『名前、呼んでほしい』

横浜国際映画祭でのワールドプレミア上映にて鑑賞。

外山監督は『茶飲友達』でガツンとやられて大ファンになった監督さん。本作は『東京予報』というタイトルでまとめられた短編集の中の田中麗奈さんが『辰巳』の遠藤雄弥さんと共演した一本。

◯◯ちゃんのママと◯◯くんのパパの同級生の保護者同士のダブル不倫。子供が学校にいる昼間にホテルで逢瀬を楽しむ。

田中麗奈演じる沙穂は、次第に思いが募り、１日だけでも見知らぬ土地で夫婦のようにしてみたい、と思う。

不倫と割り切ってる男からしたら、女がこんなこと言い出したら潮時とか思いそうだが、だいたい、この男は昼間働かずに何やってるんだ？ヒモか？

最後の沙穂の台詞がタイトルの『名前、呼んでほしい』だが、このタイトル、昔、ある女友達が「『あなた』って呼ぶ子は遊んでる子だよ。ヘタに名前呼んでるとポロッと間違えた時ヤバいから、名前は呼ばないの」な〜んて言ってたことを思い出した。

遊んでる人は名前は呼びません。皆さま、お気をつけて(笑)。

　妻であり一児の母でもある沙穂（田中麗奈）は、同じく妻子持ちの涼太（遠藤雄弥）と恋人関係にある。正に現代版昼顔の世界線である。食事中に旦那は携帯に掛かって来た電話に一切出ようとせず、ビールを買って来るからなどとふらっと家を飛び出す。その時点で夫の浮気は明らかなのだが、沙穂も実は浮気している。公園にいる涼太は子供と遊ぶでもなく、ずっと携帯の画面ばかり見ている。正に現代の子育ての空虚さが垣間見える。肌を重ねることでしか満たされない昼顔の様な関係に罪悪感を感じた沙穂は最後の提案をする。最終日にマイホームの内覧をする2人の姿にギョッとさせられるし、最後のワンカットは完全にホラーだった。3話それぞれに、まったくレイヤーが違う世代の空虚さが巧みに描写されていた。外山文治氏の脚本はある種の断絶を感じさせながら、人が他者と触れ合うことの大切さと生き辛さを巧みに描写する。ここでも橋の場面が印象的に使われ、物語に彩りを添えていた。

初日舞台挨拶付き、久々の下北沢シネマK2へ。
外山文治監督の短編オムニバス『東京予報』内の一作。
好きだな、こういうテイスト。

不倫関係にある男女が区切りを決めて1日だけ本当の夫婦になり、お別れする話。
「大田区は昔住んでいた、練馬区は嫌い、世田谷区は無難、杉並区がいいかな」
これはデート場所を決める時の一幕だけど、監督は練馬区の人から怒られたらしい(笑)

そして、最後の時間を過ごす二人。
デートシーンは二人のエチュードらしく、全て即興。
だからか凄く自然で「あ～肩書がなかったら普通のカップルだなぁ」って思ったりもして、様々な想いが過った。
〇〇ちゃんのパパ、〇〇ちゃんのママの重み。

結婚って恋愛の延長？保証？契約？
子供がいなくても気持ちは変わらない？
いまや日本も離婚率が3割を超えていて、不倫や仮面夫婦等を合わせると実質的に結婚生活が円満な家庭はどれくらいあるのだろう。
家庭の内実は外にわからないし、だれしも『ドラマトゥルギー』的に表と裏では多少なりとも顔を使い分けるでしょ？
そう考えると…

紗穂の旦那も不倫をしている素振りがあって、子供が不憫だった。
旦那も不倫、妻も不倫の板挟み。
何となく子供は気付いていそうな雰囲気、多感な時期の子供は感性が鋭いからね。

ラストシークエンスも意味深な描写。
不倫は本気になった方が負けなのかな？
別れを切り出し、本気で恋愛をした紗穂はどこか現実に戻れないふわふわした感じが残り、相手の男は割り切ってまた…
あくまで不倫だし、正解はないけれど『結婚』と『恋愛』その形について思いを巡らす心のグレーゾーン。
満たされない思いを的確に捉えた作品でした。

今作のスタートは外山文治監督が田中麗奈さんへオファーした事らしいです。
そのきっかけは『東京マリーゴールド』という市川準監督の作品。
ボクもとても大好きな映画(10代の頃に劇場鑑賞)なので不思議な縁を感じましたし、さらに不倫相手の男性を演じたのが昨年ドハマリした『辰巳』の遠藤雄弥さん。
優しげでズルい役の彼もまた色気に満ちていて格好良かったです。

ちなみに…そっち系専門の友人弁護士曰くキャッシュで200万〜300万払ってもなんの痛手もない年収なら好きにやったらいいんじゃない？と笑ってました。