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インボランタリー
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『インボランタリー』に投稿された感想・評価

benno
4.3
リューベン・オストルンド監督作品…《フレンチアルプスで〰︎》で興味を持ったので…立て続けに2作品目です。

結果…あぁ〰︎面白かったぁ〰︎!!

《フレンチアルプスで〰︎》よりも辛辣且つハネケに近いです…興味深い人間観察の中で、どんな人間も他者からの見えない圧力の呪縛から逃れられない…

インボランタリー … 《不本意な》状況に陥る様子を5つのエピソードを交錯させながら描きます…。


① 誕生日パーティ、庭で花火に興じる人々…突然のロケット花火の爆発で目を負傷するその家の主人…。

② セクシーポーズでキャッキャ…自撮りを楽しむ今時の10代の少女たち…電車の中ではお酒を呷り、ひとりの青年に絡みます…危ない、危ないს

③ 仲間同士でふざけ合う若者たち…羽目を外し過ぎて同性によるレイプとも言える事態にエスカレート…。

④ある小学校で、同僚の体罰を目撃した女性教師…正義を訴えるが、逆に煙たがられ周りからは無視…おまけに上司からも謝罪を要求される羽目に…。

⑤ 長距離バスツアーで休憩中にバスのトイレのカーテンが壊されます…犯人が名乗り出るまでバスを出発させないと宣言する運転手…。



実にカメラワークが絶妙で魅せ方が上手い!! 背中越しや故意に顔をフレームアウトさせたショットを多用…個人を判別出来なくすることで匿名性を高める映像は誰にでも起こり得る普遍性を表現し居心地の悪いゾワゾワ感を醸し出します。

ただ⑤に限っては観る側だけが知り得る犯人…犯人だけをさり気なく捉えるカメラ…否応なしにその人物に釘付けです…実に巧妙!!

また、面白かったのは④の女性教師の授業風景…ひとりの生徒に長さの違う2本の線が描かれたパネルを見せ、どちらが長いか答えさせます。

実は事前にその生徒以外のクラスの皆と先生は結託…生徒が選んだ答えの逆を指摘するように企みます…。

その生徒は明らに長い線を答えますが…クラスの皆はその反対の線を答えます…そして、それを繰り返すことによって…その生徒は皆んなの圧力に屈し、しばらく考えあぐねた末、自分の考えとは逆の答えを選択せざるを得なくなるのです…

   どうしてそれを選んだの??
      皆が選ぶと思ったから…

…所謂、同調圧力です…。



考えてみれば…世の中インボランタリーな出来事ばかり…正義感も萎えてしまうような圧倒的な外圧…改めて人間の心理を深く考えさせられました…ෆ*
[スウェーデン、仲間がいれば怖くない?] 60点

祝パルムドール!リューベン・オストルンド長編二作目。娘の誕生パーティで庭にセットした花火が不発となり、それを覗き込んだ瞬間に父親の顔に直撃するという、いかにもオストルンドな厭らしい長回しが冒頭にあってブチ上がる。物語はそのパーティを含めた5つの物語を交互に語っていく。本作品の最も象徴的な場面は、ある授業風景だろう。一人の生徒が教師の出す二本の棒が描かれた画像を見て、そのどちらが長いかを答えるだけなのだが、残りの生徒は明らかに短い方を"長い"と答えるように決めておく。すると、生徒は他の生徒の意見に屈して、短い方を長いとして選ぶのだ。他の場面でもその同調圧力が強調されている。この授業を行った女性教師は別の教師が生徒を殴るところを見ていたが、他の教師はことを荒立てないよう黙り、女性教師にも沈黙を強いる。運転中に若い女性ガイドとおしゃべりに興じるバス運転手は、バスのトイレのカーテンレールが壊れているのを見て、犯人が名乗り出るまで運転を中止する。撮り方は前作『The Guitar Mongoloid』に似てワンシーンワンショットだが、人間の顔が切れるような画角のショットやこちらを向いてないショットなど、個人が判別できないショットが多く、同調圧力の匿名性を上手く映像として表現している。確かに居心地の悪い瞬間は訪れるんだが、それらを分断して並べたことで尾を引かないようになってしまい、全体的な印象も薄くなってしまっているのが難点。人を特定しなさすぎて、どの物語なのか判別しにくかったのもあまり良くなかったのかと。
『集団の空気』は、人間の判断や行動をどれほど支配するのか??
リューベン・オストルンド初期作。
5つのエピソードを通して、“空気に飲み込まれていく人々”の滑稽さと恐ろしさを描いた群像劇。


☆ある家庭
『壊したくないパーティーの空気』

娘の誕生日パーティー。次々と訪れるゲストをもてなす両親。
夜になり、余興として準備した花火を庭で打ち上げる。 
「ローラ、誕生日おめでとう!」
「ウェーイ!!」
娘のために張り切る父・ウィルマーは、最後の花火に火をつける。
「危ないから気をつけて!」
「大丈夫、大丈夫!」
   
  --プスン…

だが花火は、不穏な静寂を残したまま不発に終わる。
「…残念だったな。まぁ来年、孫たちがなんとかしてくれるよ…」
微妙な空気になり、このままじゃ終われないとばかりに花火へ近づくウィルマー。
「ちょ、酔っ払ってんだから危ないてぇ!近づきすぎぃ!」

花火を覗き込む。その瞬間…
  
   --バシィン!!

花火が顔面に直撃、暴発する。
「大丈夫?!」
「ギャァァー」

《バスルーム》
片目に大怪我を負ったウィルマー。
娘が、医療ホットラインに電話しようとするも、「花火が直撃したなんて言ったら、病院に来いと言われる(=パーティーが台無しになる)」と母が止める。

応急措置だけを済ませ、空気を壊さないよう平然を装うウィルマー。
周囲もまた、その異常事態に気づきながらも、見てみぬふりをする。

痛みに耐えながら、パーティーを乗り切るウィルマー。だが…。


☆あるバスツアー
『プライドと沈黙、保身のシワ寄せ』

最近、人生で最悪な出来事を経験したばかりのバスの運転手。

「大変だった…2週間前のことだ。仕事から帰ると、家はほとんど空っぽで…キッチンで妻からのメモを見つけた」
妻が浮気をし、子どもを連れて家を出ていったのだ。 
「ただただ泣き続け、一週間は寝たきりだった。幸運なことに兄が近くに住んでいて…だから兄の家で過ごすことにした。一週間が過ぎ、私は立ち直り…そして、2週間経った今、ここに居る」
運転手は、19歳のバスガイド相手に、延々と身の上話を聞かせ続ける。

「君は別れを告げる時、手紙だけで済ませられるか?」
「いや、できないっス…」
「だよな…理解できん。8年も一緒にいたのに…手紙だけ残すなんて…」
そう言って、妻が残したメモを見せる。
「最後の文、意味が全くわからなくて…。君、女の子だから、この意味、わかるか?」
女だからわかるだろという雑な発想で、謎のメッセージを解読させようとする単細胞っぷり。
“んなの、わかるわけねぇだろ…”と対応に困るバスガイド。

一方その頃、車内では後部座席を占領したクソガキ集団が大騒ぎ。
迷惑極まりないが、誰一人として注意できない…。

《休憩所》
食事を終えた乗客たちはバスに戻る。
「ちゃんと食べました?隣の人は居ますか?全員揃いましたよね?え~出発の前に、運転手から一言あります」
バスガイドのアナウンス後、運転手が静かに話し始める。
「私は停車するたび、必ずバスの点検を行います。今日は、とても残念なことが起こりました。音楽をかけ、騒ぐのはかまわない。だが…バスを破損するのは許さない…」
運転手は、トイレのカーテンレールが壊れているのを発見していた。
「家でどうしてるか知らんが、私のバスにはルールがある!」
すると運転手は、犯人が名乗り出るまで出発しないと言い出し、エンジンを止め、バスから降りてしまう。
「アイツ正気か…」
「バカなんじゃね…」
車内はざわつくが、誰も止められない。

明らかに理不尽な状況。
だが、乗客たちは沈黙したまま、異様な我慢比べへと巻き込まれていく…。


☆ある小学校
『同調圧力とムラ社会』

「みんな、わかった?彼女を連れてくるね」
女性教師は、廊下で待機させていた一人の生徒を教室連れて来る。

「今から絵をいくつか見せるね!それぞれの絵には2本の線が描かれてあって…長いと思う方を指して!」
2本の線が描かれたボードを見せる。生徒は、当然のように長い方を指差す。
「合ってる?みんなはどう思う?」
するとクラスメイトたちは、もう片方の線の方が長いと答える。

女性教師は、二枚目のボードを見せる。
生徒は再び長い方を選ぶ。
だがクラスメイトたちは、またしても逆を答える。
「よ~く見て。どっちの線が長い?」
戸惑う生徒は、ついに短い方を選んでしまう。
すると、クラスメイトたちが笑い出す。
「あなたは、本当は他の方が長いと思った。だけど、こっちを選んだ。どうして?」
「みんながそうしてるから…」
「だよね。さあ、席に着いて」

《放課後》
女性教師は、同僚教師が生徒に体罰を加える場面を目撃する。

案の定、保護者から苦情が入る。「息子が血を流して帰って来た!どういうことですか?」
対応する副校長。
その様子を遠巻きに眺める職員たち。
だが、副校長と保護者が別室へ移動すると、職員室の空気は一変する。
「あの母親…いくつ?45?」
「50くらいにみえるけど…37。シングルで、アクセルの他に双子もいるのよ…」
「えっ、つらっ!」
「私、双子を2年間受け持ったけど、まあ酷かった…母親もヒステリーだし、白髪バリ増えたわ」
「先週もアクセルが問題起こして、母親に電話したら…」
「彼女、障がい者手当て受けてる?」
「仕事は医療関係じゃ…」
聞くに耐えかねた女性教師が、口を開く。
「母親の職業の話、今する必要ある?この学校で子どもが怪我した、その理由を突き止めるのが私たち教師の責任では?」
職員室は、静まり返る。
そして、体罰を加えた教師へ向き直る。
「ウルフ、廊下で何した?あなたのやったこと、私は見ていた。あれは一線を越えている!虐待よ!」
だが、周囲の反応は冷ややかで…
「…ちとカレンダー見せて」
返ってきたのは議論ではなく、露骨な話題反らしだった。

教師たちは、体罰そのものより、“波風を立てること”を嫌っている。
さらに暴力教師は、
『アクセルは、小さなテロリスト』『あれは罰ではなく、命令に従わなかったことへの叱責。男の子には必要!』
と体罰を正当化。
そして、なぜか問題を指摘した女性教師に謝罪を要求する。

こうして、女性教師は職員室の中で、孤立していく…。


☆野郎同士の悪ノリがエスカレート、なぜかチンポをしゃぶられ…
友人から性的被害を受ける男の話。

☆飲酒にセクシー自撮り、見知らぬ男にダル絡み…
危機管理能力ゼロの未成年ギャルの話。


「おかしい」とわかっちゃいる。
だが、場の空気に逆らえず、人は流されてしまう。
誰か一人が止めれば終わるはずの状況。だが、沈黙や遠慮によってどんどん悪化していく。その姿は、滑稽でありながら、底寒い恐怖を感じさせる。

この映画を象徴するのが、“棒の長さ”の実験シーン。
正しい答えがわかっているはずの生徒。
しかし、周囲のクラスメイトたちは、わざと間違った答えを選択するよう仕組まれている。
生徒の認識は次第に揺らぎ、自分の視覚よりも集団の意見を優先して誤った答えを選んでしまう。そこには集団心理の恐ろしさが凝縮されている。

そして、バスツアーの“カーテンレール破壊事件”
犯人は、かつて有名だった女優のおばはんw
だが、張り詰めた沈黙と足止め状態に耐えかねた男性が、自分の子どもが壊したことにして、うちの子が犯人だと名乗り出る。
結局すべては“子どもがやったこと”として片付けられ、バスは何事もなかったかのように発車する。
無実の子どもに罪を擦り付け、ようやく場の空気が動き出す…そのなんとも言えね理不尽さは、妙に現実的で恐ろしかった。

タイトルの“インボランタリー(不随意)”が示す通り、登場人物たちは、自分の意思ではなく、見えない空気に動かされている。

各エピソードを、シュールな不条理ギャグとして描きつつ、最後にゾッとする心理ホラーへ着地させる構成がお見事。
まるで「自分ならどうする?」と試されるような、嫌〜な後味の作品でした。

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