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秋菊の物語
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『秋菊の物語』に投稿された感想・評価

Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.5
「秋菊の物語」

〜最初に一言、女性主義、社会的に重要な意義を十六ミリ隠しカメラで、ドキュメンタリータッチに描いた張芸謀の傑作の一本。張芸謀映画の中でも彼の特色ある映像美が封印され、台湾ニューシネマの感触をにじませる、農村で起こる悲しき皮肉を描破した映画である。村から郡へ、県から市へ…この四つを股にかける女のロードムービーであり、男と女の意地をぶつけた物語で、張芸謀と鞏俐、新藤兼人と乙羽信子、伊丹十三と宮本信子、ジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズ…ベストカップルが織り成す究極の人間ドラマは、外国でも日本でもある。これは中国第五世代の傑作だ〜

冒頭、ここは小さな農村。臨月の女と義妹が人々でごった返す通りのを歩く。村長とのいざこざ、夫の股間の損傷、村から県へ、そして市へ。ぼったくり、唐辛子、巡査、役所、出産。今、1人の女の生き様が写される…本作は張芸謀がベネチア国際映画祭(主演女優賞も同時に)で最高賞の金獅子賞を見事に受賞した一九九二年の作品で、この度BDにて久々に鑑賞したが素晴らしい。原作は陳源斌(チェン・ユアンピン)の"萬家訴訟"で、主演はお馴染みのコン・リーである。アートフィルムにこだわりを持っていた監督が打って変わって、素朴でリアリズム的な映像作品にしたのが、まずこの作品のポイントである。当初は、喜劇映画にしようとしていたらしいが、周囲の意見により人間ドラマになったそうだ。鮮烈かつシニカル&ユーモラスに描いたヒューマンドラマで、マルチカメラ方式、ドキュメンタリータッチの隠し撮り撮影など、新鮮かつ挑戦的な技法も素晴らしい。

前作以降の二作品の圧倒的なアート・フィルム的な造型美への傾向から一転わ人々の心を真っ正面から、大きく、力強く、しかもユーモラスに描いてみせた人間ドラマとして、世界中で、とりわけ女性たちの熱い感動読んだのは言うまでもないと思うが、しかしながらこの作品にも前作同様に唐辛子だったりする赤い美しい演出がなされていて、少なくとも張芸謀映画だなと言うのは一目瞭然である。本作は監督の故郷である"せんせい省"で撮影されており、その農村を中国そのものに見立てた、監督の初のリアルタイムの中国映画である。本作は意外と知られていないと思うのだが(今その言葉を言うと小泉進次郎のネタだと思われてしまうが全くそれとは関係ない)、仕上げは東京で行われ、ダビングで日活、録音センター、現像でイマジカが協力している。

さて、物語は人々でごった返す通りの中を、臨月近い秋菊と義妹の妹子が荷車をひいてやってくる。荷台には秋菊の夫、ワン・チンライが乗っている。彼女たちは、村長と言い争って股間を蹴られた夫を、村から遠く町の医者に診せに来た。養生していれば治る、と言われて雪の山道を村に戻った秋菊は、翌日、村長を訪ね診断書を見せた。ところが村長はあいつを蹴ってどこが悪い?と、反省のかけらも見せない。納得できない秋菊は、群の役場に事情を話しに行くことにした。秋菊は、妹子と一緒に出発。リー巡査にことの成り行きを説明する。唐辛子を作っている彼女たちは、作物を保存する納屋を立てようと思ったが、村長がこれを許可せず、夫が雌鶏と言う言葉を口走ったのが、娘ばかりで息子のいない村長を刺激し、急所を蹴られた原因であった。

リー巡査は、双方反省の上、村長が夫に200元を弁償する和解案を決めた。しかし村長は、お金を受け取りに来た秋菊の足元に札をばらまき、一枚拾う事に頭を下げろと自分の非を認める様子はさらさらない。秋菊は夫と相談し、今度は県の役所へ行くことにした。秋菊と妹子は荷車に唐辛子の束を積んで県へ。旅費を作るため、まず群の市場へ行ってそれを売り、一人二元五〇の乗り合いトラックで県の役所へ。二十元払って届出書を代書屋に書いてもらったが、結びの文句は、殺人未遂で村長を重罪に処すべきです。しかし、審理の結果は郡の和解案と全く同じものだった。これ以上ことが大きくなるのを恐れたリー巡査は、村長を捕まえ秋菊たちに一言謝るように説明するが、相変わらず村長にその気は無い。自分で菓子折りを買い、これが村長の誠意だと、秋菊と夫に県の審理の結果を受け入れるよう説得するが、秋菊は菓子折を買ったのは村長ではなくリーであることを知り、父親に菓子折を返しに行かせて、今度は市の役所へと出かけていった。

唐辛子を積んで郡へ、郡から県へ、さらにバスに乗って市へ、秋菊たちの道のりは旅ごとに伸びていく。市まで来ると日帰りは無理だ。バスを降りた秋菊と妹子は、声をかけてきた輪タクにボラれながらも、親切な老人が経営する安宿にたどり着いた。老主人の紹介で、秋菊たちは市の公安局の局長に面会し、大船に乗った気分。都会見物もして、家族に土産も買い込み、上機嫌で村へと引き上げた秋菊だったが、夫のチンライは、村長にだって村長の事情がある。結果はどうあれ、これで終りにしようと秋菊を諭す。しかし秋菊は、人に嫌われようと納得できないものは納得できない。数日後、チンライが村長に呼び出された。市の決裁書を、なぜか村長が持っている。市の決裁は、郡の和解案と同じもので、ただ村長はチンライに無理矢理二五〇元を渡し、秋菊のいないところでカタをつけようと焦る。

しかし秋菊は、決裁書が自分たちにではなく村長に届いた事をあやしむ。夫が持ってきた金を村長に返しに行き、村長には頑固者とののしられ、夫にうんざりされ、秋菊は涙を流れしながら、再び唐辛子を積んで出発する。秋菊は市の公安局長を訪ね、今までの経緯を考えると、役人同士が裏で手を結んでるみたいだ、と素直に不満を訴える。局長は裁定に不服があれば、裁判にできると教え、弁護士を紹介してくてた。裁判の当日、秋菊が驚いたことには、被告人席に村長でなく、親切にしてくれた局長がいる。市の公安局の裁決に不服があると訴えてたから、まず局長が呼ばれたのだ、単なる法律上の手続きだと説明され、やっと出廷する秋菊。

安宿の老主人も秋菊の応援に裁判所に駆けつけた。事情通の主人によれば、公布されて間もない行政訴訟法に基づく今回の裁判は、民間人に役人を訴える道を開くものであり、秋菊が勝つ事によって新法の普及を図ることができる。だから、秋菊が絶対有利だという。しかし、結果は秋菊の負け。秋菊は、局長にすすめられるまま中級裁判所への上訴に同意する。数日後、村を訪れ中級裁判所の調査員は、助骨骨折なら傷害罪が成立すると、チンライに市に来てレントゲンを撮るように勧めた。大晦日の夜、秋菊の陣痛が始まった。出血がひどく、産婆の手に生えない状態だ。病院へ運ぼうにも男手がない。村の男たちは隣村の祭りに出かけてしまっている。チンライは産婆とともに村長の家に駆け込んだ。裁判所に助けてもらえ。最初は嫌みを言っていた尊重だが、隣村まで行って男たちを無理矢理呼び戻し、夜通しかけて秋菊を県の病院まで担いで運んだ。

秋菊は、無事に男の子を出産した。村長は命の恩人である。村のお産の手助けは当たり前、裁判とは無関係、と太っ腹な村長。秋菊も彼に対して感謝の気持ちでいっぱいだ。誕生ーヵ月のお祝いにもぜひ村長に来てもらいたい。お祝いの前日、秋菊は子供を連れて村長を訪ね、明日のお祝いに必ず来てくれと頼み込む。お祝いの日、村人たちが集まり、赤ん坊に大きなお祝いの饅頭の輪をくぐらせている。そばを茹でるのは村長が来てから、と秋菊。村長はおめかししていたからもうじき来るだろう、と村長の妻が言っている。そこへ、リー巡査がやってきた。レントゲンの結果が決め手となって、村長の軽度の傷害罪が成立した。公安局は村長を拘留したいと言うのである。私は納得がしたかっただけ、逮捕なんてと、秋菊はサイレンの音を追って山道にかけていくが、パトカーが走り去った後を見やってぼう然とするほかない…とがっつり説明するとこんな感じで、秋菊の夫が股間をけられて、秋菊は蹴った相手の村長に、あんなとこけるのはひどいのではないかと言うが、村長を詫びず秋菊は納得できない。

郡の巡査を調停に入り、村長に金を払わせてカタをつけようとするが、彼女にとってお金の問題ではない。彼女は身重の体で、遠く県の公安へ、さらに遠く市の公安局まで、納得を求めて出発するが、結果はいつも同じ。公安局に教わったまま、弁護士に頼んで、ついに彼女自身も思いもしなかった裁判に。行政訴訟法が公布されて民間人が役人と裁判で争うようになったばかりとは言え、裁判で納得できる問題かどうか。そんな大晦日(旧暦)の夜、彼女に陣痛が訪れ、そこから仲違いしていた二人が思わぬ方向へと行くが、既に事態は動いてしまうと言う話である。やはりこの作品は前年に公布されたばかりの行政訴訟法をアクチュアルに物語の骨格に織り込んだ、新鮮なスタイルが評価できるだろう。そもそも原作者がいると言うことで、監督が即座に映画化を決め、前前作の「菊豆」の脚本を担当した仲間に脚本第一項を書き上げさせている。

どうやらヒロインの秋菊を妊娠と言う設定にしたのは、コン・リー本人だったらしい。若いスタッフからも次々にアイディアが出され、監督は、原作で南の農村であった舞台を北の土地に移すことで、できるだけ本物の農民をそのまま登場させること、同時録音で撮影すること、出演者は全員そこの地方の方言で話すこと、そのためプロの俳優は少数に絞り、撮影前から農村に入って実際に農民として生活すること、農民たちが意識しすぎないよう撮影機材を前もって晒しておいて慣れてもらうこと、街頭ロケーションでは隠しカメラ、隠しマイクで撮影すること、撮影は全編十六ミリカメラで行い三十五ミリへのプローアップ技術を完璧にすること、といった方針を決め、九十一年大晦日にクランクイン、九十二年三月に全編の撮影を完了したとのことだ。ちなみに本編のカメラマンは日本に留学して日大芸術学部を卒業し、現在中国および日本で活躍するカメラマンだそうだ。隠しカメラを感じさせない、大きなフレミングから自然の呼吸が漂う映像はこの映画の魅力のーつだろう。

いゃ〜、冒頭の、中国の伝統楽器の音楽と、歌が流れる人混みのシーンからこの映画がどれほど素晴らしい作品になるかを予感させる。なんとも素晴らしいファースト・ショットなのだろうか。その固定ショットがおよそニ二分間続き、主人公であるコン・リー扮する秋菊が荷車を引いてやってくるのだ。そして雪道を再び帰って村へ戻るのだが、その壮大な雪化粧した冬景色がまた絶景である。この映画見るとザ・中国人って感じがする。絶対に自分の非を認めずに金は払っても絶対に謝ることをしない村長をみると、今の中国共産党とダブってしまう。それとあの無理矢理四十五元は高いからと言ったら、今度は三十元で人助けだといって、もうすでに勝手にその男(運転手)が荷物を積荷に持って荷台に置いて走らせしまうシークエンスも中国人らしいなと思う。

それで自転車置き場にいたおばさんが、あなたは騙されて高いお金を払わされたのよと言って、格好そのものが田舎者だから、洋服を買って着替えたほうがいいわとアドバイスするんだけど、その後にデパートで洋服を買って支度するんだが、着ていた洋服の上に着るから、太って見えて、全く以て都会の人に馴染んでないファッションのままなのが笑える。義妹が騙した運転手を見つけて、彼のことを追いかける時に、電柱に購入した絵画をぶつけて割れてしまい、人混みに飲まれてさらわれたらどうするのと秋菊に叱られる場面で、秋菊が涙を出すのだが、その場面はすごいドキュメンタリーを見ているかのようで、リーの芝居が圧巻である。一瞬だが中国の京劇が映り込むのだが、圧倒される。それにしても村から県まで、秋菊を担いで男たちが数人やってくるのが考えられない。

どんなに過酷だっただろうか。この作品断るごとに、食事してるシーン(うどんもしくはラーメンをすすっている)があるのだが、台所の食卓の場面なども多く挟まれていた。コン・リーのクローズアップの静止画で終わるのはなんとも余韻が残る。そしてまたあの中国伝統の音楽、たまらない。それにしても、ヒロインはお馴染みのコン・リーだが、農婦で妊婦、いつもゆったりと動き、独特のクセの返事方がなんとも田舎臭くて美しい彼女がこかまで平凡な農民を演じられるのも凄いの一言である。よく中国で女はしつこい存在とされているみたいだが、この映画を見ると主人公の秋菊はどこまでもしつこくーつのことにケリをつけようとあちこちに移動する(劇中で、その村長がお金を渡してお金を投げ返される場面で、しつこい女だとセリフがある)。確かにそういうことが言われる由来があるのかもしれないが、まっとうな人の権利、ごめんなさいと謝る精神をきっちりと身に付け、芯の強い女性像だなと思う反面、ここまで執着されると怖い気もするが、謝れば済むことなのに、謝らない村長もダメである…。

この作品に出てくるヒロインはとにかく頑固者で、不条理な事は許さず、女の意地に火がついて、次第にそれは手のつけられない所まで盛り上がっていってしまう様が、なんとも奇跡であるそもそも秋菊の夫を蹴飛ばした村長は雌鶏と言う言葉に反応して過敏になっていたようだが、彼が最後に、秋菊が産んだ赤ちゃんを抱いて、きちんと男の子を産むんだなぁと言うセリフがあるが、やはり中国では女性よりも働き手の多い男性を好む傾向があるんだなとつくづく思わされた。しかもその夫は基本的に争い事を拒む体質で、温厚そうな感じだった。だが奥さんの秋菊は黒白はっきりさせるべく、俄然気合が入っていくのだ。この映画を見る、美しく見事な女性の肖像であり、凛として根強く、豊かな寓話を豊かに肉体化する、気高く、まっすぐな女が演じられていることがわかる。今思えばこの作品に悪人が出てこないのもポイントの一つかも。そういえば今思えば、初期作の「紅いコーリャン」では神輿に鞏 俐が担がれていたが、「秋菊の物語」では、男をリヤカーで運んでいた逆転方式も面白い。

ところでこの作品のエンドクレジットを見ると撮影者に三人の名前が上がっていると言う事は、これまでの張芸謀作品とは全く異なった撮影方法が採用されている分、カメラも三台は少なくとも用意されて撮影したんだなと推測できる。ちなみに中国では60年代前半から段階的に人口制御政策を実施していて、ー組の夫婦に子供ー人と言ういわゆる一人っ子政策は七十九年頃から中国全てで厳しく指導されているが、農村部では例外的に、一人目が女の子の場合など、計画出産委員会の許可を得た上で、三、四年の間を経て第二子を作ることができる。本作の冒頭から流れる民謡調の歌もこの映画の大きな魅力の一つだが、これは監督の出身の地元の楽芸団に依頼して演奏したもので、地方の方言の歌詞にほとんど意味はなく、むしろ、演奏開始の合図の掛け声も入れた勢いとメロディーの楽しさが主眼だと言う。この作品はベネチア国際映画祭で上映され、ダブル受賞の快挙の後、中国で公開されて大ヒットしたそうで、ヨーロッパでも、フランスで前作ま「紅夢」の奇跡的なヒット(パリで20万人、フランス全国で50万人)のあとで、奇跡は二度起こるまいとの評判を博して、パリで既に17万人の喝采を浴びて上映されていたとのこと。ちなみに公開時のフランスのタイトルは秋菊。ー人の中国女だったそうだ。にしても、


どうやらこの作品は、最初張芸謀監督が出したストーリーはスタッフが納得しなかったらしく、改めて、ドキュメンタリー風に、素朴で、できるだけ現実の生活に近い映画にして、ドラマ的な要素を全て捨ててしまうと言う作劇法で、ー時間にわたって説明すると皆が乗り気になったそうだ。監督自体は軽い喜劇を撮りたかったみたいだ。結果としては素晴らしいものになったと思う。本作は、十六ミリで撮影し、さらにドキュメンタリー色を強調するため、隠し撮りのシーンもあるし、それがリアルになっていて、今までの彼の作品と見比べたらかなり違っていて楽しめる。そもそも第五世代の監督はこのような作風を撮ったりはしない。どちらかと言うと第四世代の仕事である。そしてこのようにイデオロギーに全てを従属させると言うやり方は第五世代の監督のーつの欠点だと言えるので、このようなタイプの作品も非常に良かったと思う。中国社会に存在する強烈な不条理が描かれているのは、原作を見た事はないが、きっと原作はもっとすごそうな内容だと思う。

中国映画は当時政治色の濃いものばかりの作風が目立っていたが、芸術を政治の中から救い出したいと言う思いが彼にはあったのかもしれない。ここでこの作品の見所というか面白いなと思ったのが、中国による家庭的な関係である。何が言いたいかと言うと、主人公の秋菊は、夫の股間を蹴飛ばした村の村長に対して裁判沙汰まで起こすのに、村の村長の奥さんは、彼女に優しく接してあげるのだ。これが、中国の農村に今なお存在している家庭的な関係なのかもしれない。前にも紹介したワン・ビン監督の「三姉妹~雲南の子」も同じ農村地帯の数世帯の家族が集結していた。ロケ地の村は、わずか二十六世帯しかなかったらしく、彼らはみんな一つの家族のように暮らしているんだと思う。こういったのが中国文化の家庭的な関係で、農村の人たちが素朴な生き方を強調し、なるべく敵対する人間関係を描かないのが監督の意図したポイントだったと思う。

監督が言うには、中国人は、いつも他人が自分をどう見ているかと言うことを基準にして自分を判断するそうだ。そしてまた、いいか悪いか、すべきかすべきでないかを判断するとの事。そして原作では秋菊は比較的口が達者な人物に描かれているようだが、映画の中のコン・リーはどちらかと言うと口下手な演じ方をしている。それは彼女の言い出したことらしく、ゆっくりと言うことが大切で、どんな時もゆっくり、言葉少なめに話すのが良かったそうだ。実際私も映画を見てそっちの方がいいなと思った。なんだろう、中国の女性と言うものは表面的には穏やかで、内面をとても芯が強いんだろうなっていうのが彼女から伝わってくる。でも北京にいる女性はどちらかと言うとキツイイメージがある。中国北部の女性はあんな感じなんだろうかね…。

当時の中国にとっては、映画というのはプロパガンダであり、大衆教育の手段とされてきて、監督に期待されたのは、与えられたテーマをわかりやすく絵解きする職人芸に過ぎなく、そこへ監督の強烈なメッセージと、それを打ち出す独自の映像表現を兼ね備えた映画が登場したのがまさに九〇年代だったんだと思う。長々とレビューしたが、最後に張芸謀は侯孝賢やヤンの作品を観て、ショックを受けたそうだ。この懐かしい感じで、一つ一つ心の中に沁み込んでくる様な作品を作るべく、彼の作品にヒントを得たとインタビューで言っていた。侯孝賢は彼にとって兄貴分らしい。だから秋菊がどことなく台湾映画のノスタルジーさや素朴な振舞いが描かれてるなと改めて納得した。やはり台湾ニュー・ウェーブは素晴らしいって事よ。私も大好きである。
Omizu

Omizuの感想・評価

3.8
【第49回ヴェネツィア映画祭 金獅子賞】
『初恋のきた道』などの巨匠チャン・イーモウ監督作品。主演はおなじみコン・リー。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され、最高賞と女優賞を受賞した。

チャン・イーモウといえば『紅いコーリャン』にみられるような激しいイメージだった。しかし本作はリアリズムに徹した静かな作品。『紅いコーリャン』とのギャップに驚いた。

夫が村長に蹴られたことを訴え出た妻が予期せぬ方向に導かれていく様をリアリティのある描写で撮っている。期待していたものではなかったが、これはこれで素晴らしい作品であった。

イーモウの初期にみられる赤く染まった画面は本作も同じ。広大な自然と美しい撮影がいい。ロケーションの地点でこれは勝ちだった。

ささいな出来事(本人たちにはそうではないが)がどんどん大事になっていくのは風刺的でもある。誤ってほしいだけなのに法律、弁護士などによって事態を広げられていってしまう。イーモウは最初コメディにしたかったようだが、それも分かる。

素晴らしいとは思うが、コン・リーが女優賞をとったのは謎。そこまでの演技だとは感じなかった。この回は女性主演が少なかったのかな?
tulpen

tulpenの感想・評価

4.5
チャン・イーモウの作品の中では1番好き。
紅が本当に美しい。
田舎臭いコン・リーがリアカー引いてひたすら歩き続ける ある意味ロードムービー。
そして、ただただ歩くその理由ときたら…w


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