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ナビゲーター ある鉄道員の物語
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『ナビゲーター ある鉄道員の物語』に投稿された感想・評価

菩薩
3.5
民営化による労働環境の変化と利潤追求への転換、突然減らされる人件費と課されるノルマ、嫌なら辞めろと突き付けれる退職勧告、辞めたところで手に入るのはそれ以下の労働条件、減る給与に増す危険性、そうして起きる最悪の悲劇。日本人の感覚からしたら「いや、働かな過ぎやろ…」とか「週39時間なんて余裕なんけ…」なんて事を思ってしまいがちだが、その感覚こそが本来はクレイジーなのだろう。昨日の味方は今日の敵と仕事仲間の絆すらも効率・生産性の名の下に駆逐されていく。作業量と共に疲労もストレスも増えれば当然ヒューマンエラーも増えて行く悪循環、得をするのは現場を知らない管理職、あぁもう本当に嫌だ嫌だ…。勿論儲けがあってからこその給与だってのは分かるし、ろくに仕事もせんおっさんが年功序列で高給取るのも嫌な話だが、金を稼ぐのはそんなに偉い事なのかね、金持ってるからって偉ぶってる奴が一番ダセェと思うのだが。記憶に新しいのは日本郵政のかんぽ保険の不正販売、それとこれとは話は別だろうが、問題の本質としては同じだろう。
3.0
【構造的搾取に対する抵抗の難しさについて】
自分が目の当たりにした類似事象は有料noteで書きました▼
https://note.com/chebunbun/n/n7d25085acffb

先日、水声社の「知の革命家たち ケン・ローチ 闘う映画監督」を読んで、ケン・ローチ作品に触れたくなったので、『ナビゲーター ある鉄道員の物語』を観た。

本作は英国鉄道で働いていたロブ・ドーバーが自らの経験を基にした脚本を映画化した作品となっている。1993年、英国鉄道民営化法が制定された。これにより、英国鉄道は資本主義の流れに従い、利益追求のための最適化が行われる。本作では英国鉄道における意識改革、人員整理に巻き込まれた労働者たちの苦悩を描いている。

鉄道作業員である5人の男は上司からイースト・ミッドランズ・インフラストラクチャーで働くよういわれる。鉄道保線を行うこの会社は新自由主義によるライバル会社との競争を強いられている。映画では、序盤でライバル企業に買収されたことで社内の大変革が行われる。

「退勤時には必ず打刻すること」

と勝手にルールを変えられる。

ジェリーは抗議をするも「不正が起こる」と最もらしい理由でもって跳ねのけられる。上司は変にハレーションが起きると厭だから作業者に相談なく決めたのだが、この時点では経営陣は譲歩の姿勢を取る。だが、後に社長はクビをチラつかせながら従業員へ譲歩するなと圧をかける。

やがて彼らは解雇となり職を探すこととなる。職業紹介所へ行くのだが、有給はなかったり持病に厳しかったり、そもそも稼ぎが減るといった散々な状況の中でようやく仕事にありつく。

しかし、過度な競争による搾取の中、保線作業にとって一番重要な安全管理がおろそかとなり凄惨な事故が発生してしまう。

本作で起きていることは日本でも起きている。ただ、本作の鉄道員たちはめちゃくちゃ抵抗してこの様なので構造的にデモやストライキが起きにくく連帯をあまりしない日本において実に絶望的だ。

思い当たることがいくつかある。
イギリス国鉄民営化にともない鉄道員は会社員化し人員整理も加速。その時期の鉄道員(線路保守点検員)の話、脚本家の体験に基づくらしい。

ケン・ローチ監督作、ここでも労働問題と貧困を描いていた。

おじさんたちはそれぞれ大なり小なり事情を抱え、たまに悪態ついたりもしてるが、基本的に職人気質で仕事きっちり、誇りをもっているようだ。
そこへ一方的に突きつけられる労働条件改悪、リストラ、だまって受け入れられるわけがない。

解雇手当をもらって辞めたところで、次の仕事はもっと悪条件になり得るし仕事がないかもしれない。
家族や事情を抱えていたらそう簡単に辞めますとも言えない。

ブラック企業の定義がまんま当てはまる状況、起こるべくして起こるミス・事故。上層部に掛け合うもまったく話は噛み合わず。
民営化にあたりお偉いさんのメッセージVTRでは良いことばかりにこやかに話していたのに、いざ現場に来ると人を見下す高圧的な態度。あれは相当不快だったな。

ストライキ起こせばいいのにと思うかもしれないが、民営化したてで組合的なものがまだなかったか、おじさんたちにそこまで考えが至らなかったか。

弱みにつけこみ搾取する構図が出来上がっていた。

働き続けても退職しても厳しい現実。もう根本的なところから政治が変えていかないとだめだよね……と。

日本も似たようなパターンあちこちにありそう。

それにしても酷い。事故も起こるわけよ。

淡々と終わっていくが、あのラストシーンの居心地の悪さがもう……


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