韓国映画『夏の日のカメラ』は、ファインダー越しの柔らかい風景とともに、サマーの揺れ動く心が丁寧に描かれた物語だ。写真家だった父の死をきっかけにカメラから離れていた彼女は、初恋の相手を撮ったことで止まっていた時間が再び動き出す。

現像したフィルムに父の写真が混ざっていた理由をたどるうちに、彼がどんな人を愛し、どんな人生を歩んだのかが少しずつ浮かび上がってくる。その過程がとても切なく、事故現場で同じ景色を撮る場面は特に胸に沁みた。記憶の中の父が、一人の人間として立体的に現れるように感じられたからだ。

初恋の揺れや距離感も瑞々しく、監督ソン・ディヴァインの繊細な感性が光る。LGBTQ＋を特別視せず、ただ“誰かを愛すること”として描く姿勢が美しく、静かに心に残る作品だった。

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