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Blue Jean(原題)
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『Blue Jean(原題)』に投稿された感想・評価

[拒絶と忘却の歴史と現在] 90点

傑作。ジョージア・オークリー初長編作品。1988年、イギリスでは保守党党首マーガレット・サッチャーによってセクション28、悪名高き同性愛嫌悪の法案が制定された。体育教師のジーンは生徒たちや同僚たちには自分がレズビアンであることを隠している。恋人ヴィヴとも毎日レズビアンバーで楽しく過ごしているが、家に姉が遊びに来ると、彼女を友人と紹介するしかない。テレビではホモフォビアの言説を垂れ流し、同僚たちはそれに首肯している。絶対にバレてはいけない、バレたら仕事を失う、という恐怖心が彼女の心を冷たくする(髪を染める、鏡を見るという行為が反復されるのは、ある種自分を偽って周囲に溶け込むことを示唆しているのだろう)。ある日、体育の授業で明らかに運動が苦手そうなロイスという女生徒と出会い、彼女とレズビアンバーで再開したことで、"平和"だった日常は崩壊していく。バレたら仕事を失うのに、生徒にバレてしまったので、これ以上自分の傷が拡大しないようにロイスをあの手この手で追い出そうとするのだ。まるでホモフォビアを内面化してしまっているかのような振る舞いに、ヴィヴは困惑する。どうにかしてバーからロイスを追い出そうとするジーンが、"世界に彼女の居場所があるとは限らない"と言ってしまうシーンは、なんとも痛々しい。ジーンはバツイチという設定で、姉はその時の写真を気に入って未だに飾っているのだが、ジーンはそれを拒絶するというエピソードから、彼女がこれまでの人生の多くの場面で似たようなことをしてきたことが示唆される。つまり、拒絶と忘却である。加えて、ロイスは、ヴィヴ的に言わせてみれば初めて会ったときのジーンとほぼ同じ状態であり、ジーンがロイスを排除しようとする背景には自己嫌悪も関わってくるのかもしれない(自己嫌悪の発露としての拒絶と忘却)。そんな彼女が少しずつ自分に向き合っていく。姉の夫にカムアウトした際の、晴れやかな、それでいて少し不安な涙は、第一歩を踏み出した証拠に他ならない。それは時代とも共鳴していく。拒絶と忘却の時代が終わり、誰もが自分らしくいられる時代が始まるのだ。
科

科の感想・評価

5.0
こういうテーマで自己投影できる映画は少ないのだけど、少し近づけた気がする

商業化された恋愛とか、リアリティの欠片もない薔薇色の人生観を目にすると吐き気がするからあまり目を向けて来れなかったのだけど、これはそういう感情一切抜きに観れた。これをBBCが作ってることに、単純に良いなあ、すごいなあと思った

『後輩君』につい最近出会ったり、見知らぬ人から突然「"父親"と"母親"と子どもという基礎的条件のもと人間の暮らしは構築されていく、人生が豊かになっていく」と説かれたりしたタイミングだったので、サッチャー政権ではないけど通ずるところがあった

ハッキリとした自己の存在を持っている人たちが、私にとっていつまでも羨望の対象で、羨ましがってる自分自身ってめちゃくちゃにダサいなあと常々思う そういうところだよね
まさに 自分で自分の首を絞めながら自分に酸素をあげているよう で、自責の念に駆られました
生きます
遊びに行く時の服装カッコよい