【タンジール】

※デジタルリマスター・リバイバル上映

ウィリアム・バロウズ原作の映画「クィア」公開に併せたリバイバル上映だと思う。

ウィリアム・バロウズを知るためのとても重要な映像記録だ。

僕は、モロッコのタンジールに行ったことがある。
スペインのアルヘシラスから船でジブラルタル海峡を渡るのだが、それほど長い船旅ではない。
アルヘシラスの湾を挟んだ対岸には今でもイギリスが占領しているジブラルタルがある。

タンジールに着くと、現地の若者がワッと寄ってきて、タンジールを案内させろと言う。
ローリングストーンズのミック・ジャガーの別荘があってハシシを吸っているから見に行こうとか、ベルベル族を見に行こうとか😁
そんな誘いの中に、バロウズの家に行こうと云うのもあった。
既に住んでもいないのに、タンジールの人には好かれているんだなと考えたことを思い出した。

「裸のランチ」の多くの着装を得たタンジールだが、どのようにしてカットアップという手法をしていたのかとても興味深かった。

ビート・カルチャーは、経済や当時の民主主義を含む既存の価値感への抵抗、スピリチュアル世界への傾倒、一神教とアニミズムの融合、クィアを含めた性の解放、ドラッグによる精神解放を求めたムーブメントだが、後のカウンター・カルチャーにも多大な影響を与えることになる。

そんな中で、実験的に取り組んだカットアップは、一件何の関連性もないものが実は関連していると云う、どこかスピリチュアルな考え方も背景にあるんじゃないかなんて思える手法だ。

「裸のランチ」は強烈な印象を残した。

しかし、奇異な印象を持たれがちなバロウズだが、こうして映像記録に残っている人物像は、至って普通の老人で、ドラッグ中毒から生還したような感じは少しも受けない。
そして、クィアであることも、実は単にありのままだっただけなのだ。

抵抗は、自分を受け入れない常識や体制への単なる衝動によるものなのか。
それとも、熟慮の帰結なのか。

実は、様々なものが合わさり織りなすムーブメントだったんじゃないのか。

今僕たちは、LGBTQや人種、民族、国家などで単純化せず、多様とは何なのか根本から考える時期に来ているのかもしれないなんて思ったりした。

Stupid people can learn a language quiet and easy because there is nothing going on in there to keep it out.
You were not there for the beginning. You will not be there for the end.
Your knowledge of what is going on can only be superficial and relative.
There is only one thing a writer can write about: what is in front of his senses at the moment of writing.

ミニシアターで上映していたので鑑賞。予備知識なし。
「クィア」に合わせての上映だった。こちらを先に観れば良かったかな。
理解し難い鬼才、自分の世界にいるからこその発想、実績だが映像だけ見ると普通の老人にも見えてしまう。
「クィア」と「裸のランチ」を観てみよう。