バームバック『イカとクジラ』の変奏（逆か）にスコリモフスキ『身分証明書』を添えて、みたいな、こっちは一年の兵役前モラトリアムだけど。主人公のジェシー・アイゼンバーグみが超強いし、なんせヒロインの母ちゃん、じゃなくてカーチャちゃんが可愛い過ぎるってか白石麻衣の元ネタでは？ってくらい可愛いくて死んだ。特に妊娠したって嘘ついちゃったからって本当に作りましょうって青姦出来る場所探すとこ、神では？あぁ言う積極性とても大事だと思う。

日本で言えば新人類とかしらけ世代の処世術（虚言癖有り）、ロシアで言えばペレストロイカ以前・以後の世代間闘争。自分達が叶えられなかった「夢」を下の世代に押し付けるだけの敗北感蓄積型教育に対する批判と、個人主義の肯定かつ物質主義への転換。若者達は千葉真一のKARATEに熱狂し、ハービー・ハンコックの「Rockit」で踊る。正直アナスタシア・ネモリャーエワが可愛すぎてあんまし内容覚えて無いけど、おふざけピアノ即興曲がダニエル・ジョンストンみたいだった気がする。家の中で火付けたり（自分で消す）、パパから送られて来たマサイ族の槍投げたり、17歳が爆発している。ゆる〜いラブコメ青春ドラマ、穴あけパンチで人は殺せるか？のくだりは一体…。失恋の先に未来の自分を見る、18歳の僕は果たして。

にしたってカーチャちゃんなのよ…ほぼそこに対する高得点、生涯忘れる事は無いであろうヒロイン。

厚かましさの権化みたいな主人公の発言の一つ一つが面白い。
モラトリアムの果てにある非情な展開には胸が痛む。
MCハマーみたいな音楽で踊り狂う若者たちと、兵役帰りの兵士との対比。
国に翻弄される若者の物悲しさと青春との対比。
常に繰り広げられる夢や将来像についての問答。
一生続いてほしいピアノの連弾。
童貞すぎてしくじる展開のあるあるは万国共通。
カッチャーかわいすぎワロタ。
この手のソビエトandジョージア映画のコメディタッチにハズレなし。


2020劇場鑑賞30本目

• #2020劇場鑑賞miyagi

親の離婚、大学受験失敗、やりたいことも夢もない、なんとなく潜り込んだ出版社でメッセンジャーボーイ（でもほとんどメッセンジャーしてない）やって、カーチャと出会って、童貞ならではの失敗の果てに、このままじゃダメなんだな、と思い馳せる向こうには、まるで鏡の中の自分のように兵役帰りの若者がたっている。

終始ぼんやり顔だったイワンの顔が少しだけ変わった。
長い夏休みが終わるみたいに、モラトリアム期間が終わる心細さと、ほんの少しの覚悟を持って。

新人類の若者を前に大人たちの反応は様々。面白がってるのは大体女性ってのが興味深かったな。

• #ソヴィエト&ジョージア映画特集