第76回カンヌ国際映画祭コンペティションに出品されたケン・ローチ新作。日本では、割とケン・ローチは人気のはずなのだが、一向に公開の目処が立っていない謎の現象が発生している。ひょっとして円安で版権が高かったのかなと思う。さて、ケン・ローチは問題提起最優先の映画を作るイメージがあり、内容としては重要なものを扱っているが映画としてはあまり評価できない印象がある。映画としての魅力が少なく、だったら新書で良いと感じてしまい、カンヌ国際映画祭のコンペ枠を毎回潰している点も好きになれない。若手に枠を譲れと思っているため当たりが強くなりがちである。しかし、評判がイマイチだった新作『The Old Oak』は想像以上に映画的であり、確かにあまりにも楽観的過ぎる理想的過ぎる展開にリアリティはないものの、現実が虚構を凌駕し最悪な状態がデフォルトになりつつある「今」においてそのツッコミどころはスペクタクルに飲まれない特効薬として機能するであろうと感じた。