今 自分の目の前から掛けがえのない人が消えようとしている
姿を見れば涙が溢れる 何をしてても泣けてくる 映画館の演技は感傷的な迫力だった

1950年後半パリ アルジェリア解放戦線に身を投じたジャンは妻ムーシュに別れを告げた

アラブ人を撃った極右組織OASの男に暗殺されたムーシュ
ドゴール政権の政策で侵略に終止符が打たれる
P・ガレルの独白をジャンの運転する車の中で語られていた

ムーシュを失ったばかりなのにと思ってしまったけどジャンはアルジェから来たジェミナと知り合い新たな道を歩こうとした朝に2人の男の影が現れた

神のインク壺とタイトルが出ていた
モノクロームの明暗に統一感がないのだけれどジャンが最後に見たであろう海の輝きは美しかった
「内なる傷痕」でも衝撃だったP・ガレル
ピアノの戦慄が激動の時代の鼓動を感じさせるようで揺さぶられました

ガレルお得意のジュテームなお話、愛は憎しみを超えるかの根本的な問い。だが強すぎる愛は時に人を傷つける、国を思う気持ちも、人を思う気持ちも同じく。アルジェリア解放戦線を支援する活動家の男、同じ志を持つ元妻は、極右組織の凶弾に倒れた。悲しみに沈む彼、そんな折に出くわしたのは「敵側」の娘、それでも愛は二人を包み込み逃がさない。万人に対し公平な海辺での束の間の平和な日々、あなたの悲しみは癒せない、それでも分かち合いたい、抱きしめて欲しいと涙を流す彼女。少しでも目を離してしまえば、この愛は儚くも消えてしまいそうだ、しっかりと引き寄せ、離しはしないと強く誓いあったのに、悲劇の足音は刻々と近づいてくる。スローからストップモーションで切り取られる惨劇、断ち切れない憎しみと断ち切られる愛、それでも女達はまたミシンに向かい、窓を拭き、明日の生活を築こうとする事を辞めないのか、その手は一体何の為に付いているのだ。

50年代末のアルジェリア戦争当時のパリを背景に、政治と愛に生きた一人の男の軌跡を描いた、美しくも苛酷な作品✧*。

モノクロ映像にピアノの音色。セリフで多くは語らず映像でしっかり魅せる。しっとりした大人の映画。表情だけでどんな会話をしているのか想像を膨らませてしまう。寄り添う男女の海辺ショットは幻想的で格別に美しい。『愛してる』を精一杯の言葉で伝える彼女。このまま時が止まってくれと願うも、あの儚いラストにシビレてしまう。

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