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ぼくら、20世紀の子供たち
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『ぼくら、20世紀の子供たち』に投稿された感想・評価

二つの重たい衝撃に打ちのめされたドキュメンタリーだった。

ひとつめ。
ローティーンの子供たちが平然と煙草を吸い、盗みを働いて日々を過ごしていることをごく普通に言う。カツアゲする側もされる側も登場する。戦後の混乱期の戦争孤児が現代の整った街並みの中にいるような異様さだった。
ある少年が撮影する監督に向かって「孤児院の人か?」と聞くので、彼らを保護する大人もいるのだろうが、そうした保護を拒否して犯罪をやりながら自由に生きることを選んでいる子供の姿に暗澹たる思いがした。
ソ連崩壊後、一握りの超勝ち組(『アノーラ』の成金一家のような)が出現した一方で貧困層に転落した人々は悲惨だったという知識は持っていたが、そのしわ寄せを食らった子供が親といるより路上生活のほうがマシとまで言い切るのを見せつける映像の力は凄まじかった。当時は、日本に住む10代の私にはゴルバチョフがカワイイおじさんカテゴリで消費されていたくらいの印象しかなく、同世代がこんな状況で生きている姿は想像もできなかった。のほほんと大人になった私は今も平和に生きているが、ここに映された子供たちは今どんな大人になってるのだろうか。

ふたつめ。
少年院でインタビューされる収監者もあっけらかんと強盗や殺人の告白をしたりする。日本の刑務所ドキュメンタリーで見るような神妙な者もいるとは思うが、観客に現実を容赦なく突き付ける監督の姿勢が窺える。
そして『動くな、死ね、甦れ!』『ひとりで生きる』でワレルカ役を演じたパーヴェル・ナザーロフが収監されていて、2作で共演したディナーラ・ドルカーロワが訪問して再会する。パンフによると彼女の訪問は後日らしく、監督はナザーロフが少年院にいると知らなかったのかもしれない。
元々ストリートチルドレンだったナザーロフは『動くな…』の撮影でスカウトされたらしいが、その経験が彼を真っ当に生きる人間にすることもなく、三つ子の魂百までが現実だったという虚しさを感じた。

ドルカーロワは現在も映画界で活躍している(『コンパートメントNo.6』で見た…そういえばその舞台はこのソ連崩壊直後の時代だ)。
同じ場所に立っていた二人だったのにどうしてこんなに違う人生になってしまったんだろうという再会の物語はいくらでもあるが、17歳ぐらいで現実にそんなことを体験する人はどれだけいるのだろう。
幼馴染との再会のハグ、思い出話と歌で少しだけ温かい時間が過ぎる。2作での、守護天使との再会の場面が蘇るようだった。

ナザーロフは演技を勉強してまた映画に出たいと話していたが、その後俳優としての出演はない。それどころか2008年に麻薬密売の罪で逮捕されて懲役4年の判決を受けていた。
https://www.pravda.ru/news/accidents/260722-sud/
罪を重ねたナザーロフをカネフスキー監督はまた撮って、2010年にドキュメンタリー映画"Da Cannes alle sbarre - Una testimonianza di Pavel Nazarov"を作った。
主演俳優と映画監督がこんな形で腐れ縁になった例って他にあるのだろうか。
ヴィターリー・カネフスキートリロジー3作目。第二次対戦後からソ連崩壊後まで子どもたちの境遇が何も変わっていないことに愕然となる。10歳そこそこの少年がタバコをふかしながら武勇伝を語る衝撃。音楽が唯一の拠り所なのか人が集まれば自然と歌の輪ができるのが印象的。そしてあの二人がまさかあんな形で再会を果たすなんて思いもしなかった。
RIO
4.5
もっと時間を置いて観たかったけど欲張りはよくない

序盤から飛ばして子供たちが街の往来で煙草を吸いながら無邪気に戯れている 話も聞かず育ててもくれない大人を捨てて自らコミュニティを作り何とか命を繋ぎ中立国ができていた

犯罪者として捕まり収容所で映された少年たちが年齢ごとに並んでいるその顔は上に行くほど重苦しさが増していった

劇的なワレルカの登場に気持ちが一瞬の間だけ蘇った 彼の存在に何かを託していた自分の気持ちにも気づく感覚

台本なのかホントなのか分からないけど相変わらずのワレルカのことはその表情からしか窺わえないまま迎えたエンディングがかなりのパンチ&ヘビーだった ラストの監督のとんでもない質問の意味は何だろう

久々の再会をするディナーラとパーヴェルは肩を寄せ合って囁くように話す姿はワーリャとワレルカのようだ
ワーリャの質問に答えるワレルカはロシア人は自尊心が強いから失敗する 収容所は身と心を洗濯するところと飄々としてました 今をどう生きるかが問題なんだと言う顔 それは少年の頃と何も変わらないまま

電車に乗るのに必死な大人たち
誰も監督の質問には答えてくれない

取り上げた題材もさることながら其々の人間たちのリアルを織り交ぜて「動くな⋯」からの時間軸も合わせて全体像がほぼ完璧に想像することができる
自分の時間も絡んでくれる映画を観ることの醍醐味を与えてくれた素晴らしい3部作だった

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