なかなかおもろい、タイトルそのものがミスリードを誘う。確かに犯罪で始まる映画ではあるが、この映画が敵視しているのはあくまで資本主義であり労働であり何より貨幣経済ないし紙幣そのもの(だからこその『ラルジャン』か)。犯罪を犯した男モランとそれに巻き込まれた男ロマン、モランの一生せせこましく働くよりはドカンと一発やらかしてムショで気楽に3年半、の野望には早々に暗雲が立ち込めるし、ロマンもロマンで他の職員が次々に職場を追われる中でなんとか生き残るものの強烈なパワハラに晒される事になる、その辺りも名前のアナグラムが活きている。2人の男は喫煙に始まり同じ女性を愛し捨てられ、遂には自由を手にした者として劇中を通して次第に接続されていく(を表現する見事なスプリットスクリーン)。田舎と都市とを対比させる事自体は若干陳腐だが、刑務所暮らしを「物語」が救い、田舎では金にならない映画が撮られ、この映画自体も本来商業作品であれば着地すべきところとはまるで違う地点を目指していく事になる。3時間はちと長い様にも思うが、労働から逃れる為の…と口実をつければ、それすらも許せてしまう様に思える。「聖書はSF」のサラッとdisに笑う、本当の意味での犯罪者とは誰かを問う、とまではいかなくともヴァカンス映画として充分傑作。