もっちゃんさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

もっちゃん

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どん底(1957年製作の映画)

3.6

マクシム・ゴーリキーの原作を江戸時代に舞台を移した今作。もしかしたら、黒澤明作品唯一の「ミュージカル映画」といえるかもしれない。

社会の「どん底」で生活する人間たちの日常を描いた群像劇。濠のような低
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悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

黒澤明の社会派ドラマ。高度成長期においてみな前しか見ていなかった時代に苦言を呈した意欲的な作品。

公団と大手ゼネコンの汚職問題が国民の目に届かない水面下で行われている中、次々と役員が自殺していくとい
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虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)

3.7

非常にコンパクトに寓話を映像化した作品。

源頼朝の命により命を狙われることになった義経が奥州藤原氏のもとに逃げようとするというストーリー。その間、頼朝の命で厳重に警備されている関所を抜けなければなら
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生きものの記録(1955年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

文句なしの黒澤作品最高の出来であり、堂々のオールタイムベスト級である。

『七人の侍』でわんぱくなトリックスター・菊千代を演じきった三船敏郎が翌年公開の今作では70歳の老人を演じている。そして、一目見
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羅生門(1950年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

本当に昔に学校の授業で見た今作であるが、もう内容は全く覚えていなかったので再鑑賞。よくできた作品である。

芥川龍之介の『羅生門』と『薮の中』を組み合わせて脚色した今作。同じ事件を三人の証人が検非違使
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ほしのこえ(2002年製作の映画)

3.6

制作のほとんどすべてを新海誠監督自ら手掛けたというほどの思い入れの強い作品である。そのためか、ビジュアル面では少々難があるものの、アニメ史においては十分な意味を持った作品といえる。

30分足らずとい
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隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)

4.5

個人的「黒澤映画ナンバーワン」の作品。もう非の打ち所がない完璧な娯楽映画である。

周知のようにのちに「スターウォーズ」シリーズへとオマージュされていく今作であるが、何がルーカスの心を動かしたのだろう
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用心棒(1961年製作の映画)

4.0

のちに『椿三十郎』へと続いていく黒澤監督の「三十郎シリーズ」の一作目。音楽の使い方が絶妙。

わかりやすいストーリー構成に、個性的なキャラクターたちといった様々なファクターが今作の魅力を引き出している
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一番美しく(1944年製作の映画)

3.5

黒澤監督が戦時下において描いた女子挺身隊の実像。プロパガンダ映画である。

いわゆるプロパガンダ映画ではあるが、プロパガンダ映画の元来の機能としてそれは「反戦映画」にも働きうる。プロパガンダ映画はもと
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僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)

4.0

タルコフスキーの描く戦争。それは子供の視点から描かれる絶望である。

独ソ戦争のさなか、母親を失った少年が復讐のためにソ連軍に加担するというストーリー。美しい画面、水、影、光といったタルコフスキーなら
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復讐するは我にあり(1979年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

実在の事件を下敷きに今村昌平監督が一人の殺人鬼の実像に迫る。殺人鬼のサイコパスを緒形拳が演じる。

一人の男が輸送されるシーンから始まる。その男は日本各地を転々としながら、5人を立て続けに殺害した。男
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姿三四郎(1943年製作の映画)

3.8

柔術と柔道が互いに威信をかけて、争っていた明治時代の話である。姿三四郎という柔道家を通して本当の「柔道家」とは何たるかを問うた作品。

それまでのいわば戦闘術としての「柔術」が位置を占めていた江戸時代
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椿三十郎(1962年製作の映画)

4.0

黒澤明が描く「サムライ像」のすべてがここにある。のちにあらゆる剣豪映画(漫画)に受け継がれていくものである。

いわゆる剣豪・時代劇ものではあるが、不思議と暑苦しさ、血生臭さを感じないのは今作が剣豪も
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インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)

4.0

妄想を形にする。イマジネーションを具現化するという点においてはディズニー、特にピクサーは世界のアニメ業界の中では抜きんでているようだ。

アニメ業界の最先端を行くピクサーが次に試みたのが、「感情を視覚
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オデッセイ(2015年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

原作は未読。原作ファンから言わせるとワトニーのひょうきんさがいまいちらしいが、個人的にはかなり楽しめた。

本作をSFに分類すべきかどうかはかなりきわどいところだろう。何か非科学的なところがあるように
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老人Z(1991年製作の映画)

3.8

デザインで大友克洋と江口寿史がタッグを組んだということで今作品の価値は相当のものがある。江口寿史の描く女性が最高に好きなのである。

高齢化が進行した社会で介護問題が深刻化している中、厚生省が開発した
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言の葉の庭(2013年製作の映画)

4.0

新海誠監督の描くショートフィルムはやっぱり上手い。見事にコンパクトにまとめられていて、すごく「いい映画」だ。

少し大人びた少年と傷つき歩くすべを失った大人の女性のラブストーリー。淡い恋心としっとりと
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アメリカン・ギャングスター(2007年製作の映画)

3.8

実在のギャング、フランク・ルーカスの栄枯盛衰を描いた作品。エンタメ性に富み、ギャング映画のツボを押さえている。

フランクは麻薬ビジネスで映画を極めた黒人ギャングである。興味深いのが彼が手を付けた麻薬
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ブラックホーク・ダウン(2001年製作の映画)

3.5

1993年のソマリア内戦での実話を基にしている。戦争映画として一定の迫力や臨場感は担保しているが、やはり良くも悪くも「アメリカ映画」だなという感覚は否めない。

ソマリア内戦自体にあまり詳しくはないが
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人狼 JIN-ROH(1999年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

いわゆる押井監督の「ケルベロス・サーガ」の一つであるが、ほかの作品は一切見ていないので詳細は分からないまま鑑賞。

時代は戦後。戦後といっても、我々がたどった歴史ではなく、敗戦国となった日本が戦勝国で
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スカイ・クロラ The Sky Crawlers(2008年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

押井監督作品の中では作家性薄めでメッセージ性が強い作品といえる。というのも押井監督自身が今作品に込めたものとは「若者たち」への思いだったからだ。

架空の世界。そこでは「戦争請負人」と呼ばれる会社が「
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イノセンス(2004年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ここに来て、押井監督の大きな問いが爆発する。「虚構と現実」「人間と人形」「ループ」今まで押井監督の中にあったテーマが結集したような作品。シリーズ一作目が士郎正宗色が強かったのとは反対に今作は完全に押井>>続きを読む

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)

3.9

士郎正宗漫画原作の映画版。しかし、例によって完全に押井ワールドに染まっている。

近未来の都市。人間たちは外部記憶装置を使い、完全な電脳化が可能になっているという設定。つまり、人間とアンドロイドの境界
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機動警察パトレイバー2 the Movie(1993年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

これは押井作品、もっと言えばアニメ作品において自信もって最高傑作と言えるような出来である。1と比べると明らかに作風が変わっている(つまり押井ワールド全開である)。

93年という時期に作成されたという
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機動警察パトレイバー THE MOVIE(1989年製作の映画)

3.8

科学、経済の発展によって生じる欺瞞、ひずみに対して警鐘を鳴らした一作。

”Labor レイバー”とは人間社会の発展のために「労働力」として導入された労働ロボットのことである。そして、人間の役に立つた
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うる星やつら オンリー・ユー(1983年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

押井監督自身が「これはアニメの延長でしかない」と一刀両断した今作。「映画」を作ることに執着したシネフィルの彼らしいこだわりと言える。

だが、この作品のレベルが低いというわけでは決してない。アニメ版「
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スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

字幕2D、字幕吹き替え3D、IMAX3Dという風に合計三回いろんな鑑賞方法で試した結果、今回のレビューに至るわけです。

公開前から、ただならぬ賑わいを見せていた。ep7のトレーラーが新しく更新される
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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

「虚構」と「現実」が絡み合う。「時間」と「空間」が複雑に交錯するビジュアルは魅了されるものがある。そこは果たしてユートピアか、ディストピアか。

学園祭前日が永遠にループする。みんなが一つになれる時間
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闇の子供たち(2008年製作の映画)

3.8

タイにおける人身売買を扱った意欲作。社会派ドラマであるため、展開や演出が少し乗りづらいところがあり、オチへの持っていき方も雑だと感じたが、キャスト、特にタイの子役たちの演技が素晴らしい。

人身売買、
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活きる(1994年製作の映画)

4.2

現代中国が歩んできた道のりに沿って、時代の荒波に飲まれながら生きてきた家族を描く。

40~70年代ほどまでの中国はまさに激動であり、支配者も、風潮も、思想も変革を迫られてきた。国共内戦、反右派闘争、
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初恋のきた道(1999年製作の映画)

3.6

中国山間部の淡い恋愛を描いたコテコテのラブストーリー。随所随所でツボを押さえてるから、普通に恋愛ものとして楽しめる。

50、60年代ごろの中国山間地帯。広大な山々が並び、四季を巡りながらいろんな表情
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あの子を探して(1999年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

中国の貧しい山村で先生をすることになった13歳の少女が行方不明になった自分の生徒を探しに行くというストーリー。実際の生徒を使っており、ほとんどのキャストは素人である。ゆえに山村の生徒たちは皆すれてなく>>続きを読む

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

4.0

一人の人間の死による波紋が「普通」の家族に広がる。家族の普遍性を描きつつも、さらに思いテーマが下支えする。

「死」に対する固執はないが、だからこそリアルに見える。早くに長男を亡くした家庭の中の小さな
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渚のシンドバッド(1995年製作の映画)

5.0

群像劇の最高傑作。「笑いながら泣く」という言葉がぴったり当てはまる。『ぐるりのこと。』でも言ったように、底抜けに可笑しいところと底抜けに切ないところが共存して、互いにシンクロしている。

「学校」とい
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0.5ミリ(2014年製作の映画)

4.2

安藤サクラは本当にいろんな表情がありますね。惚れ惚れします。中でも今作、最高の演技を見せてくれたのは坂田師匠ですね。あんなおじいちゃんはいたるところに見かけます。

近年、人と人との距離はより注目され
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薄氷の殺人(2014年製作の映画)

3.7

中国版フィルム・ノワール。ファム・ファタルを演じるのは台湾の女優グイ・ルンメイ。
まさに彼女の演技があってこその作品であると思う。儚い表情、憂いのこもったまなざし、何か深い過去を秘めているような面持が
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