友二朗

男はつらいよ 寅次郎の休日の友二朗のレビュー・感想・評価

4.6
「風に向かって俺の名を呼べ」

明確に主人公は満男へ。
寅さんはここへ来て「寅さん」という魂となって人々の心に移って、もはや現象というか、人の言動そのものになっている気がする。より抽象的な存在。より神話的な、誰もが寄りかかりたくなる、そんな人に。

丁寧なハートフル物語でこれまた素晴らしい一本であった。今回もありがとう寅さん。
 
冒頭 寅次郎の夢再び。寅磨と桜式部。
いや倍賞さん綺麗すぎる。本当に美人。いつもがどれほどメイクしてないことが分かる。

前作の42作からついに立ち歩くのも台詞を言うのも身体に応えるようになった渥美清さん。正にその命を削って、魂一つで全日本のラブコールに笑顔で返す渥美さん。心を奪われずにはいられない。ありがとう。もう一度会ってくれてありがとう。もう一度帰ってきてくれてありがとう。毎回そう思いながら残りの作品を観ているこの頃。

スタッフクレジットのフォントが今風に。
角丸ゴシックみたいな可愛いフォント。
む!及川泉/後藤久美子だと!泉ちゃんレギュラー化するのか!なら嬉しい。

え!満男がついに大学へ入学している。
「俺 下宿したいんだけど」
全国の青年の、あるある悩みを代弁する満男
満男の下宿 さくらは寂しいよね。
息子の残した朝ごはんが母の朝ごはんになる

子供たちと子供のように遊ぶ変わらぬ源公。
500円を50円と勘違いする寅さん。もちろんさくら主導だけど、さくらと博ってまじでちゃんといつも満男について話し合うよね。満男もちゃんとリビングの机に座るし。

「満男 今の言い方許さんぞ。父さんには
 何て言ったって構わんけどな、お前の
 こと こんなに愛してる母さんに向かって
 なんてこと言うんだ!謝れ」

「あーあ もう1人女の子作っときゃ
 良かったな さくら」

今は名古屋に住んでいる泉。
察してすぐお茶を出す三平。できる男やな。
アパートを友達と探す満男。

泉ちゃんが来てて引っ越しを中止する満男。
いや〜寅さんの甥やな満男。
泉の礼子の再び登場。相変わらず綺麗。
夏木マリは唯一無二のオーラを持ってる。

「お父さん注ごうか?」
「ああ ツーフィンガーな」
なんだかんだ仲の良い諏訪家。泉の料理。
いつもは食べないピーマンを食べる満男。

不倫についてさくらと博が聞かれる。
博がめっちゃユニークになってる。てゆうか
もう作品の大黒柱って博なんだよね。嬉しさみたいな寂しさみたいな。

尾崎豊のポスターを貼っている満男。
電子オルガンを一緒に弾く2人。
「懐かしい。よくブラバンで
 演奏したね この曲」
一階でソワソワする博。笑うさくら。
ホントにこの夫婦大好き。

「もう寝ろって言ってこいよ」
「子供じゃないんだし」
「だから問題だろう。満男があの子に
 何かしたらどうするんだよ。
 預かった娘さんなんだぞ」
「そんな勇気ないわよ 満男には」
「どうして分かるんだよ」
「博さんの息子だもん」
「...しかし兄さんの甥でもあるんだぞ」

「なんだ父さんまだ起きてたのか
 早く寝ろよ」
「ああ」

博がこんなにコミカルに描かれるとは。
笹野高史 連続登場。女性の故郷 大分へ
行ってしまった泉の父親。
正式な離婚は未だしていない両親。

今回 寅さんと再会するのは三平。
「ふ〜ん 辛抱の強い男だね お前も」
「その台詞ね こないだ来はったときも
 聞きました」
「ハハハハッ 何言ってやんだい。
 どうだい 俺の身内はみんな生きてるか?」
「フッ そんな冗談ばっかり言って。
 みんな元気で頑張ってはりますよ」
「そうか。死に絶えたらお前
 乗っ取ろうとしてんじゃねえのか」
「いやそんなこと考えてませんよ。フフフ」
寅さんと三平コンビもええなあ可愛くて。

なんか不自然なお出迎え、を演技一つで見事に演出してしまうとらやファミリー。流石。
満男へのお土産は辞書。初めてちゃんと使えるものを買ってきた寅さん。寅さんの姿を見た途端満男をほっぽりだして付いていっちゃう泉。そんな魅力があるんだよね。

まず泊めるのがとらやから諏訪家になったのが面白い。さくらと博だって十分過ぎるほどとらやの魂を受け継いでいる。

タコ社長は親戚同士。その通り。
「まあ 辛いことがあったら
 いつでもまた柴又においで。な?
 この家でもいいし さくらの家でもいいし
 皆 泉ちゃんが幸せになれば良いなと
 思ってんだから」

「若い時っていうのはな 胸の中に
 炎が燃えている。そこへ「恋」という
 一文字を放り込むんだ。パーッと
 燃え上がるぞ。水なんかかけたって
 消えやしない」

結婚行進曲を背景に満男の夢を語る寅さん。
名付け親になるらしい笑

「じゃまあ そのことは寝ながら
 研究するとして おやすみ」
前田吟さん素で笑ってる。

「帰りの切符はお父さんに
 買ってもらうから」
会えるか分からないのに、強いなこの子。
バイト代をあげる満男。さくらの子やなあ。
乗っちゃった〜!!やっぱり寅さんの甥。
いいぞ満男!頑張れよ!

泉ちゃんのために走れ満男!
後藤久美子の表情演技よ。
電車の窓に景色を流して笑い合う若者達。
徳永英明の「JUSTICE」神曲チョイス。
俺もこんな全てを捨てた恋がしたい。

九州に行くからと電話を切る満男。
寅さんのDNAが強すぎる男。
満男の心情を完全完璧に理解してめちゃくちゃ嬉しそうな顔をする寅さん。渥美さん新幹線のモノマネおもろすぎる。前田さんも倍賞さんも絶対笑い堪えてる。

「金なんか無くたっていいじゃないか
 美しい愛さえあれば!」
でもお金ない若者2人の旅はおもろいやろな

「いやせやけどお腹空くんちゃうやろか」
「腹なんか空かない 絶対に空かない!
 美しい恋をしていれば 1ヶ月くらい
 メシなんか食わなくたって平気だ!!」
凄まじいな寅さん笑
三平ちゃん可愛すぎる。絶対モテるやろ。
でも満男をしっかり理解してるのは寅さんだけなんだよね。礼子登場。まさか今作のマドンナは礼子になるのか。ええやん。

休みを取ってお礼を持って娘を迎えにくる礼子、めちゃくちゃ良いお母さんやん。てかすんごいファッションしてらっしゃる。

と思ったら寅さん、意見を180度変えて礼子さんと一緒に九州へ。笑うわ流石に。今作のコメディ要素、最強に刺さる。素晴らしい。

寝台列車が映されるのは初。
今は無きブルートレイン。いいなあ。
渥美さんのアップ ああ渥美さんの顔
やっぱり年をとったなあ と思わされる。

まじかあ 新しい女の人 幸枝さん
綺麗で元気で優しそうで、これはキツい。
「パパじゃないみたい。
 日焼けして元気そうで」

日田を紹介される泉。なんでやねん。
なんで紹介されなあかんねん。辛すぎる。
確かにめちゃくちゃいい所やけど。

「泉!お前パパに何か話が
 あったんじゃないのか」
「あったけど もういいの。おばさん
 パパをよろしくお願いします。さよなら」
これは辛いな。この若さで経験してしまう。

「泣くなよ、泣いちゃダメだよ」
満男やなあ。こんなとき寅さんだったら。
泉・満男と礼子・寅次郎の再会。
ああ満男は礼子とも再会なのか。

倍賞さんのビールの飲み方可愛い。
なんか家族みたいな四人衆結成。
シリーズ中でかなり珍しい展開。

「ほんに よか家族たいね」
満男の歌 まさかの ちびまる子ちゃん笑
寅さんと満男の夜。ちゃんと指摘する満男。
言われるまで分からなかった寅さん。

「言えなかったの。
 パパ 幸せそうだったから。だからもう
 パパのことは諦めよう。ねえ?ママ
 私と一緒に暮らそう」
これを娘に言わせてしまう。
愛していたんだねパパを。

「青年 行け!」
走れ満男。走れ若者。走れ愛する人の為に。

「何もしてやれなくて ごめんな」

「貴方にとっては困ったお兄さんかも
 しれんが、満男君にとっては
 頼りがいのある伯父さんなんじゃ
 ないですか?寅は」
源ちゃんってお茶を出せたんか。
源ちゃんの笑い方可愛いなあ。

寅さん/渥美さん ほんとにしんどそう。
喋り方もなんだか丸いし。歩き方も。
切なくなる。

久しぶりに寅さんとさくらだけの別れ。
しかも柴又駅で。と思ったら満男も来た。
寅さんにセーターを買ってきた満男。
これは嬉しいよねえ寅さん。

「でも もし伯父さんに奥さんがいたら
 きっと暖かいセーターを編んで
 くれんだろうけどな」
切なくなるさくら。寂しすぎる寅さん。

トランクを受け取る時、寅さんとさくらの手が触れる。泣ける素晴らしいカット。

「満男 困ったことがあったらな
 風に向かって俺を名前を呼べ。
 伯父さん どっからでも
 飛んで来てやるから」
色褪せぬ黄金の名シーン。
吉岡さんが今でも大切にしているシーン。

風に向かって呼んだら、
ホントに来て欲しい。寅さん。

礼子へ花束を送る寅次郎。
"いつか また来る"って。

「誰ですか あの人」
「この人?私の恋人よ」
寅さんへ惚れていた礼子。

「来てくれたんだ 寅さん」

お正月にまた来てくれた 泉ちゃん。
飛んで帰っていく満男。可愛いなあ。
友達のよっちん達がいつも可哀想笑

「伯父さん 人間は誰でも幸せになりたいと
 そう思っている。僕だって幸せになる
 ことについて もっと貪欲になりたいと
 考えている。でも それじゃ幸せって
 何なんだろう?泉ちゃんは お父さんは
 幸せそうに暮らしていると言ったけど
 あのお父さんは本当に幸せなんだろうか
 伯父さんのことについて言えば
 タコ社長は"寅さんが一番幸せだよ"と
 よく言うけど 伯父さんはホントに
 幸せなんだろうか。仮に伯父さん自身は
 幸せだと思っていたとしても
 お母さんの目から見て不幸せだとすれば
 一体 どっちが正しいのだろうか。
 人間はホントに分かりにくい生き物
 なんだなと 近頃しみじみ僕は思うんだ」

ラストの商売 CDをレコードと呼ぶ寅さん。
「ああめんどくせえ!
 300円で持ってけ この泥棒野郎!」
このシーン渥美さんしんどかったと思うけど
楽しかっただろうなあ
友二朗

友二朗