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エーゲ海の天使
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『エーゲ海の天使』に投稿された感想・評価

3.8
「エーゲ海の天使」

〜最初に一言、大傑作。ロジエの「オルエットの方へ」のOLを見るかの様な忙しさに追われる現代人必見の映画であり、トルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」に続くオスカーを手にしたサルヴァトレス監督のイタリアン・ニューシネマの1本である。これが未だにVHSのまま埃をかぶっているにはあまりにも惜しい作品である。詩情豊かにユーモラスに描いた本作は見る人を幸せにする〜

本作は「ニュー・シネマ・パラダイス」から僅か2年でイタリア映画がまたオスカー像を手にしたガブリエレ・サルヴァトレスが1991年見事にアカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞した傑作映画で、既に「ぼくは怖くない」と言う2003年に監督した映画を10年前にDVDを購入して見て、この監督のオスカー受賞作品に興味を持ち、長年ずっとVHSで探していたものをようやく先日見つけて購入して初鑑賞したが素晴らしい。これがソフト化されてないのが残念である。と言うか案外日本ではアカデミー賞受賞した外国映画のソフト化が結構されてないのが多い。例えば「アントニアの食卓」これなんてめちゃくちゃ傑作なのに、未だにDVD化されてないのが本当にありえないと思う。こないだ紹介した「ジャーニー・オブ・ホープ」「追想の彼方」「ハンカチのご用意を」その他タイトル挙げればキリがない…。

本作は紺碧のエーゲ海に浮かぶのどかな小さな島で、夢のように暮らし、童心を取り戻していく男たちの暖かくユーモラスなこの映画は、見る者をちょっぴり元気に、幸せな気分にしてくれる作品で、アメリカとイタリアのアカデミー賞制覇して大ヒットしたそうだ。そのチャーミングでハートフルな魅力は、観客と批評家を共にノックアウトし、イタリアのアカデミー賞とも言えるDonatello賞の作品賞と編集賞に続き、本家アメリカの92年アカデミー外国語映画賞受賞。本国イタリアでの大ヒットはもちろんのこと、92年のアメリカで外国映画としては最高の興行収入を記録したそうだ。監督は名実ともに「ニュー・シネマ・パラダイス」のトルナトーレと並ぶイタリア・ニュー・シネマの旗手となったのだ。


さて、物語は第二次世界大戦が始まった1941年。エーゲ海に浮かぶ小さな島に、8人のイタリア兵が上陸した。彼らの使命は島を敵の手から守り、報告することにあった。しかしこの8人、部隊としてのまとまりもなく、愛国心に燃える軍人と言うタイプからは程遠い。元教師で解体した舞台の生き残りモンティーニ中尉。暴力的で血の気の多い軍曹ロルッソ。両親を幼くしてなくしたシャイな男で、中尉の従卒ファリーナ。山育ちで海を知らなかった真面目なムナロン兄弟。農場から連れてきたロバを我が子のように可愛がるストラツァボスコ。故郷に残してきた身重の妻のことが頭から離れず、何度も脱走試みたノヴェンタ。軍曹の影法師のような無線技師コラサンティ。8人はこの島が敵で埋め尽くされていると信じていたため、ここはイタリア人の墓場だと書いた落書きにも怯えていた。

そして第1日目の夜。暗闇から足音が聞こえ、一斉射撃が始まった。地獄のような恐怖の後、最初の犠牲者が出た。それは、ストラツァボスコが娘とも、恋人とも思っていたロバだった。悲嘆にくれ、撃った仲間に怒った彼は無線機を岩に投げつけて壊してしまう。時同じくして、爆音が聞こえた。彼らが乗ってきた戦艦が破壊されたのだ。こうして本国との連絡は絶たれ、戦況も把握できず、8人は祖国に忘れられた存在となった。モラルの士気も低下したある日、それまで姿を見せなかった島の人々が現れた。かつてここに上陸したドイツ兵への恐怖が彼らをそれまで隠れ家へと追いやっていたのだ。島の若い男達は捕虜として連行されていた。安全を確認した島の人々の穏やかな、ゆったりとした暮らし。いつしか男たちはこの天国のような島に心を奪われていた。

そして、軍服を脱ぎ、装備を捨てて、戦争や自分たちを見捨てた祖国を忘れようと、島の安逸な生活に逃避していく。やがて時が経ち、絵心もある中尉は、司祭に頼まれて壁のフレスコ画の制作にかかっていた。ストラツァボスコは新しい話し相手のロバを見つけた。山で美しい羊飼いの娘と出会ったナムロン兄弟は、冗談を言い合い戯れ、嫉妬など存在しない牧歌的な3人の生活を始める。いつも悲しげな表情ばかり浮かべているファリーナは、中尉からもらった紀元前7世紀のギリシャの詩集で愛を読みふけり、実際の恋を知る。相手は自分たちを相手にしていた娼婦のヴァシリサ。彼女のもとに通おうとしないファリーナは、タフで美しい彼女を女性として純粋に愛するようになっていた。あの暴力的な軍曹でさえ、次第に軍人魂が抜けてきた。

すっかり島の生活に馴染んでしまった8人。ある時、船でやってきたトルコ人を見て慌てるものの、彼の薦めるハシシを堪能した挙句、眠りこけてライフルや時計など全てを盗まれてしまう。浜辺でサッカーに興じていた時、突然現れた爆撃機に逃げ惑う一幕も。しかし、陸上したパイロットから聞いた戦況は驚くべきものだった。ムッソリーニは倒れて祖国は二分されていた。南は英米軍が、北はドイツ軍とファシストが占領し、内戦状態にあった。すでに彼らがこの島に来てから3年の月日が経っていたのだ。やがてファリーナはヴァシリサに愛を告白して2人は結婚する。コラサンティは軍曹への思いを打ち明ける。ストラッツボスコも人間の女性に恋をしていた。それぞれが、この世とは思えない夢のような暮らしにつかり切っていた。

しかし、ある日その夢が目覚める時が来る。イギリス軍の船がやってきたのだ。そこには捕虜の身から解放された島の若者たちが乗っていた。同時にそれは、モンティーニ8人がイタリアに送り返されることを意味していた。イギリス人の呆れた、蔑むような視線を感じながらも、祖国際再建の希望に燃える軍曹を始め彼らは島を後にすることになった。ストラツァボスコはイギリス人に泣き付き、軍規を破ってロバを乗船させることに成功した。しかし、当日ファリーナの姿が見えない。探しに行ったロルッソ軍曹は樽の中に隠れているファリーナを見つけるが、その心情を思いやって見逃してやる。何十年かが経った。島の港に1人の白髪の老人が降りちゃった。人生の黄昏を迎えたモンティーニだった。彼はファリーナを尋ねる。

すでにヴァシリサはこの世を去っていたが、彼の顔には自分の一生に満足しているものの穏やかさがあった。ファリーナはモンティーニに合わせたい人がいると言う。老いているもののそのがっしりした大きな体はロルッソその人だった。祖国再建の夢破れた彼もまた、いつしかこの島に戻っていたのだ…とがっつり説明するとこんな感じで、チャーミングなおとぎ話の傑作である。暖かくユーモラスな映画で観た人は満足して元気が出る内容である。スタッフ、キャストのアンサンブルが見事に集結したイタリア映画だ。ところでイタリア兵が乗ってきた軍艦の名がガリバルディであるのもなかなか面白い。ジュゼッペ・ガリバルディはイタリア統一の国民的英雄であるし、ギリシャを支配するべくこの小島にやってきたガリバルディ号が、何者かの手によってあえなく撃沈してしまうのも、何かしら暗示的である。

ストラツァボスコが愛するロバを誤って射殺された後に、島で見つけたロバにその名前を与えていた。これは監督による皮肉で滑稽な演出だろう。多分この映画はアメリカでアカデミー賞を受賞した理由は、とことん優しくて美しい映画だからだと思う。8人の兵隊と住民たち両方ともとにかく優しくて、地中海気質とも言うような小さな島で過酷で悲惨な第二次世界大戦を最も幸福に過ごした人物たちと言える。こーゆー映画は日本人は結構好きだと思う。ところで「エーゲ海の天使」と言うタイトルのエーゲは、実際この映画のタイトルを見ると地中海になっている。そこは突っ込まなくていいのだろうか(笑)。確か映画評論家の品田雄吉氏は、心温かく、心優しい佳編と絶賛していた。

ところで、自分はイタリア映画はちろん大好きで、ネオレアリズムの時代からいろいろな作品を見てきたから、やはりロッセリーニに始まり、オルミ、ヴィスコンティ、ジェルミ、フェリーニ、デ・シーカ、アントニオーニ、フェレーリと優れた映画作家の作品を見てきたが、70年代から80年代にかけては徐々にイタリア映画も衰退してきたと思う。そういった中に現れた新しい波イタリアン・ニューシネマの変化を遂げた最大の作品は、やはりトルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」であって、アカデミー賞を受賞し、その2年後に本作がまたアカデミー賞を受賞したのだ(イタリア作品で)。やはりこの時代(90年代)の新時代のイタリア映画を担うイタリア人監督は、パルムドールを受賞した「息子の部屋」(既にレビュー済み)のナンニ・モレッティ(ちなみに息子の部屋は今年の7月にBD化されている)。

傑作にもかかわらず未だにVHSしかなく残念なカンヌ映画祭特別審査員賞グランプリを受賞したジャンニ・アメリオ監督の「小さな旅人」(既にレビュー済み)やダニエル・ルケッティ監督の「イタリア不思議旅」など当時30代から40代の若い監督たちの活動に、プロデューサーたちも目を向け始めていたのは承知の通りだ。若い監督志願者が書いた脚本を他の監督が取り上げて完成させたり、作家同士の交流で様々なチャンスを増やす試みも行われて、イタリア映画はこれから面白くなっていくと言う風潮が湧いた時代だ。とりわけ「エーゲ海の天使」では、冒頭と終盤のエンディングで今逃げている人たちへ捧げるとなっているが、これは理想主義が盛んに叫ばれた60年代に青春をおくった監督が、根本的な問題を提示した60年代と70年代の政治的な活動やドラックに汚染された時代を通して、政治に背を向けてしまい、自分の身を守るために逃避を選んだと言う監督のその時の人生が組み込まれているような感じがする。


さてここからは印象的だった場面を話していきたいと思う。冒頭25分までは8人の兵士たちの戯れが静かなコントラストで描かれるが、26分後から子供たちが1人の兵士を起こして、この島に人がいると言うことで、彼ら全員が洗濯物を手で避けた瞬間に大人たちがたくさん現れ、そこに村が登場したかのごとく多くの人々が出迎えるのである。その紺碧の美しい海を背景に女性ばかりが戯れているショットは印象的であるのと真夜中に謝って殺されてしまったロバを愛していた男性が島にいたロバを夜な夜な見かけるシーンもなんだか素敵である。その場面はすごく幻想的であった。2001年にディカプリオ主演のダニー・ボイル監督の「ザ・ビーチ」と言うサスペンスフルな楽園映画があるのだが、サスペンスを抜いた感じの映画である。

監督は夢について描きたかったと言っていて、男たちが戦争にとられてギリシャ領の小島で、牧歌的で人間らしい生活を送っている女や老人、子供たち。ある時、この島にイタリア人兵士8人が派遣されてきて、それまでの日常から解き放たれて、島のゆったりとしたリズムの中で暮らすと言うたわいもない作品は凄く好きであり、エーゲ海の美しい風景と独特の流れる時間、無垢な島の人々、美しい羊飼いの娘など、彼女たちを取り巻く男たちの内なる清らかな人間性もまたタイトルの天使のごとくである。正に夢を描いて幸せな気分にしてくれる映画だろう。夢であるからこそ、ウィットに富んだユーモアと風刺のきいた作品はリアリティよりもファンタジーを感じさせるのだ。イタリア映画の伝統を引き継ぎながら、イージーな雰囲気も醸し出す。

やはりこの映画はロケーションによる美しい映像とリアリティのライフスタイルがとても良いのだ。戦争の不条理をより際立たせているこの島の牧歌的な日常生活は、リゾート気分さながらの時もあれば、戦時中の緊張感に満ちた日もある。ロケ地となったドデカネス諸島にある島にはホテルが一軒だけでレストランもないため、総勢45人の撮影クルーを迎えるにあたって、島あげての大騒ぎになったそうだ。中には漁師の家に寝泊まりしていたスタッフもいたりしたらしく、日中は40度を超える暑さで、重装備の軍服を着て演技しなければならなかった役者たちは、過酷な経験をしたと言っていた。この映画の画期的なところは、戦時中にこのようなことが起こっていると言うことだ。捕虜になって収容所で陽気なラテン気質のイタリア兵が戯れているのではなく、あくまでも戦時中の真っ只中でこのようなドンチャン騒ぎになっているのだから驚くのである。しかも3年…。

そもそもズッコケ3人組じゃないが、ズッコケ8人組と言っていいほどの狼狽ぶりが笑えるのだ。仲間のロバは殺してしまうし、危うく仲間に殺されそうになるし、島に到着して敵などがいないか察知するのに時間はかかるし、ビクビクしているはドキドキしているはいざこざは起こすは喧嘩っぱやいは怒鳴るわで何もまとまっていないのだ。こんなのが戦場に出てきた瞬間殺されるのがオチである。要するにこいつらはプロではなく、ど素人のような兵士たちなのだ。そんな彼らがのんびりとできてしまうような楽園へとたどり着いてしまい、プロは血なまぐさい戦場で戦っていると言う不条理が既に起こっているのだ。 もし日本兵がこの島にたどりついたら本能的にリゾート気分を味わったりは、このイタリア人たちのようにはしないだろうな…生真面目やから。長々とレビューしたが、この島に出てくる人間は非常に人間らしさを持っており、魅力的である。ゆっくりとした時間の中をほのぼのと8人の行方を見守りたい人にはオススメである。
Omizu
3.6
【第64回アカデミー賞 外国語映画賞受賞】
イタリア代表作品。ギリシャの孤島に取り残されたイタリア兵たちを描く作品。

戦時中が舞台でありながら戦闘シーンはほとんどなく、ギリシャの孤島での暮らしと人々との交流を中心に描く。

まあ気が抜けた作品、と言えなくもないのだが、なかなか楽しめた。尺も96分とちょうどよく、これ以上長かったらキツかった。

海の青さや夕暮れの赤が印象的な撮影、叙情的な音楽は素晴らしく、イタリア映画ながらギリシャという異国を叙情的に描き出している。

イタリア兵8人もそれぞれキャラがたっていて面白いし、展開も地味ながら独特のユーモアを交えているのがなかなか好感が持てる。

この年はこれといったライバルもなく(あえて言えばチャン・イーモウの『紅夢』か)、戦争ものに弱いアカデミー賞らしい選出とは言えるかもしれない。
4.4
満足する映画見たあとのほうがコミュ力あがることが判明した😔たとえ映画の話をしなくとも

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