ローマの女性連続殺人事件を偶然目撃してしまった作家の主人公が巻き込まれる設定自体は悪くなかったが、犯人の動機とか掘り下げられる箇所がいくらでもあるのに最後が駆け足し気味に終わってしまい色々と惜しい映画だった。

今日までひたすら我が道を歩き
"斬新"を"古典"と言い張ってきた感じのアルジェント監督の 瓶カルピスをそのまんま飲み干すような 限りなく原液に近い濃厚作
そりゃ舌先に何か残るくらいの"粗さ"もあるんだけども やっぱり際立った異色さを印象づけてくれるんだなぁ
ストーリー進行の巧みさ 緻密な配置の画力 そんでもって 匂い立つような美女…
深紅の血から ここまでシネマを感じられるのは 彼だけかもしれないなぁ

イタリアホラー界の巨匠、ダリオアルジェントの監督一作目。そして、ジャンルとしてのジャーロを確立した作品でもあります。最初に製作されたジャーロってわけじゃないけど、その功績はやはり偉大ですね。ちなみに最初のジャーロは師匠マリオバーヴァ監督の『知りすぎた少女』と言われてるようです。

あらすじ…
イタリアで彼女と休暇を過ごしていた作家の主人公。ある夜、画廊で殺人未遂現場を目撃してしまう。警察に目撃者として帰国を禁止され、やむなく犯人捜査に乗り出す主人公だったが、主人公自身も命を狙われはじめ…という話。

ミステリーを根本に置いてる作品でありながら脚本的に不合理な部分が目立つのは、いつものアルジェント作品らしくはありますが、本作はまだマシというか（笑）アルジェント特有の演出・ビジュアル寄りな作風とミステリーとしての脚本の均衡が保たれていて、傑作に仕上がっています。

冒頭、黒づくめの犯人が真っ暗な部屋で刃先の真っ黒な刃物を赤い布で拭くシーンからアルジェントらしい色彩感覚が滲み出てて引き込まれるし、その後の真っ暗な夜、真っ白な画廊で黒づくめの犯人が白いドレスの美女を刺し、赤い血が流れる殺害シーンのビジュアル的美しさで虜に。残虐でありながら凄くオシャレ。それでいて怪奇ムードも漂わせてる。この雰囲気はアルジェントにしか出せないんじゃないですかね。初作から監督の非凡さが窺えます。

黒づくめの犯人、旅先で事件に巻き込まれる主人公、狙われる美女、犯人目線での殺害シーン等、後のアルジェント作品にも見られる要素もあるし、映像的違和感が謎解きに活きてくるというところも監督らしい。こういったところがジャーロの大傑作『サスペリアPART2』で花開いてる感じですね。

バス駐車場での、明らかに物理法則を無視した怪奇よりな演出も素晴らしい。ただの鬼ごっこだし、それそのものには物語的に大した意味はないんだけど、あのいかにも小悪党な不気味な容姿と相まって印象深いシーンになってる。

アルジェント作品は合う合わない激しいし、雰囲気重視で非合理的な脚本だと頭ごなしに切って捨てる方も多いように思いますが、私的にはビジュアリストとしての監督は本当に素晴らしいと思います。なのでミステリーより『サスペリア』等のオカルトチックな作品の方が持ち味を出せてるような気はします。それほど監督の作品見てるわけじゃないですけどね(^_^;)『サスペリア』のBlu-ray買ったので、近々見直そうと思います♫

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