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海辺の一日 4Kレストアの作品紹介

海辺の一日 4Kレストアのあらすじ

佳莉(ジャーリィ/シルヴィア・チャン)は、小さな町の医師の娘として、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育った。父の権威に逆らえず、愛を失っていく兄・佳森(ジャーセン/ミンシ・アン・ツォー)の姿は、彼女に深い衝撃を与える。やがて佳莉は、父が望む結婚を拒み、同級生の徳偉(ドゥウェイ/デヴィッド・マオ)との結婚を選んで家を出る。一方、佳森の元恋人である蔚青(ウェイチン/フー・インモン)は、留学先のオーストリアから帰国した才能あるピアニストとして活躍していた。佳莉の自由な決断に憧れを抱いていた彼女だったが、佳莉の結婚生活は、次第に理想とかけ離れたものになっていく。 ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。そこで彼女は、夫との歳月、自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合い始める。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められていた時間が、少しずつ姿を現していく。

海辺の一日 4Kレストアの監督

エドワード・ヤン

原題
海灘的一天/That Day, on the Beach
公式サイト
https://www.the-day-on-the-beach-4k.com/
製作年
1983年
製作国・地域
台湾
上映時間
167分
ジャンル
ドラマ
配給会社
ツイン

『海辺の一日 4Kレストア』に投稿された感想・評価

kuu
3.8
『海辺の一日 4Kレストア』
原題:海灘的一天(英語題:That Day, on the Beach)
製作年:1983年製作国:台湾公開上映時間:166分 映倫区分 G

台湾の名匠エドワード・ヤンが1983年に手がけた長編監督デビュー作。

水平線から差す光が、かつて見失った時間を残酷なほど鮮やかに照らし出す。4Kという至高の解像度で蘇ったその世界は、単なる過去の記録ではなく、いまなお青く震える人間の魂そのもの。今作は、13年ぶりに再会した2人の女性の会話を起点に、封じ込められていた記憶と人生の層が浮かび上がっていく様子を描き、台湾ニューシネマ最初期の重要作として高く評価された作品です。若きエドワード・ヤンが切り取った映画の細胞は、今この瞬間も息づいています。
 
映画史の片隅で輝くトリビアは、奇跡的な邂逅の物語でもあります。主演のシルヴィア・チャンがまとう、言葉にならない沈黙の揺らぎ。そして、後に世界の映画人を魅了することになるクリストファー・ドイルが、その瑞々しい天性を初めて長編カメラマンとして解放した記念碑的作品でもあります。彼らが織りなした光と影のタペストリーは、時を超えて私たちの網膜を揺さぶり、色褪せることのない映像美として、いま再びに誕生した。
 
この物語は、時間を直線的に歩むことを拒み、全編を支配するのは、徹底された意識の流れ、意識流の構造。出来事を順番に説明するのではなく、主人公の記憶の流れに沿って過去と現在が行き来します。波のように記憶が押し寄せる構造が特徴であり、まるで潮の満ち引きのように、観客の心へ容赦なく、寄せては返す。ただ映画を観るのではなく、誰かの記憶の深海へと深く、深く沈降していく感覚に囚われる。

その底流にあるんは、伝統と近代化の葛藤という、激動のうねり。1980年代の急速に変貌する台湾社会を背景に、古い価値観、家族・結婚と近代的な個人主義の衝突を描いていました。社会がドラスティックに変貌していく中で、特に際立つのは女性の自立という切実な願いです。伝統的な家父長制や社会のプレッシャーに抗い、自らの意志で人生の選択をしていく女性の成長を描いています。何かに従属する安穏を捨て、孤独という名の自由を抱きしめて歩み出す姿は、現代に生きる我々の孤独とも密かに響き合います。
 
そして映画は、記憶と喪失についての静かな祈りへと昇華されていく。ある事件をきっかけに過去を振り返り、失われた時間や愛、人間関係に向き合う姿が表現されています。それは目を背けたくなるよな、人間関係の不条理との対峙でもあります。愛し合っているはずの夫婦や家族の間にある、埋められない孤独やコミュニケーションの不在が、ヤン監督の冷徹で優しい眼差しによって浮き彫りにされる。もっとも近い存在やからこそ、もっとも遠い。その埋まらない空白にこそ、人間の愛おしさが宿るのかもしれません。
 
台湾映画の歴史において、新しい表現スタイルを確立した記念碑的作品である今作品。それは単なるヒューマンドラマ・心理映画という枠を超え、いまという一瞬がいかに過去の無数の喪失の上に成り立っているかを教えてくれました。海辺の風に吹かれながら、消え去ったものたちの声に耳を澄ます。その詩的な映像体験は、心の奥底に眠る忘れられた海を、静かに、そして激しく揺さぶり続けています。


佳莉(ジャーリィ)は小さな町の医師の娘として生まれ、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育つ。父の権威に逆らえず愛を失った兄・佳森(ジャーセン)の姿は、彼女に深い衝撃を与えた。やがて佳莉は父が望む結婚を拒み、同級生との結婚を選んで家を出る。一方、佳森の元恋人・蔚青(ウェイチン)は、留学先のオーストリアから帰国しピアニストとして活躍していた。蔚青は佳莉の自由な決断に憧れを抱いていたが、佳莉の結婚生活はいつしか理想とかけ離れたものになってしまう。ある日、警察に呼び出されて海辺を訪れた佳莉は、夫との歳月や自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合いはじめる。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められ主人公・佳莉役にシルビア・チャン。ウォン・カーウァイ監督作品などで知られる世界的撮影監督クリストファー・ドイルの長編デビュー作でもある。2026年7月、4Kレストア版にて日本初の一般劇場公開。
4.0
台湾ニューシネマの旗手エドワード・ヤンの劇場用長編デビュー作品。4Kレストア版でずっと観たかった貴重なスクリーン映像を堪能した。主演のシルヴィア・チャンは、「山河ノスタルジア」(2015)でファンになり、「妻の愛・娘の時」(2017)や「燈火は消えず」(2022)の素晴らしい演技が印象に残っているが、今回本作で初めて若い頃のシルヴィア・チャンを観ることが出来て感激。

エドワード・ヤンの原点を観るつもりだったが、その天才的作風はもうこのはじまりから確固たるものであったということを見せつけられたような気がする。この作品が制作された1983年の台湾と言えば、厳格な戒厳令下にありながら、後に世界を席巻する「台湾ニューシネマ」が胎動した歴史的な転換期であったと改めて感じた。

ピアニストとしてヨーロッパで活躍していた蔚青が13年ぶりに台湾に帰国。演奏会を開くと知った昔馴染みの佳莉(シルヴィア・チャン)が久しぶりに連絡して来た。その2人が再会して話していく中で13年間の思い出が回想のように流れて行く。蔚青は佳莉の兄・佳森と学生時代からの恋人だったが、佳森の父が厳格で家が許す人としか結婚出来ず、彼女は海外へ留学してしまう。そんな兄を見ていた佳莉は、親が認めない学生時代の同級生を選んで家を出てしまう。しかし、佳莉の結婚は次第に理想とはかけ離れたものになって行き、事件が起きる。

家父長制度が色濃く残っていて親が決めた結婚以外は認められなかった時代は、日本でも長く存在していたが、台湾もまたそういう時代や境遇の中で生きてきた若者たちがいる。それでも親の反対を押し切って自分の選んだ人と結婚したからと言って必ず幸せになれるわけではないし、親の言いなりになって結婚しても死ぬ間際幸せだったと思う人もいる。人生は思うようにはなかなかいかない。現在と過去、複数の視点が絡み合いながら、1人の女性を通して急速に近代化していく台湾社会が浮かび上がってくる。その時代背景やファッションなども楽しめた。

夫を探して海辺で過ごす佳莉、夫との歳月や自分が選んだ人生を思い出しながら、自分がちゃんと夫と向き合っていたか考えを巡らす。辛そうな表情で佇むシルヴィア・チャンのシルエットがいつまでも心に残った。
kou
4.0
劇場用長編デビュー作とは思えないほどの語り口の洗練された様。時制が回想の中で過去へと戻ったり、心象風景が織り交ぜられるのに置いてかれる事がなく、それでいて不思議な感覚に陥る。

光と陰というのが他の作品でも効果的であるように、室内でも外でも、見事に世界を切り取っていく。

ある少女の成長と締められるその人生は、どの選択でも、どの女性の人生でも後悔が残る。希望でも絶望でもない、その後味が見事だ。

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