ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

ひでやん

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わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.0

緊縮財政によって切り捨てられる弱者の悲痛。

心臓の病を患い、医者から仕事を止められた59歳のダニエル。国の援助を受けようとするが、イギリスの複雑な制度に振り回され途方に暮れる…。

マニュアル通りの
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レベッカ(1940年製作の映画)

3.9

妻を亡くした富豪男性と旅先で出会い、貴族の後妻として迎えられた若妻が、死んだ前妻の影に追い詰められる恐怖を描いたヒッチコックの渡米第一作。

ヒロインの名前ではなく、一度も登場しない姿なき亡霊をタイト
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バルカン超特急(1938年製作の映画)

3.9

列車内で忽然と消えた老婦人の謎を追うヒッチコックの英国時代の傑作。疑うべきは全ての乗客か、それとも自分自身か?

列車という密室を舞台に繰り広げるミステリーだが、その列車は雪崩のため運休。いや、宿屋で
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三十九夜(1935年製作の映画)

3.8

ヒッチコック作品の基本的要素が詰め込まれたイギリス時代の代表作。

見知らぬ女性を助けたことで無実の罪を着せられた男が、警察とスパイ組織から狙われる事になる巻き込まれ型サスペンス。

初対面の女性に「
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鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

閉ざされた扉越しに抱く猜疑心と好奇心。

孤独な美術鑑定士の元に、 両親が遺した美術品を査定してほしいという依頼が入り、クレアと名乗る依頼人の屋敷を訪ねるが、依頼人は一向に姿を現さず…。主人公の鑑定士
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.0

ハバネロが隠れたフルーツケーキのような世界。

格式高い高級ホテルのコンシェルジュとベルボーイが、殺人事件と遺産争いに巻き込まれる冒険を描いた作品。

語り手であるホテルのオーナーから聞き手の作家へ、
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クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)

4.0

妻に突然出て行かれた夫が、育児と仕事の両立に奮闘するホームドラマで、当時のアメリカの離婚問題、親権争いを正面から描いた作品。
 
「ママはどうしていなくなったの?僕が悪い子だったから?」

子供に罪は
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ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)

4.1

波間にたゆたう小舟のような自分探しの旅。

続編の監督は荷が重いだろう。ましてやSF映画の金字塔といわれた前作の続編は重過ぎる。今作で製作総指揮にまわったリドリー・スコットがその荷を後ろから支えつつ、
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ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

4.2

舞台となる2019年を追い越してしまった今、改めて観たその世界は、人類の行く末のようだった。

40年近く経った今でも、オープニングで映し出される未来都市のクオリティに驚かされる。壁面に広告が映し出さ
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月世界旅行(1902年製作の映画)

3.8

映画の魔術師が120年前に描いた人類の夢。

映画製作に携わる前は奇術師だったというジョルジュ・メリエスが、監督・脚本・撮影・演出・出演の全てを自身でこなした世界初のSF作品。

天文学者6人が大砲で
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検察側の罪人(2018年製作の映画)

3.4

100 %の正義なんてどこにもない。

老夫婦殺人事件を担当し、真実を突き止めようとする若手検事と、自分の正義に固執し、時効を迎えた事件の重要参考人を執拗に追い詰めるエリート検事の対立はなかなか見応え
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家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。(2018年製作の映画)

3.0

直球ばかりじゃなく、時には変化球もある心のキャッチボール。

結婚3年目の夫婦。ある日、夫が仕事から帰るとリビングで血を流して死んでいる妻を発見。ほんの一瞬だけサスペンスに思えたが、タイトルを思い出し
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ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)

4.0

緊張から解放させない恐怖の123分。

2008年に発生したムンバイ同時多発テロ事件にて、タージマハル・ホテルに乱入したテロリストから客を救出するため奮闘するホテルマン達の姿を描く。

情け容赦ない殺
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ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)

4.2

憎しみを未来へ繋ぐか断ち切るか。

無抵抗の黒人の青年が白人警官に撃たれて死亡というニュースを見る度に「ひでえ話だな、肌の色が違っても同じ人間じゃないか」と思っていたが、人種差別も銃社会も馴染みが薄い
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

3.7

夢の国の外側にある貧困。

フロリダ・ディズニーワールド近くにある安モーテルを舞台に、貧困のシングルマザーと娘の日常をドキュメンタリー風に描く。自由気ままに遊び回り、悪戯してケラケラ笑う子供たち。カメ
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ウインド・リバー(2017年製作の映画)

3.6

いつまでも消えぬ心の傷と、どこまでも続く白の情景。

雪深いネイティブ・アメリカンの保留地で少女の遺体が発見され、FBIから派遣された女性捜査官に地元のハンターが協力する形で捜査が始まる。雪原に裸足の
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ボーダーライン(2015年製作の映画)

3.8

アメリカとメキシコの国境で起こる麻薬戦争をリアルに描いたクライム・サスペンス。

冒頭から張り詰めた緊張感が続き、臨場感あふれる演出に目が離せない。米国防総省の特別部隊に抜擢され、麻薬組織の撲滅作戦に
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プリズナーズ(2013年製作の映画)

4.1

その確信は善悪の境界線を越えてゆく。

娘を誘拐された父親が、証拠不十分で釈放された容疑者こそが真犯人と確信し、娘を取り戻すために一線を越える重厚なサスペンス。

ヒュー・ジャックマンの激しい怒り、ジ
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複製された男(2013年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

振り払っても取れない蜘蛛の巣のようないくつもの解釈。

同僚から薦められた映画の中に自分と瓜二つの俳優を見つけた大学講師のアダムは、その俳優に興味を持ち、居場所を突き止め、やがて対峙する。そんな奇妙な
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T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)

3.9

20年の時を経て帰ってきた愛しきクズ共。

あまり期待していなかった続編だが、オープニングを観るとやはり心が躍った。前作と同じ主要人物が実際に年をとり、それぞれの老いを役柄に反映させているので違和感が
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トレインスポッティング(1996年製作の映画)

4.0

スコットランドを舞台に、ヘロイン中毒の若者たちの日常を描いた青春映画。

薬物、暴力、犯罪という重いテーマをスタイリッシュに描いたオシャレ映画。ドラッグの刹那的な快楽や青春の速度を表しているようなテン
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3-4x10月(1990年製作の映画)

3.9

省略+反復×暴力。

ガソリンスタンドで働く男がヤクザとトラブルになり、周囲を巻き込んだ騒動にケリをつけるため沖縄へ銃を仕入れに行く話だが、久しぶりに観るとやってる事は無茶苦茶だった笑。

BGMは入
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シークレット・スーパースター(2017年製作の映画)

4.8

心を揺さぶる絶望と希望の波状攻撃。

厳格な父親から歌うことを禁じられた少女が、動画サイトで顔を隠して自分の歌を披露したところ、その歌声が世界中に広がっていく物語。トントン拍子に夢への階段を駆け上がる
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カンダハール(2001年製作の映画)

3.4

ブルカ越しに見た母国の悲惨な現状。

アフガニスタンからカナダに亡命した女性ジャーナリストが、母国にいる妹から自殺を仄めかす手紙を受け取り、妹を助けるためカンダハールへ向う。

9.11テロ事件は、旅
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何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)

4.3

サイレント時代から活躍する銀幕スターで、不仲でも知られたベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの2大女優が激突した戦慄のサイコ・サスペンス。

舞台で人気子役のジェーンと彼女を羨む姉のブランチ。大
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ロブスター(2015年製作の映画)

3.7

突きつけられた不条理の中に漂う奇妙な滑稽味。

ぐっと冷え込む季節になった12月、帰宅するとコタツの中で丸くなっている猫を見て「猫っていいな」なんて思う今日この頃。ギリシャの奇才ヨルゴス・ランティモス
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カメラを止めるな!スピンオフ「ハリウッド大作戦!」(2019年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

二煎目で薄くなったスピンオフ。

前作の悪夢から半年後、ショックで声が出せなくなった千夏は髪を金髪に染め「ホリー」と名乗り、ハリウッドでウェイトレスをしていた。その店に突如として現れるものは何か?
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カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

低予算で無名俳優でもアイデア次第で面白くなる事を証明した作品。やったもん勝ちですね。

冒頭、安っぽい演技と不自然な間延び、さほど強くないゾンビと強すぎる護身術おばちゃんを見せられ、なぜこの映画がヒッ
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A.I.(2001年製作の映画)

3.8

ロボットの異常な愛情─または私は如何に人間になる事を望んで母を愛するようになったか─

…て、勝手にキューブリック作品をもじるな!はい、すんません。最初に思いついた「時計仕掛けの未知との遭遇」は、なん
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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

4.3

倦怠期の夫婦が飲む冷たいホットコーヒー。

「フルメタル・ジャケット」以来11年ぶりとなる作品で、キューブリックの遺作となった今作はタイトルからして厄介。「大きく閉じろ」は「クールに温めろ」くらい意味
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レイジング・ブル(1980年製作の映画)

4.2

沈まない闘争心と捨て切れない猜疑心。

なんて美しいオープニングなんだろう。シャドーで揺らす身体は闘牛のようであり、精神を研ぎ澄ました男の孤独が胸を鷲掴み。この映像は痺れる。

不可解な判定に怒りを露
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.1

社会から孤立した男の哀愁と狂気。

タクシーの車内は、腐りきった世界と断絶した殻の中に見えた。その孤独な世界から飛び出せずにいるが、入ってきた客は誰であれ受け入れる。そうやって社会との繋がりを見せるが
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時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.6

仕掛けのない腐ったミカンか、時計じかけの新鮮なオレンジか。

「コロヴァ・ミルク・バー」を映し出すオープニングから強烈だった。独創的で斬新な衣装や美術が次々と脳内を刺激したが、その近未来のビジュアルは
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フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

4.5

殺人兵器と化した若者たちに垣間見る人間性と幼児性。

おしゃれ心という草原を容赦なく走り続けるバリカン。流れる曲は「ハロー、ベトナム」と歌うが、床に落ちゆく髪は「グッバイ青春」と歌っているようだった。
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パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)

3.6

内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台に、現実と空想の狭間で過酷な試練に挑む少女を描いたダークファンタジー。

オフェリアが三つの試練を受ける動機付けが弱く感じちゃって、序盤からあれこれと考えてしまった
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静かなる叫び(2009年製作の映画)

3.7

ありふれた日常を突き破ったありえない銃弾。

実際に起こった銃乱射事件をモチーフにした作品だが、犯人の生い立ちは一切描かず、手紙で動機、目で心情が描かれる。色彩は奪われ、台詞や音楽は抑制されるため、与
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