ファニー・アルダンとジェラール・ドパルデューが共演と聞いて、トリュフォーの「隣の女」(大好き♡)が頭に浮かんだ。本作ではすれ違いが多くなってきた夫婦役。出張から戻った夫ベルナールの携帯に残されたメッセージから、浮気を確信した妻カトリーヌ。自分に見向きもされなくなったと感じていたカトリーヌは、職場近くで出会った娼婦マルレーヌにナタリーと名乗らせて、夫に近づくように依頼。情事の様子を彼女から聞くうちに、二人の間に不思議な連帯感が芽生えていく。
官能小説のようだという感想を目にするが、僕も同感。エマニュエル・ベアールが語る情事の様子は、台詞で語られるのみで、直接的な場面は一切出てこない。それにもかかわらず、言葉の選び方も生々しく巧みで、声をあげるのをこらえる夫や行為の様子を想像させられてしまう。フランス映画らしい会話劇なので、台詞がまさに官能小説。それがエマニュエル・ベアールの吐息多めの喋りなんだもの😍。想像力逞しい映画ファンにはたまらない♡。
でも、それを聞く妻カトリーヌはどんな心境だったのだろう。時に不快に感じてもいたが、のぞき見をしているようなドキドキする感覚もあったに違いない。でも映像から受ける印象はとにかく耐える女。
マルレーヌが使うフレグランスや好みのワインを夫の前で試す様子も面白い。マルレーヌが美容の仕事もできると知ったカトリーヌが、家に閉じこもっている母親をリフレッシュさせる為に彼女を家に呼ぶ場面が好き。すべての結末を知った上で、夫の言動や態度、マルレーヌの台詞の端々、カトリーヌとマルレーヌの距離感に注意しながら、改めて観るのも印象が変わって面白いかもしれない。
ハリウッドリメイク版がエロい、との感想を目にする。言葉で表現してそそる官能小説的なフランス映画。対してハリウッド版はビジュアル重視でそそる映画になってるのだろうな。