簪(かんざし)の作品情報・感想・評価

「簪(かんざし)」に投稿された感想・評価

とても自然。
ゆるやか〜に流れる温泉旅館の日々。
独特の間がユーモラス。
清水宏作品は自然の中にいる子供達がかわいくてたまに精霊のように見える。

人物の自然で本当にそこで生活しているような雰囲気を醸し出す演出はたしかにキアロスタミに似てるけれど、台詞の間とか人間の人形感が独特。
日本が真珠湾攻撃かましてイケイケだった年に作られた、にしてはずいぶん"情緒的"な作品だった。ずいぶん若い田中絹代と笠智衆のご両人、ずいぶん老いてからも顔も声も風情も演技もちーっとも変わらないのは早くから老成してたってことなのか?今の俺らはいくら老いても子供っぽいままでしかいられずで、どちらがいいのかしらん。。
笠智衆が若いですね。笠智衆が若いというのは笠智衆でない気もきますが、ちゃんと笠智衆でした。『按摩と女』の設定とよく似ていますが、よりこちらの方がユーモラスでした。温泉宿での出会いと交流と別れを描きます。「情緒が足の裏に刺さっ」て回復するまで、ですね
簪が刺さり足を負傷した笠智衆のリハビリを担当する、素朴な子供たち(太郎と次郎…)。板っきれ渡しただけの曲がりくねった橋を松葉杖で歩かせたのには笑ってしまった。スパルタの川。

子供の夏休みの日記とか、大人たちの手紙が読める長さで映る地味さが好き。

『按摩と女』と色々被っていて且つ、一層ドラマ性の低いストーリーです。

これもまた全編フィトンチッドが溢れ出ているような映像でありました。
清水宏、ちょっとキアロスタミっぽいよな…と思いググったら、同じ事言ってる人おりました。
冒頭の芸者の行進を捉えたロケ撮影が、ネオレアリズモの先駆け的な自然主義を醸し出していてまず驚く。

その後もネオレアリズモ的自然主義だけでなく横移動撮影とか縦の構図が効いた画面とか、実に心地良い映像が続いて舌を巻く。

フィルムの欠損があるのは残念だが、実に構図も良く展開も小気味良く、やはり清水宏ってのは最近まで敬遠していたのが惜しいと思えるくらい優れた映像を撮る監督で感嘆至極だ。

それにしても悪い人じゃないとはいえ口煩い人間ってのは、昔から多かれ少なかれいたもんだなと甚だ呆れてしまう。(見ているとき何度「うぜえ!」と呟いたことか)
ひなびた温泉宿に長逗留する客たちの交流を、自然主義文学の私小説のように恬淡と描く。
簪を踏んで怪我したことを「情緒が足に刺さる」と表現する味わい深さ。それにしても外傷なのに笠智衆がリハビリで歩かされてたのはなんでだろう?(悪化しそう…)。
ラストの石段もよかったけれど、作品全体的に似たようなシチュエーションでより魅力的な『按摩と女』があるので、どうしても比べてしまう。
情緒が足の裏に刺さり、すっかり回復したように思えても、簪は残る。
清水宏は2作目。
楽しかったけど、『按摩と女』を先に観ちゃうとなぁ。

監督の眼差し、好きです。
koya

koyaの感想・評価

4.0
2003年は、清水宏監督生誕100年で、映画祭東京フィルメックスで特集上映がありました。
この年の観客賞をとったのがこの『簪(かんざし)』で、いつか観たいと思っていました。
図書館にDVDがあったのを見つけた時は、迷うことなく即、借りました。

実は、清水宏監督は小津安二郎監督と同じ年、ということでこの年は小津安二郎監督特集はすごかったらしいのです。
しかし、生涯で164本もの映画を撮りながら、現存しているフィルムは数少ないと言われている清水宏監督に注目した所がやはり、東京フィルメックス・・・上映はもちろん、京橋のフィルムセンターです。

 原作は井伏鱒二で、あるひと夏の温泉地のスケッチのような映画で、なんともいいムゥドなのです。
温泉宿には、ひと夏を過ごす人びとがおり、もう顔なじみです。
女性客の団体がうるさいと、口うるさい学者先生はぷりぷり。
しかも、簪が湯の中に落ちてしまい、湯治中の復員兵、納村(すご=く若い笠智衆)の足にささり怪我をさせてしまう。

 その簪を落とした人から連絡があって、怪我をさせたとを知り、お詫びに来ると電報が来ます。
怪我しても、簪が湯の中に落ちていたとは情緒があっていいですね・・・という好青年、納村は言いますが、
学者先生はさんざインテリぶってる割には、そのご婦人が「美人か不美人か?」で情緒的かは決まると妙に俗っぽい事を言い出すのです。

 そこにお詫びに来たのが恵美(田中絹代)もちろん美人であり、色めき立つ逗留客???
しかし、どうも恵美は東京でどういう暮らしをしているのかわからないし、なぜか、東京には戻れないらしい。
謎の女性ですな。

 しかし、湯治場はのんびり、としていてなんだかんだ言って、湯治の客たちがユーモラスに描かれて、至福感があります。
さて、夏が終わり湯治客は帰ってしまいますが・・・・・

 フィルムの状態は決していいとは言えないのですが、いいですなぁ~情緒とユーモアがあって、人間味にあふれているという
陳腐な言葉しか出てこないのが残念で、ギリギリとした雰囲気はなく、なんとものんびり、ゆったりした雰囲気を保ち続け、
カメラはなめらかに移動し、その絵の奥行きが素晴らしい。
1941年というともう、戦時色強かったはずですが、原作、井伏鱒二らしい、のほほんとしたムゥドが全体を包んでいます。
いや、よかったなぁ、清水宏監督、すばらしい。
kentaro

kentaroの感想・評価

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小津のアナザーサイドとして観ると、いやこれはひょっとすると小津を超えているんじゃないかという面白さ

ただの切り返しなのに、スリリング。

「情緒が足の裏に突き刺さる」
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