【叙情派サスペンス】
のちに『アルゴ』でアカデミー賞を獲得する映画作家=ベン・アフレックのデビュー作。原作は『ミスティック・リバー』や『シャッター・アイランド』など闇のノワールを得意とする作家デニス・ルヘイン。
これはルヘインの原作小説『愛しき者はすべて去りゆく』(ハヤカワ書房から出版)を予め読んでから鑑賞した。私立探偵パトリック&アンジーのコンビが難事件を解決していく複雑怪奇な探偵小説で、凝りに凝った設定+人間関係などが丹念に描出されている。
最終的にチョイ悪な私立探偵である主人公を弟のケイシー・アフレックに演じさせたのは明断だったと言える。ベンアフ本人が演じなくて良かった。かなりクリント・イーストウッドを意識した重厚且つ味わい深い画面造形で、ボストンに生きる人々の喜怒哀楽が淡々と純文学風に描かれるヒューマンなサスペンスとなっている。
ベン・アフレックは役者としては中途半端なスタンスでたまにイライラする俳優だと思っていたが、監督としてはこれとか『AIRエア』とか割と職人気質でコンスタントに良作を撮ってくれたら良いと思う。