代までの20代女性三人のシスターフッド。ファンダム映画でもある。20代の抱える
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街の灯(1974年製作の映画)

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堺正章が財津一郎を背負って東京を走り抜けるオープニングがまず最高。この映像だけで泣ける。

森繁会長の為のポン引きやってる財津一郎と堺正章という設定からしてメチャクチャなんだけど、そっからマチャアキが
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喜劇 女は度胸(1969年製作の映画)

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デビュー作から完璧。渥美清の台詞回し、というかフロウがバキバキ。

『男はつらいよ』と同じ愚兄モノだけど、弟の河原崎健三も別の意味でヤバい奴という塩梅。さくらみたいな聖女はいない。クズの男連中に囲まれ
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ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒(2019年製作の映画)

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相変わらずライカのストップモーションは凄いんだけど、もうその辺の技術的な志向はよく分かんない。人形である事の意味とか。

ライカで一番好きなのがクリス・バトラーの『パラノーマン』なので、ストーリーにも
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ニンゲン合格(1999年製作の映画)

5.0

黒沢清版『砂漠の流れ者』だった。哀川翔から役所広司への移行期にちゃんと共演作撮るの律儀だなって思った。

10年間昏睡状態だった24歳の西島秀俊が「失った人生を取り戻す」話。だが、人生は取り戻せるもの
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羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(2019年製作の映画)

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面白いやつ色々ぶっ込んだ感じが楽しい。アクションシーンは作画MAD観てる感じ。

日本アニメの影響はめっちゃ強いし、ほとんどまんまやんみたいなとこもある。改めて中村豊や松本憲生あたりの世界への影響力は
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大盗賊(1961年製作の映画)

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ベルモンドのアクションスター化前の作品なので比較的おとなしい。殺陣は上手い。

搾取されて来たコソ泥が義賊団のリーダーになっていく話。例に漏れず今回も飄々として場当たり的なベルモンドだけど、ヒロイック
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オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)

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ソフィア・コッポラそんなに観てないけど、このくらいの映画ずっと撮ってけば良いと思った。

今、ニューヨークのリベラルな上流階級の、特に何でもない話を撮ってて許されるのソフィアくらいなんじゃないか。始ま
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ムッシュとマドモアゼル(1978年製作の映画)

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スタントマンを主役にした映画って大体面白いのでは。

ベルモンドとラクエル・ウェルチというコッテリしたカップリングがまず最高。スタントマンカップルが痴話喧嘩しながら大アクションして行くドタバタ・ラブコ
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オー!(1968年製作の映画)

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アンリコのリリシズムとベルモンドの少年性は相性良い。

強盗団の逃し屋として使われてる元レーサーのベルモンドが成り上がろうとするピカレスクロマン。基本的にはハリウッドのギャング映画をなぞっているのだけ
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絞殺魔(1968年製作の映画)

5.0

10年ぶりくらいに観直したら面白過ぎて感動。

画面分割の連打で画的には派手な印象だけど、語り口はめちゃくちゃクールでドライなのが良い。ほとんど音楽も使わないし淡々としてるのが何より暴力的で怖い。そこ
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