ワイダ監督がSFコメディを撮っていたことに驚いた。こんなに面白いならレム×ワイダのコンビでもっと映画を作って欲しかったな。めざましく進歩した医療技術に翻弄される人びと。話はアイロニカル、演出はキレッキレで痛快！

原作はスタニスワフ・レムの短編『あなたは本当に存在しているのか？』。脚本も彼自身による。レムは本作を絶賛したらしいが、彼のドキュメンタリーを撮ったランコシュ監督の話によると、シナリオが自作であることも気に入った理由のひとつだろうとのこと(笑)

ふと名前を見かけて思い出したけど、ワイダの異色作と聞いて面白そうだと見てみたら、実際スコリモフスキやチェコ・ヌーヴェルヴァーグの監督らが撮ったような作品になってて超現実性に驚いたのを憶えている。

レースで体を損傷するたびに臓器やら体のパーツを移植されていくうちにそれが原因でトラブルに巻き込まれ資金難になり稼ごうとレースに出てまた事故る主人公…。ワイダがこんなSF喜劇を撮っていることにも驚かされたが、風刺の効いた脚本の素晴らしさや漫画チックで(事故シーンは本当に漫画で処理される)テンポのよい演出によりシニカルでコミカルな完成度の高い作品に。あと主人公のドライバーを演じる男の飄々とした雰囲気と顔立ちが藤子・F・不二雄の短編作品に登場しそうなキャラで味わい深い、演技も上手くて後半のキャラ変演技に爆笑。

主人公が入院する病院の看護婦さんはみな若くて美人揃い、でもここまで綺麗な人ばかりだと逆に身の回りの世話をしてもらうときに恥ずかしいような、少なくとも小便を尿瓶にとか絶対頼めない。

毒のあるラストも最高。