▪️Title :「家族を想うとき」
Original Title :「Sorry We Missed You」
▪️Release Date:2019/12/13
▪️Production Country:イギリス・フランス・ベルギー合作
🏆Main Awards : ※※※
▪️Appreciation Record :2019-337
▪️My Review
心に刺さる、最高に辛くてリアリティのある、ケン・ローチ監督らしい傑作です。
前作の『わたしは、ダニエル・ブレイク』で引退すると言ってたケン・ローチの監督作品で、第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で行われ、パルム・ドールを争った作品です。
原題のSorry We Missed Youとは「ご不在につき失礼」といった宅配事業者の不在届を意味していて、主人公リッキーの日常業務から取られています。リッキーのような英国におけるゼロ時間契約労働者の厳しい現状を描いた映画なんですね。そう、テーマは新自由主義経済における中産階級の没落を描いています。ブラック企業というよりブラック世界。これはケン・ローチならではの愛情に溢れた作品で、道に迷った人類に対する警鐘でもあるんですね。
鑑賞中は、誰も不幸になりませんように。祈るような気持ちで物語に没入しました。厳しい現実のひんやりとしたリアリティの中から、人の心の温かさがしみ出てきます。衝撃のラストシーンに巨匠の怒りと愛を感じました。素晴らしい作品です！！

▪️Overview
「麦の穂をゆらす風」「わたしは、ダニエル・ブレイク」と2度にわたり、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。現代が抱えるさまざまな労働問題に直面しながら、力強く生きるある家族の姿が描かれる。イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。（映画.com参照）

『家族を想うとき』
原題 Sorry We Missed You.
映倫区分 G
製作年 2019年。上映時間 100分、
イギリスの巨匠ケン・ローチ監督イギリス・フランス・ベルギー合作作品。
現代が抱えるさまざまな労働問題に直面しながら、力強く生きるある家族の姿が描かれる。

イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。
そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。
家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。
そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。

原題の『Sorry We Missed You』は
宅配の不在票に書かれた
“お届けにうかがいましたがご不在でした”　
ちゅう慣例表現からきてるらしく、主人公リッキーの日常業務から取られている。
原題シャレてんなぁ。
ここを邦題も残してほしかった。
邦題の『家族を想うとき』も決して悪くはないが。。。
今作品はリッキーのような英国におけるゼロ時間契約労働者の厳しい現状を描いた映画と云える。
新自由主義経済において搾取される労働者の窮状とそれによる家族に生じる歪を描いています。
また、他のケン・ローチ監督作品と同様、今作品も出演者は無名の俳優と俳優でない者で構成されていた。
知名度のあるスターがいないことで、観てる側は登場人物が親近感のある苦悩を抱えた日常人であると信じやすくなってると思います。
ケン・ローチ監督は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年)で、貧しい人々や弱い人々に対して行われた必要な（彼らに影響を与えない）給付金削減を一喝し、そして、今作品では、ロンドンと南東部のバブルの外にある、北東部の労働者階級の貧しい人々の現実の生活を描いています。
今作品の時代背景には、当時の英国保守党の政策に注目し、英国人が自国に投資すべき時に保守党のジョージ・オズボーン財務相は緊縮財政を打ち出し、作る労働力の代わりに大増税税金をおこなった時代も見え隠れする。
そんな時代に、自営業の配達ドライバーという新たな労働力が誕生した。
今作品は、需要を満たすために大いに宣伝されたギグエコノミー（Gig Economy）にスポットライトを当てています。
因みに、ギグエコノミーてのは、インターネットやスマホアプリ等を通じて、企業に雇用されることなく、プロジェクト単位で単発の仕事を請け負う働き方、およびこれらによって成り立つ経済の仕組みのことを指してます。
ギグ・エコノミーの由来である(ギグ『gig』)は、ライブハウス等で演奏者がゲストとして一度限りのセッションを行うことを意味すし、ギグ・エコノミーに従事する労働者のことはギグ・ワーカーと呼ぶ。
余談が過ぎてますが、映画界隈で社会派リアリズムてのは、ベテラン監督ケン・ローチがこれまで掘り下げてきた唯一のジャンルかもしれない。
それは紛れもなく彼に似合っているモンと云える。
今作品には、事実上政府に向かって叫ぶような瞬間があり、露骨な怒りと何とも云えん悲しみが混じり合って叫ばれていました。
こうした瞬間は時に鼻につくものの、よりニュアンスのある体験を引き立ててくれます。
今作品は、その姿勢を崩すことなく、さまざまな繊細さをもって物語を伝えてくれました。
その核となる家族の力学は、苛烈な口論と思いがけない喜びの間を行き来し、個人的には飽きさせることはなかった。
もちろん、これはすべて過酷で不公平なシフトの間に起こることと云える。　
自分が好きなことが武器にした『ゼロ時間労働』ではないものの、明らかに『ゼロ時間労働』でリッキーとアビーの仕事は、現実と違和感がないどころか、現実そのものである。
このように徹底的に腐敗したシステムが、どうして皆の目の前で運用されているんか、理解するのは難しい。
同時に、それは明らかなことでもある。
今作品には、『人よりもゼニ(お金)が大事』ちゅう現代社会の厳しい現実が描かれている。
日常生活では、必ずしもそうではない。
少なくとも小生は、己の銀行口座の残高が増えることよりも、人への情でこそ生き残る手掛かりやと思てるし、望んでいる。
小生はそう信じたい。
あまっちょろい考えやけど、山有り谷有り人生でもこうして不自由なく生きれてる。
しかし、大企業や資本主義社会では、人間よりもゼニが好まれる傾向がある。
大企業や資本主義社会は、人間よりもゼニが好きなんやろと思えてくる。
この問題は根が深く、簡単に解決できるものではない。
しかし、この問題は明らかにされる必要がある。今作品は、観客の共感を効果的に利用して、そのメッセージを打ち出そうとしている。
初出演のキャストがほとんどで、演技に難があるものの、親しみやすいキャラと現実主義的な美学のおかげで、今作品は信じられないほど深いつながりを持つことに成功してました。
楽しい体験ではないが、むしろ、殺伐とはしてるが、そこが重要なんかなぁと。
今作品は、個人的には心を掴まれ、注意を引き付け、そしてそうであろうとなかろうと、必要なことを描く。
痛快で、胸が張り裂けそうにもなった。
でも、常に気難しいわけではなく、そのバランスが、今作品をうまく機能させていると云えます。
登場人物に関心を持ち、彼らの成功を願う。
彼らの最高の状態も最悪の状態も目の当たりにするからこそ、思いもよらない方法で彼らに感情移入することができましたし、彼らをリアルに感じられ、そのシナリオは深い影響を与えてくれた。
今作品は、楽しいとまではいかないまでも、常に魅力的であり、ほとんどの決まり文句を克服するのに十分な大胆さを持ってた。
エンタメ性が高いとは云えないけど、善き作品でした。

あらゆる国の政党、国会議員が見るべき、現代の寓話やと云えるし、頼むからガーシーに力入れるでなく国民のために行動してくれ(個人的には日本政府には期待してないが)。
今作品の家族、そして、多くの先進国の人々が直面している苦難から、それ以外の道はないんやから。
なんのこっちゃ～🌠

“怒らないでくれ。俺は大丈夫。愛してる。”

ケン・ローチの最新作にして個人的最高作。イギリス、ニューカッスルに住む4人家族。父親は大手配送業者のドライバーをフランチャイズで始め、週6日14時間働き、母親は介護ヘルパーで1日に何軒もの家を周る。そんな中、年頃の息子のちょっとした非行が家族に亀裂を生んでしまう。

普通、家族映画で“リアル”を切り取る良作というと、その家族の“嫌な”現実的部分を見せて観客に共感させるものだけど、ケン・ローチ監督は“リアルな”家族の温かさを切り取っている。お涙頂戴ではなく、不器用で照れ臭いそんな家族の温かさを。この映画のテーマは不当に働かされる事なのだと思うけど、それよりも家族の見えない絆に心打たれる。みんなで”Know how”歌いながらのナイトドライブが最高だね。

タイトルの「sorry we missed you」。観る前は「恋しくなっちゃってゴメン」的な超可愛いタイトルかと思っていたけど、これはドライバーがポストにいれる不在届の事で、日本でも宅配ドライバーが不当に働かされているニュースあったよね。まぁでも最後に不在届に書かれたあの言葉においては前者の意味だと信じたい。みんな愛おしい。

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