兎に角、手塚治虫の壮大な世界観に圧倒される。登場人物は賢い女性たちと、愚かな男たちだ。女性たちは現実を受け入れ、男たちは他人と自分を比較し、現実を否定して欲しいものを手に入れようと、互いに争う。戦争>>続きを読む
永瀬廉が演じる主人公は、清義と書いてキヨヨシという名前だが、北村匠海のカオルはセイギと呼ぶ。セイギは正義に通じる。カオル一流の皮肉だろう。
はじめに無辜という言葉の概念について説明があるように、>>続きを読む
フレデリック・フォーサイスの小説「ジャッカルの日」を彷彿させる作品である。同小説は映画化されていて、ストーリー展開は緩やかだが、暗殺者ジャッカルがシャルル・ド・ゴール大統領の殺害計画を綿密に立案して>>続きを読む
先日鑑賞した「道で拾った女」と同じ、いまおかしんじ脚本である。日常的な台詞が目立つ脚本だが、シチュエーションによって、日常的な台詞を非日常的なものに変えようとする。
本作品では「結婚しよう」である>>続きを読む
さて困った。こういう互いに繋がりのないオムニバスは、行き当たりばったりのパッチワークみたいで、離れて眺めてみても、何も見えてこない。木を見ても森が見えない、森を見ても木が見えないという世界である。何>>続きを読む
とても楽しいコメディだ。登場人物は単純化され、それぞれの役割をきちんと果たす。いかにもそれらしい台詞を饒舌に話す内に、それぞれの登場人物の人となりが浮かび上がってくるという手法は、コメディらしい、王>>続きを読む
スペインの男は馬を素手で倒して焼印を押して放つというテロップと共に、三人の男が馬を捕まえようとする冒頭のシーン。何の意味があるのかと訝っていた。それに原題の「As bestas」は野獣の意味合いだと>>続きを読む
大江健三郎の「遅れてきた青年」を思い出した。戦争に行って華々しく死にたかったのに、生まれてきたのが遅くて間に合わなかったと嘆く男の話である。もちろん大江健三郎は反戦の作家なので、英霊などという言葉を>>続きを読む
オルガ・キュリレンコとブルース・ウィリスが共演するというので、ややミーハーな感じで鑑賞した。キュリレンコはカッコよかったが、それだけだった。人物造形やストーリーが薄くて誰にも感情移入できない上に、ヒ>>続きを読む
正直に言って、あまり面白くなかった。登場人物の誰にも感情移入できなかったところが一番の原因だと思う。主役の海江田艦長は鉄面皮で何を考えてるのか、よくわからない。そういう人物描写がしたかったのは分かる>>続きを読む
ほとんど死語かもしれないが、負けじ魂という言葉がある。本作品の伝説の英雄について語る女たちはSISUという言葉を使う。SISUは日本語の負けじ魂に似ている気がする。しかし決定的な違いは、フィンランド>>続きを読む
終映後に助演の佐々木心音がロビーで11月公開の主演作「クオリア」のチラシを配っていた。ちゃんと化粧すると、それなりに見えるのだなと、少し感心した。
人生は辛い。たくさん失敗した。大体は自分のせい>>続きを読む
石井裕也監督の前作「月」は、辺見庸原作の実話ベースの作品で、テーマも雰囲気もかなり重かった。10月13日の公開だったから、本作品の公開の2週間前である。おそらく2作品を並行して編集作業をしていたので>>続きを読む
面白かった。原題の通り、催眠術を使ったSFアクションである。かつて超能力ブームの折には、サイコキネシスやテレキネシスといった言葉が社会性を持った。ユリ・ゲラーなどという人もメディアに登場したものだ。>>続きを読む
女たちが森の生き物の代表ということはすぐにわかるが、森の生き物は他者に何も強制しないし、あんなに暴力を振るわないと思う。
本作品が成り立つのは、主人公萱島森一郎の果てしない寛容さがあってこそであ>>続きを読む
原題は「La syndicaliste」(直訳=組合活動家)である。邦題は少し気負い過ぎの感があるが、穿った見方かもしれないと思った。誰が正義で誰が悪なのか、誰が真実を話して、誰が嘘を吐いているのか>>続きを読む
いながききよたかが脚本を書いた映画「忌怪島」が不出来だったので、本作に期待するみたいなレビューを書いたが、タイミングが合わなくて、公開から3週間過ぎてようやく鑑賞することができた。しかし4話のオムニ>>続きを読む
生まれてから35年間も閉じ込められて、母親以外の人間と会ったことがない男という設定はユニークだ。そのうえで彼の精神性を想像した結果が本作品である。
外界と接することで人間は何を得るのか、同時に、何>>続きを読む
当方が鑑賞したのは公開10日目だが、上映後に舞台挨拶があった。本作品は単館上映なので、毎回舞台挨拶をしているようだ。登壇した岩瀬顕子が、シェアハウスの住人である加奈子を演じていたのはわかったが、この>>続きを読む
イスラム教徒が世界的に増えているらしい。イスラム教徒が即テロリストではないことは分かっているが、ハラルを守ってハラムを犯さないという戒律が、結構面倒くさい気がする。豚肉が好きだが、イスラム教徒とは一>>続きを読む
206分の大作だが、感覚的にはまったく長く感じない。ただし鑑賞前にはトイレに行っておくべし。
ヨーロッパ人がアメリカ大陸に渡って支配を開始したときから、ヨーロッパ人には根拠のない奢りがあった。世>>続きを読む
AIロボットの映画にはどうしても付きまとうテーマがある。それは「人格を認める要件とは何か」である。
人間は生まれてきた瞬間から人格を認められ、人権が保護される。しかし胎児の段階では人間とは認められ>>続きを読む
内野聖陽は数年前に新宿で舞台「化粧二題」の一人芝居を観劇した。引き締まった身体で張りのある声を出す。迫力満点の演技が印象に残っている。本作品はその身体の印象をもって鑑賞した。とても面白かった。担当編>>続きを読む
岩井俊二監督の映画は、2020年の「ラストレター」もそうだったが、時間と空間を前後しながら物語がやがて一本の道となっていく編集方法だ。本作品も同じように時間と空間が前後する。登場人物の気持ちを大事に>>続きを読む
とても面白かったが、とてもキツかった。
「本当のことを言え」
まるで喉に刃物を突きつけられたような気がした。安全無事を願うこちらの心を見透かしているかのように、容赦なく問いかけは続く。
「きれい>>続きを読む
面白かった。悪人が登場しないホンワカした作品である。それに笑える。映画を観て笑うのはいい休日の過ごし方だろう。
アメリカ映画の「ハングオーバー!」は、タイトルの通り二日酔いの男たちがブラックアウ>>続きを読む
ガイ・リッチー監督は、ジェイソン・ステイサムと相性が悪いのかもしれない。前回の「キャッシュ・トラック」もイマイチだった。
その前にマシュー・マコノヒーが主演した「ジェントルメン」がかなり面白かった>>続きを読む
デンゼル・ワシントンは「フライト」や「マクベス」では表情豊かな主人公を演じてみせた。「イコライザー」の以前の2作の主人公は、容赦のない無表情の殺し屋の側面が強かったが、本作品では豊かな表情を解禁して>>続きを読む
井上陽水の「傘がない」という曲をご存知だろうか。冒頭の歌詞は衝撃的だ。
都会では自殺する
若者が増えている
今朝来た新聞の
片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨
傘がない
曲のリリースは1>>続きを読む
百人一首にある平兼盛の歌を思い出した。
しのぶれど
色に出でにけり
わが恋は
ものや思ふと
人の問ふまで
インターネット、特にスマートフォンは、我々の生活を劇的に変えた。手紙を書いたり固定電話>>続きを読む
犬は人に付き、猫は家に付くという。雄猫は住処の周辺を縄張りとして、見回る。以前雄猫を飼っていたとき、夜遅い帰宅途中に、家の周りを見回りしているところに出くわしたことがある。声をかけると一瞬身構えたが>>続きを読む
山田涼介のアクション映画というと、2015年の「グラス・ホッパー」のイメージがいまだに残っている。とてつもなく強い若い殺し屋の役を演じていた。
本作品で演じたジョーは、少年期がさり気なく説明され>>続きを読む
韓国映画は、撮影技術やプロットなどは進化しているが、世界観は日本の戦後の昭和時代みたいで、家父長主義が支配的だ。そのことをテーマにした作品は、いくつか鑑賞した。「はちどり」や「82年生まれ、キム・ジ>>続きを読む
ケイト・ブランシェット演じるバーナデット・フォックスと夫のエルジー・フォックス。一見自由な夫婦のように見えるが、実はここにもパターナリズムが存在する。エルジーと、彼が依頼したセラピストだ。夫もセラピ>>続きを読む
生まれたばかりの赤ん坊は、ほぼ何も表現できない。ただ泣いて自分の存在を主張するだけだ。その後、言語をはじめ、環境から様々なことを吸収して、やがて表現ができるようになる。何かを表現(アウトプット)する>>続きを読む
フィリッパ・ラングレーという主人公の名前が洒落ている。フィリッパの男性形フィリップはエディンバラ公(エリザベス二世の夫)の名前だし、ラングレーはCIA(アメリカ中央情報局)本部の所在地だ。名前そのも>>続きを読む