かつては心の底から世界史を愛し教員免許まで取得した私歓喜、ギトリ先生の世界史の授業は世界7カ国と5世紀程を股にかけ数奇な運命を辿っていく真珠の行方と共に猛烈オシャレに展開していく。上映終了後某ハマグチェ氏がいらしていた事に気付いたが、確かにこれも異言語コミニュケーションの映画でさもありなん、ギトリのストーリーテリングの妙に惹かれるところがあるんだろうか。ナンパしてくるおっさんに副詞のみを用い巧みに返答する技術、あれ実生活でも活用出来るんじゃないすか…？絶対そうなるだろうってオチも鮮やかに話が展開しきった後であればむしろ清々しい。

ちょっとこれは凄い！傑作！
英国王冠の真珠4個＋失われた3個を巡っての大河ﾄﾞﾗﾏにも関わらず、すげー軽快。ギトリのｽﾄｰﾘｰﾃﾘﾝｸﾞの天才性が、『とらんぷ譚』以上に発揮された映画。世界史の授業はギトリに習いたかった！

真珠があらゆる人の手を渡って継承されていく描写も洒落てて面白いし、海に落としてまた貝の中に納まるﾗｽﾄも皮肉が効いてて素晴らしい。

失われた3つの真珠を探しに来た、外国人二人と鉢合わせになる異言語ギャグも凝っていて笑える。比較するとアレだけどホンサンスが『三人のアンヌ』でやったソレとは比較にならん面白さ。

サッシャ・ギトリの好きなとこは、本人が役者として思い切り出演しているが故に不要な神話性を感じずに観れること。まぁ神話性を感じるのはこちらの問題とも言えるが、それにしても一人四役を演じて歴史の軽薄さを証明していく本作の軽やかさを愛さない人間など果たしているのだろうか。セリフはボール遊びのパスであり、それはカット割りの遊びでもある。『祖国の人々』から20年映画を撮らずトーキーになってから連発したのもさもありなん。今でも一切古びない多言語会話劇は、その音声性の強さにも関わらずアクションと撮影の強度を保っているように感じる。なんでそう感じるかはわからん。マリア像が動いてが真珠を落とすところとかほんとよいのよな。