北京の自転車の作品情報・感想・評価

北京の自転車2000年製作の映画)

十七歳的単車

製作国:

上映時間:113分

ジャンル:

3.6

「北京の自転車」に投稿された感想・評価

koya

koyaの感想・評価

5.0
2001年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を取っていますから、いわゆる娯楽映画ではなく、映画祭映画。
だから社会問題が浮き彫りになっています。大変、興味深い映画でした。

原題は17歳の自転車。
2人の17歳の少年の一台の自転車をめぐる物語。
「自転車なんて買い替えればいい」・・・そうだったらこの映画は成り立たないのね。自転車すら買えない、事情の違う2人の社会的貧困が問題。

グイ(小貴)は、山西省の農村から北京に出稼ぎにきた17歳の少年。
自転車宅配便の会社に雇われて、最初、会社からマウンテンバイクを支給される。積立式で、給料から自転車代金を引かれて600元になれば、自分のものになる。グイは一生懸命働いて、あと一日で自分のものになる、というその日、自転車を盗まれる。

そのせいで宅配ができず、トラブルになってしまったため、経営者からクビを言い渡されるのですが、自転車には印がつけてあるから、見つけ出す、だからクビにしないでくれと頼み込むグイ。
北京という自転車台数が半端でなく多い街で、もし、見つけたらクビにはしない、と言われ、必死に自転車を探す。

所が、意外な事にグイの自転車は見つかるのです。
小堅(シャオジェン)という17歳の高校生の男の子が乗っていました。
最初はジェンが盗んだのか、と思いますが、実は、ジェンは進学校に通うものの家は貧しくて、自転車が買えない。
親は約束はするもののいつも延期。周りの同級生たちは金持でいい自転車を乗り回している。
いつも悪友たちとつるんでいるけれど、実は1人だけ貧しい家庭なのを恥じている。
ジェンは、家のへそくりを盗んで中古で、グイの自転車を買ったのでした。

グイの自転車は誰かに盗まれ、転売され、それを買ったのがジェンだった、という訳でこれは、もう、どちらの物とは言えない。

自転車の取り合いが続きますが、交代で一台の自転車を共有する、ということになり、2人の少年の間に友情が芽生える。

しかし、ジェンが金持たちへの嫉妬に目がくらみ、事件にまきこまれてしまう。それにグイも巻き込まれ・・・

最初に経営者が、グイたちに「君たちは新「駱駝祥子」なのだ」と話すのが伏線になっています。
『駱駝祥子』は、貧しいけれど、真面目、誠実な車引きが一生懸命働いても報われない、という有名な話。

グイも真面目にこつこつと働く無口な少年だけれども、自転車がなければ仕事にならない。自転車を買うお金もない。だから必死になるのです。

ジェンも必死に勉強していい学校に行っても家は貧しく、周りは裕福な家の子供ばかり。自転車盗まれたら、買えばいいじゃない・・・と言われても簡単には自転車を買ってもらえない。
そんな劣等感と戦いながら、学校生活を送っている。

だから、グイもジェンもどちらも悪くはないんです。
でも、社会は厳しい。ちょっとだけ、ジョウ・シュンが謎の美女で出てきますが、彼女の実の姿もグイとジェンにだぶるのです。

たかが、一台の自転車なのに、緊張感がとてもあって、音楽も小さく打楽器だけで、心臓の鼓動のようで良かったです、この映画。
emily

emilyの感想・評価

3.9
 中国・北京、経済成長が加速していく中、農村と都市部の格差が浮き彫りになっていく社会問題を、17歳の少年二人が自転車を巡って繰り広げるドラマを瑞々しく、時にリアルに、荒々しく少年たちの日常を切り取る・・

 高層ビルが立ち並ぶ中、歯ブラシをシェアして、入浴料も払えない生活を余儀なくされている少年がいる。本作は対照的な存在が常に交差し、その隙間を埋める存在として自転車が上手く作用してくる。自転車1台を巡って浮き彫りになる格差社会と、それがもたらす淡い恋、友情とゆっくり物語は展開を見せシビアな現状の中で一筋の光を見せてくれる。

 ざらついた色彩の中にアンバランスな町の風景、息づく人たちの生活が描写されており、誰かの喜びの一方で悲しんで居る人がおり、見た目には関係なく誰しも苦しみや悩みを抱えており、生きるために必死でもがいている。

感情移入の対象がコロコロと移り変わり、”誰か”に責任を押し付ける事は出来ない事に気が付く。誰にも責任はない。責任をなすりつけるより、赦し分け合い生きる方が幾分も楽であることを一台の自転車を巡ってしっかりと見せてくれる。大切な物を守るには時に犠牲も伴う。しかしそれ以上に大きな物を得ることもある。
天体

天体の感想・評価

4.0
中国映画独特の洗いざらしの布のような空気感が観たくて借りた。遠巻きな定点カメラ長回し&ざくざくしたカット、基本環境音のみに所々入る印象的なBGMなどが中国映画の特徴だと思うがこの映画もその例に違わず。ただちょっとワンシーンが長すぎて冗長な印象も。そういうところも味だと楽しめればよかったが急ぎだったので途中からは1.5倍速で。

自転車を盗まれたもの、盗まれた自転車を買ったもの、双方に言い分はあるだろうしたしかに難しい問題だが、日本人からしてみればそもそもなぜ盗品屋を詰めないのか、なぜ買った金を小貴に求めるのか(あの出しゃばりメガネデブ野郎見ててイライラした)、「チャンさん」を探しにきたら風呂屋に案内されたくだりも含め(あれは7:3で受付の女が悪い、普通に考えて速達業者を呼ぶのは客じゃなくて店主だろ、つーか集荷を頼んだから業者くるよって伝達事項すらされてねーーのかよっていう…中国だからさもありなん)、いろいろな社会の仕組みが未整備ゆえに不条理がまかり通る中国社会のリアルがよくよく描かれていた。理屈が通用しない中国ではとにかく喧嘩が強くて口のうまいものが勝つ。ジェンのような余所から来たもの=「しきたり」「慣例」を知らないもの(これは日本人などの観光客も同じで、中国へいくと何かしらの理不尽な目にあってもしょうがないと覚悟しないといけない)、バカ正直で口下手な人間ばかりが損をする(それにしても彼はあまりにも何も言わなすぎだとは思う…好きなキャラすぎて肩入れしまくる一方、もっといいかえせよとイライラもしてしまった。かわいそうなのに)
何百万人何千万人と人が暮らす北京で、小貴を助けてくれる人も守ってくれる人もいない、圧倒的な孤立感が映画全体を通して流れていた。東京に上京してきた孤独〜なんてこれに比べりゃかわいいもんだ。(雑貨屋の先輩が唯一の拠り所感あるけど、肝心の貸してくれた自転車は途中で無用となる…笑)

一方、交互に自転車を乗りあっていた二人が歩み寄り、自己紹介したところから流れが変わったと思った。そこからエンディングに至るまでの展開は秀逸。執拗に自転車を破壊していたUFOメガネをついに小貴がコンクリ片で殴打したところは、2時間あまりストレスを溜めさせられてきた分よくやった!!と胸がスッとした。そして破壊された自転車を担いで都会の喧騒に戻っていく小貴の姿は物悲しくもあり、一周回って北京を生き延びていくためのたくましさの萌芽を見た気がし、救いのない世界に一片の希望を感じさせるラストだった。

どうでもいいけど日本版のジャケットやキービジュアル、小堅と彼女(これがまた見た目によらず性格の悪い女で…)とのツーショットだけど、そこメインじゃなくね?ほろ苦青春映画みたいなイメージ押し出してるけどそういう映画じゃなくね?
(現時点で洋画実写第4位。いつかもう一度観る機会があればレビュー書きます。)
love1109

love1109の感想・評価

3.7
銀座で高級品を買いあさる富裕層の背後には1日1ドル以下で暮らす貧困層が1億人以上もいる中国の現実がある。急速な発展によって広がる貧富の差は、必然、人々の暮らしに小さなズレを生み、それはやがて大きな膿となって噴出する。私たちの考えている「発展」が、ほんとうの意味での発展かどうか、疑ってみる必要がありそうだ。ちなみに中国政府はこの作品を上映禁止に。どんな世界も、権力にすがっている人たちが最も怖れているのは、自分たちにとって都合の悪い真実だ。
SnL

SnLの感想・評価

3.6
ふとした懐かしさを覚えた。日本の高度経済成長さえ経験してないどころか、生まれ年もかすりもしてないのに。
十七才的単车、タイトル通り自転車に焦点をあてた映画。1台の自転車を通して当時の北京がみえる。北京ほど自転車の似合う都市は無かったはずだが、時代は変わった。これからも変わり続ける。そういう点だけでもこの映画は貴重だと思う。
たくみ

たくみの感想・評価

2.9
途中までは良かったけど、最後の終わり方が何を伝えたかったのか…
歌子

歌子の感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ワン・シャオシュアイ監督の作品は、
傲慢な社会の中で健気にも生きて行く弱者を上手に描く。
そのなかで、17歳の田舎から出てきたグイの
前半までの「知らないと言うだけで、搾取される」という存在と、自転車を挟んで繋がる、高校生の少年の、
同じ年齢なのに生き方が大きく異なっているコントラストの残酷さが痛々しかったです。
自転車の交換という発想は、私の大好きな「運動靴と赤い金魚」の発想に似ていますが、こっちは切なさが残りますね。
自転車を必要とする切実さが、最終的には自転車を引き寄せて行くって感じでしょうか。
個人的には煉瓦で、自転車を壊してたメガネのデブの男の子を殴った時は、スカッとしました。その後の不幸については、もはや考えたくないです。
なんと鮮やかな映画なのだろうか。
タイトルの通りネオリアリズモにオマージュされた形式が問題なのではない。その中に生きる人々がなぜああも鮮やかなのか。あの雨の降る道路に制服に自転車の二人の高校生が他愛のない、でも重要な会話をしている様子に本当にシンパシーを感じてしまう。
自分自身、高校生の映画監督として、制服を着た高校生の映画も撮ったし、制服を脱ぎ捨て街に出ている青年の映画も沢山撮った。それでも、それだからこそ、海の向こうで制服を着た高校生が格差社会という重い社会の中でもあれほど真剣に生きている、その風景に心を打たれずにはいられなかった。
もしも自分の夢が叶い、再び中国に行けることになったらあれほど鮮やかなシーンを、映画を撮りたい。できるだけ早く。そう決意した。