アテネフランセでグリゴーリ・コージンツェフの2作を上映するということで、レンタル可能だったこの作品を試しに見てみた。

内容は今更言うまでもないから置いておくとして、おそらく作る上で参考にしたであろうオーソン・ウェルズや黒澤明、またはフランチシェク・ブラーチルのような重々しい雰囲気をしっかり表現できていただけでも十分見た甲斐はあった。

順番は逆になったが、シェイクスピア繋がりで前作ハムレットこの感じなら良い作品になってそう。

モノクロが映えるソ連の名作。
ラストシーンの笛の音色が忘れられない。

前に大学の授業で鑑賞.

４大悲劇の一つであるリア王. この作品は、この文学の授業で扱ったどの作品よりも解釈しづらかった. リア王は、三人の娘のうち忘恩なゴネリルとリーガンの上手く巧みな言葉を信じ、誠実なコーディリアを手放した. これは悲劇の始まりである. しかし、だからといって、不誠実さを見抜くことの大切さが主題ではないだろう. シェイクスピアは、私たちに一体何を伝えたかったのだろうか.

まず、悲劇の始まりを招いたリア王の領土分布の際に娘達に求めた愛の言葉だが、これにおいてリア王が誤った判断をしたとは言い難い. 一見、リア王がこんなことを言い出さなければ悲劇を招かずに済んだのに、と思いたくなる. しかし、リア王は王として生きていた価値観がある. つまり、周りからの忠誠心や敬意を受けてきた. だから、ただ単に娘達からの恩恵の言葉を聞きたかっただけだろう. そして、このことと深く結びつくものがある. それは、リア王が口にした「人間は哀れな裸の二足獣」である. リア王がこの言葉を発したとき、リア王は権力を失っており、気が狂っていた. おそらく、この時初めてリア王は気づいたのだろう. 王のときに手にしていた忠誠心や敬意は全て見せかけだったのだと.「人間は哀れな裸の二足獣」とは、まさにこのことなのではないか. きっと、シェイクスピアはこのことを伝えたかったのかもしれない.

しかし、何もかもすべてが見せかけだとしたら、リア王も私たち裸の二足獣ですら救われない. そんななか、現れるのが誠実なコーディリアとケントである. この二人は哀れな飾りである忠誠心や敬意を超えるものをもっていた. それを考えることも、この物語の主題のようにも見えてくる.

私個人としては、それは「愛」だと信じたい. しかし、この問いの答えはシェイクスピアが亡くなった今、誰が伝えることが出来るのだろうか.

レポートとして書いたものなので、ちょっと硬いかもしれません〜笑