【三宝】

※台湾映画祭。

舞台となるのは三宝寺だが、この”三宝”とは、映画でも簡単に触れられる「仏」「法（仏教の教え）」「僧」のことで、ただ「僧」には狭義のものや広義のものもあって、僧侶に対する権威付けのために都合よく解釈されてきたという経緯もあるように思う。
一説には、仏陀は、仏の道を志す（修行だけを指すのではない）個人としての単位での人々を意図していたのではないかと言われているが、僧侶の組織やお寺などの単位として権威付けされて、権力に入り込むようなことも多々あったはずだ。

この映画でも、そんなあれやこれやがあって、でも最後にトップに選ばれるのは、俗世から来た元罪人で、その後のリーダーシップも基本的な人間としての考え方が主体で、特段厳しい修行を積んだからというものではないところがミソなんだと思う。

まあ、アクションは当時のものなので、それはそれとして、結構面白いと思う。

[アイドルの内幕を描く新センター選抜コメディ]　80点

マクガフィンを文字通り奪い合う物語に推しメン選挙が絡んでくるというアイドル内幕コメディ。序盤は悪役が板に付いてきたシュー・フォンがちょっと痩せた内山信二みたいな相方と寺の中をひたすら歩き回り、顔面戦闘力がカマキリ(何言ってんの？)な悪代官とマクガフィンを奪い合う。正確にはマクガフィンを奪い合うための部屋の前で奪おうと思いながら相手と牽制しあう。中盤はマクガフィンを念頭に置きつつ、新たに寺院に加入した新入生が、ベテランの先輩たちを押し退けてシングルのセンターに大抜擢され、古参のオタクである地主や将軍が推しメンが選ばなかったことにぶちギレて新センターを殺そうとする。推しメンに指定された三人の古参フロント坊主の反応も多様で、前センターから引き続き支えるフロントメンバーもいれば、自分の軍団使って一悶着起こそうとするメンバーもいて面白い。フロント坊主と古参オタク含め全員がそれぞれの足を引っ張りながらアイドルの…あ、違う違う、僧侶の大変さを示してくれる。

後半になって思い出したかのようにシュー・フォンと内山信二とカマキリが再登場し、文字通りマクガフィンを持って逃げる。脚本の教科書の目次の次くらいに書いてありそうなコテコテの展開ながら、キン・フー映画としての追いかけっこなので普通に面白い。

個人的にはシー・チュンが悪役やってるのに悲しくなった。

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久々にキン・フーの映画見た気がするけど、そういえば彼ってこんな独特な奇妙さのある映画を撮る監督だった。

人物が山中を歩くショットとか寺の中を駆け巡る描写だけで美しいと思わせる点は流石だし、こういうのの連続の序盤を劇場で拝めただけで今回の上映には価値があった。

アクションシーンも相変わらず華麗だったけど、純粋な闘いというより宝の奪い合いって趣だったからチャップリンやキートンのサイレントアクション映画を見ているような心地がした。

でも途中の宝争奪戦とか寺の後継者争いの時点で変わった映画感があったのに、終わり方も結構やっつけで唐突なところがあったせいで、最初とかに結構美しい場面があったにもかかわらず結局何だったんだろうと狐につままれたような心地にさせられて困ってしまった。

キン・フーは黒澤明っぽい撮影や独特な作風が持ち味ではあるけど、これは彼の作品でもかなり変なものだったように思える。