ニューヨーク←→パリ大冒険の作品情報・感想・評価

「ニューヨーク←→パリ大冒険」に投稿された感想・評価

ageless505

ageless505の感想・評価

5.0
とにかく腹かかえて笑えて、しっかり風刺の効いた傑作コメディ。

1973年フランス映画「Les Aventures de Rabbi Jacob」(直訳すれば「ラビ・ヤコブの冒険」 邦題は何故そうなる?という感じ)です。

3つの話の流れがあるドタバタ劇です。
まず、ニューヨークに住むユダヤ教導師ジャコブたちがパリに住む親戚のユダヤ教成人式に参加する道中。
つぎに、資本家で人種差別主義者ヴィクトール(ルイ・ド・フュネス)が娘アントワネットの結婚式会場を目指す話。
つづいて、次期首相を狙うアラブ人スリマーヌの殺害をもくろむ対抗組織のボズ・フュネスたちのいざこざについて。

これらサブストーリーが、交通事故的に絡んだり、人物の入れ替わりなどによってヘンテコな珍道中が展開されます。
行く先々でベタなわかりやすい大騒ぎばかり起こるにもかかわらず、しっかり3つの話がテンポよく見事に絡みつつ、話の方向性・必然性がキープされてる脚本はすばらしいです。

黒ひげ・もみあげ・黒ずくめのジャコブ一行が、ニューヨーク高速道の渋滞に我慢ならず<搭乗者全員で車を持ち上げて>先を急ぐ、とか。
なぜか<ボートを積んだ車>で娘の結婚式へ急ぐヴィクトールの車、たまたま白人男性と黒人花嫁の結 婚式会場前をとおりすぎると、ヴィクトールは口汚く黒人差別発言をくりかえすが、排気ガスによって自分の顔が真っ黒になってしまう、とか。
ユダヤ人運転手サロモンが運転を誤り池に突っ込む(ひっくり返って積んだボートから着水して事なきをえる)が、サロモンは「安息日になったからこれ以上働かない、家に帰る」と雇い主のヴィクトールをほったらかしてしまう。とか、
行き場に困ったヴィクトールは妻に連絡しようと電話を探して建物に入る、そこはチューインガム工場で、誤って製造過程の<液体ガムの巨大タンク>に落ちてしまう。なんとか脱出すると今度は偶然同じ建物内でスリマーヌを拷問・暗殺しようとするフュネス一味に出会ってしまい、結局一味全員<巨大タンク>に落ちてしま う、とか。

ビクトールに保守的レイシストの役割があたえられているのは、フランスが抱える人種問題を戯画化していて、差別する側の珍奇な発言行動を徹底的に笑いとばしゆるく相対化するためのようです。特に後半では、ユダヤ人サロモンがアラブ人スリマーヌの逃走を手助けし、ヴィクトールから「もともと同じ名前だし(兄弟みたいなもんだ)」と、促されて2人がガッチリ握手するシーンは、<アラブ対ユダヤという究極のタブー>に対して笑いをもって共生のありかたを探るようで、とても気分良いものでした。そもそもヴィクトール演じるルイ・ド・フュネスはほんとうに芸達者で、随所で披露するヘン顔やパントマイムは、笑いに言葉はいらない・笑いに国境はない、と伝えたいかの ようです。

また本来ならジャコビたちが目指していたパリはマレ地区のユダヤ人街へヴィクトールとソリマーヌがたどり着く場面では、ユダヤ教会シナゴーグにてカトリック信者ヴィクトールとイスラム教徒ソリマーヌが、ヘブライ語聖書にもとづく祝福の儀式進行に四苦八苦するという摩訶不思議な光景があり、宗教の違いですらもコメディの材料なのでした。

ともあれこむずかしい話はあくまで本作のB面であって、A面は数々の偶然・勘違い・聞き間違いなどがおりなすドタバタ・コメディです。とくにパリ・ユダヤ人街で唐突にはじまるユダヤ・ダンスシーンは謎のおもしろさがあります。なお、出番は多くないですが、ヴィクトールの娘役は若かりしミウ=ミウで、花嫁姿がとてもか わいいです。

本作は1973年度フランスでの興行収入第1位の映画ということです。