「カンヌ監督週間in Tokio2025」で鑑賞。
フランスの田舎の村。ポーランド移民のナヴォイカの一家は、父と2人の兄と畜産業を営んでいる。
彼女は亡き母と同様に、しばしば発作を起こし、体内に悪魔がいるとされている。

本作も女性の欲望を悪魔的な仕業とみなす、閉鎖的な村社会のお話。

牛を殺す儀式（？）など映像は強烈で、魔女狩りとも言える集団ヒステリーの様子もキツい。

炎と泥から生まれ変わるナヴォイカの、無垢で静謐な美しさが胸にしみる。

フロイト的イドの抑圧とエクソシズムの重ね合わせ──ヒュートラ渋谷カンヌ監督週間特集2025。奔放なお姉さんがお隣に帰ってきたことで主人公ナヴォイカの抑圧された欲望が悪魔憑きとして噴出する。フロイト/ユング的解釈に基づく女性解放の寓話だが、意気込みは買ったとしても好きじゃない。父権的な村を舞台に『エクソシスト』をやっただけでは。俳優陣の負担が高いわりに到達してる地点が低い。

ブーブー文句ばかりで申し訳ないけど肌に合わない理由はもうひとつあって。なんかこういう、超常的な脅威を駒に使って社会問題にメスを入れる手癖って、現代ヨーロッパ映画のいちばんつまんない部分な気がするんだよな。FILMeX2025の『グラン・シエル』（監督は日本人だがれっきとしたフランス映画）でも同じこと思ったんだけど。薄〜く希釈した問題提起を、ジャンル色をフックに観客の興味を換気することで埋め合わせている感じ。オマージュで作品世界の射程が広がっていそうな雰囲気があり、表象分析の余地が生まれることで深みが出ていそうな雰囲気がある。この仕草が嫌い。嫌いなタイプのスノビズム。たぶんわたしがカンヌ監督週間の選定眼と合わないんだと思う。本作だけじゃなく、『ミラーズ No.3』『ピーク・エヴリシング』『見はらし世代』にも共通している。地（じ）の脚本がしっかり濃ゆいところにアクセントとしてモンスター的脅威を入れてくれるのは好きなんだけど。ムンジウ『ヨーロッパ新世紀』の熊とか。

閉鎖的な田舎に一人異質な女性が戻ってから繰り広げられるわりと不快なフォークホラー。

雰囲気はずっとじめじめしていてダーク・陰鬱。
粗野な父兄と暮らす少女ナヴォイカが謎めい女性サンドラの帰郷により解放されていくような。

母の邪悪さを受け継いでいるかもしれないという思考、そんな状況を祈りでなんとか乗りきろうとするナウ。こんな家族生活はイヤだ…が凝縮されていてキツい。

気持ち悪すぎる謎の粘液、性的暴行、偏見と女性蔑視、閉鎖的で排他的なコミュニティ、胸糞不快要素が詰め込まれていたが、幻想と記憶の片鱗らしきものを織り混ぜた末のナヴォイカの解放という意味ではよかったのかな…

それまで抑圧されたものが放出したのはサンドラがいろんな意味でトリガーだったんだろうな。