宗教団体が関与した殺人現場に遭遇してしまった女優が警察の警備対象となりその過程で起きるドタバタ劇を描いた伊丹十三監督の遺作。
奇しくも宗教と政治の癒着が注目を集めている今の時代での鑑賞になりましたがここに出てくる宗教組織のモデルって時代背景を考えたら明らかにオウム真理教ですね。例えばIS「イスラム国」みたいな過激派テロ組織とかもそうだけどこういう自分が信じる物の為なら何を犠牲にしても構わないって思ってる人達って何をやってくるか予測がつかない狂気も持ってるから怖いですよね。ある意味で最強の人種とも言えるヤバい人達に狙われた女優を無事に裁判に出廷させるべく奮闘する警察とそれに振り回される主人公の姿を描いた映画な訳ですがこの映画は「ミンボーの女」公開時に伊丹十三監督が暴力団に襲撃され警察の警備対象になった経験を元に作られたのだそう。
映画として三谷幸喜さんが絡んでるからかかなりコミカルで癖が強くありつつもちゃんとした緊張感も忘れない物語展開で最後まで集中して見れる！主人公を演じる宮本信子さんもさることながら刑事を演じる西村雅彦さんのキャラクターが良いですね。最初と最後に比べて明らかに関係性が変わっていく二人の掛け合いは純粋に見ていて楽しかったですし物語に良い色合いを与えていたと思います。現実の世界でもたまたま事件に巻き込まれたりで自分の人生をぶち壊しにされてる人達がいると思うとちょっとやるせなくなったり。
これが伊丹監督の遺作になったわけやけどその最後が本当に自殺であったのか、それとも他殺だったのか、真相はわからない。人の死の真相を一方的に決めつける事はしませんが先に言った「ミンボーの女」での暴力団襲撃事件からも反社の影響を受けながら作品作りに勤しんでいた事は想像に難くない。
もし監督が今もご存命なら「コロナウィルス」「反コロナワクチン&ワクチン後遺症」を題材にした映画もきっと作ったでしょう。ユーモアがありながらも社会の中にある悪や辛い現実から消して目を背けず逃げる事もなく嘘もつかない彼の様な映画監督が今の日本には必要だ。
自身の命の危機も省みず己の作家性も最後まで曲げなかった監督の生き様に心からの敬意を表したい。

不定期開催ジャケ借りシリーズ

これは素直に面白かった。他のシリーズも観てみたい。

カルト教団という重すぎる題材ながら話はコメディベースで進むので何ともいえない独特の空気が漂っている。

珍しく警察が憎めない人ばっかり。もっとカルト教団側の事情をみたかったけど当時はこれでも監督が実在のカルト教団に襲撃されてたらしい。

あとおっぱいが出る必要のないとこで出てた。今は必要あっても出ない映画が多いので、マルパイの女しか主演できないよう法律を変えてください。

何故かメジャーなサブスクでは配信されない伊丹十三監督作品。

今回「お葬式」から全作DVDレンタルするつもりが、ほぼ貸し出し中で監督の遺作となった本作しか残っていなかった。

長編監督デビュー作の「お葬式」から続けて鑑賞したので、比較すると伊丹ワールド全開で最後はここまでエンタメ色強くなったのかと良い意味で驚き。

また、伊丹監督の実の奥様でもある宮本信子のハリウッド黄金期の大スターばりのヒロイン役のケレン味たっぷりの演技が堪らない。まさに彼女の独断場といった感じ。

「マルサの女」から始まった特徴的な髪型はもちろん、取っ替え引っ替えと身につける衣装の数々・・特に、このジャケ写にある劇中劇の「クレオパトラ」のコスチュームなんて馬鹿げているのにゴージャスで最高。

明らかにオウム真理教のテロ事件を下敷きにしながらも、そこまで社会的テーマは強くなく、伊丹十三監督の職業物シリーズの中でも見やすい。
それでいて、事件の証人になるか否かは本人の自由である事、一度証人になる事を約束したら裁判での出廷を拒むと罰金制度がある事など、意外と知らない刑事訴訟法（現在では改訂されている可能性有り）の知識も勉強になった。

殺人事件の目撃者であるヒロインの身辺警護に就く刑事役の西村雅彦も好演。同時期にテレビで演じていた「古畑任三郎」の役どころと被るかと思いきや、しっかり違う色を出していた。

宮本信子と検事役の益岡徹の証人尋問の模擬シーンの白熱ぶり、江守徹演じる容疑者側の弁護人との丁々発止のやり取りも楽しい。

余りにも面白く、131分の上映時間があっと言う間。クライマックスのカーチェイスも見応えがあるので、「え、ここで終るのか？」と少し物足りなく感じた程。

三谷幸喜がテイスト的には近いものの、伊丹十三のような監督が今の日本映画界にはいないのは寂しいところ。

伊丹監督が逝去されて1年半くらい経った頃に宮本信子さん主演の2時間ドラマ（結局オクラ入り・・）で単独インタビューを取らせてもらったが、マネージャーを側に付けることもなく、気さくで明るい方で、何よりも写真撮影は行わなかったので、そのスッピンの美しさが忘れられない・