▪️JP Title :「欲望のあいまいな対象」
Original :「CET OBSCUR OBJET DU DESIR」
▪️First Release Year : 1977
▪️JP Release Date : 1984/11/03
▪️Production Country : フランス・スペイン
🏆Main Awards : ※※※
▪️Appreciation Record : 2020-716
🕰Running Time : 104分
▪️Director : ルイス・ブニュエル
▪️Writer : ルイス・ブニュエル、ジャン＝クロード・カリエール
▪️MusicD : ※※※
▪️Cast : フェルナンド・レイ、キャロル・ブーケ、アンヘラ・モリーナ
▪️Review
ルイス・ブニュエル監督。。。とにかく何かやらかしてくれる監督です。『アンダルシアの犬』や『黄金時代』などほんと凄い作品でした。本作もこれらの作品と重ね合わせてシュルレアリスム作品と語られることもある、そんな作品です。
年老いても懲りずに女を求める男の性、自分に常に惹きつけておくように様々な謀略を仕掛ける女性。。。そんな人間の欲望を余すところなく描し、時折でてくるテロをも潜在的な人間の欲望として描いているのは拍手喝采です。ルイス・ブニュエル監督の遺作になるのですが、この時77歳、遺作においてまで性愛へのエネルギーが充満する、ブリュエル自身を投影した寓話でもあります。凄い！！
そしてもう一つの見どころが、”一人二役”ならぬ、なんとこの作品では“二人一役”というこの作品でしか観られないようなチャレンジでしょう。キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナが異色のニ人一役に挑戦しているのですが、コンチータ役の二人の女優はおとなしい感じのキャロル・ブーケといかにもラテン系の激しい感情を持ったアンヘラ・モリーナの使い分けが絶妙で非常に納得させられてしまいます。

物語は。。。
フェルナンド・レイ扮するブルジョワの老紳士マチューは、若くて美しい小間使いコンチータに夢中になりますが、コンチータは、マチューをその気にさせたかと思えば、するりとその腕から逃げ去ります。彼をものの見事にあしらう娘は、小悪魔的な娼婦にも、汚れなき乙女にも見えて。。。

ストーリー展開だけでなくラストシーンも驚きの深さで、観る人によって感じ方は全く変わるかもしれません。ブニュエルの作品はすべて欲望を遂げさせません。本作もまるで欲望の途上に人は生きているとでもいいたげなラストです。
ブニュエル曰わく「欲望のあいまいな対象とは女性でも性でも精神でもなく、彼の欲求不満である。それが彼の欲望をより刺激するのだ。」と。
深い！！

▪️Overview
正体不明のテロ事件が頻発するセビリアの町から、パリ行きの列車に乗り込んだのは、初老のブルジョワ紳士マチュー。追いすがる女にバケツの水を掛けた彼は、驚く乗客たちに奇妙な愛の体験談を語り始める……。姿を現すたびに表情を変える若く美しい小間使コンチータを2人1役という史上初の試みで描いた巨匠ブニュエルの遺作。（引用:映画. com）

本日2月22日は20世紀のシュールレアリスム映画を牽引した巨匠ルイス・ブニュエル監督の生誕117周年。

常に非合理的な要素を作品に取り込み、観客をことごとく煙に巻いてきたブニュエルですが、
実にその作風は遺作となる「欲望のあいまいな対象」まで続き、本作では"二人一役"という完全に映画の根本を覆す禁忌に挑んでいます。

ブルジョワの初老マテオが若いセルビア人女性コンチータに惚れ込み、手玉に取られてゆく恋愛押し問答の経緯が彼の口から語られます。
どんなに迫ってもギリギリのところでヤらせてくれない魔性の女コンチータを、場面に応じてキャロル・ブーケ、アンヘラ・モリーナという美女二人が唐突に入れ代わり、蠱惑なまでにマテオを翻弄していく…。
私だったらこんな美女に焦らされたらかなり早い段階で発狂してますわ。

マテオを演じたのはメキシコ時代「ビリディアナ」から出演しているフェルナンド・レイですが、
この役柄を彷彿とさせるのは「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」で同じく彼が演じた外交官。
そこでもフランスにおけるテロの脅威が触れられており、本作はそこから発展したテーマとも云えます。

ここにもブニュエルお得意の目的が達成できない「反復」の手法が用いられ、またネズミやブタやズタ袋など、あれ？っと思わせる仕掛けも配置。

男は懲りることなく、いつまで女に翻弄され続けるのか。
むしろ女がその気になれば、どんなヤツでも簡単に手玉にとれるくらい男はバカな生き物なんだよっていう真理に近いです。
というか、真理ですこれ。

【明日はタンジール】

“あの人たちは、セビリアに宿を取って、明日はタンジールに発つ旅行者よ”

あのコンチータの裸のフラメンコを見ていたのは、この映画の製作年から考えて、日本人なのだろうなと、ちょっと苦笑してしまう。

ああした日本人は、当時は沢山いたのだ。

ところで、裸のフラメンコを見たことはないけれども、バックパッカーをしていた時に、僕もセビリアに宿を取って、翌日、モロッコのタンジールを目指したことがある。

この作品は、ルイス・ブニュエルの遺作だ。

男や女の本質に迫っているような気がして、僕は結構好きな作品だ。

この作品の、コンチータは、キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナの二人の女優が演じ、女性の2面性を表していると言われているが、それに加えて、僕は、スケベ親父が、女性に対して性欲が勝り、一人の女性を愛していると口では言っても、肝心な顔さえも実は曖昧にしか覚えておらず、関係を求めてしまうといった皮肉も込められていると強く思う。

あと、コンチータが見せる焦（じ）らしについて白状すると、“いるいる、女性にこういうタイプ！”って、ものすごく同意したくなる。犬へのお預けじゃあるまいしと。

映画は、テロだのギャングの抗争があっても、ブルジョワジーはこんなものだと制作当時は言いたかったのかもしれないが、現代もうわべは豊かになって、自分のことしか考えられなくなっている僕たちの社会も同じなんだと思う。

結局人間は変わってないのだ。