はじめてのキム・ギドク。

良かった。

売春とか殺人とか、心が痛くなる要素を詰め合わせながらも、ラストシーンには愛を感じた。賛否両論あるらしいけど、あの終わらせ方は素晴らしいと思う。

高1くらいのジェヨンとヨジンがヨーロッパ旅行に行くために売春をする。ヨジンが古いSNSみたいなので相手を探してお金を管理し、実際に体を売るのはジェヨン。ある日警察がホテルに突然押しかけてきてジェヨンは窓から飛びおり死亡。そこからヨジンの父親も話に入ってきて一気にテンポが増す。

ネタバレ入るかも↓

家族がいながらも簡単に売春に手を染める大人の闇の部分と、復讐という目的のためなら簡単に一線を超えてしまう善良な人間。ジェヨンのため、と、娘のため、の二つの願いが交錯した挙句の言葉を失う結末。

きっとお父さんは娘のことを思い石に黄色の塗料を塗ったのだろう。家にちゃんと帰れるようにと願って。

ジムノペディが流れる映画は必ず誰か死ぬ。

　懐かしいチャットの画面で見ず知らずの男性に語り掛ける2人の少女は、互いを偽装している。女子高生ヨジン（カク・チミン）はもう一人のジェヨン（ソ・ミンジョン）のフリをして男に語りかけるが、実際にカラダを売るのはジェヨンである。モーテルの外、男と建物の中に消えて行くジェヨンの背中をヨジンは少し離れたところから見守るだけだ。その代わり、スケジュール帳や巻き上げたお金は全てヨジンが管理する。母親は既にこの世にはおらず、刑事の父と二人暮らしのヨジンには、彼女の死をも恐れないような大胆さに惹かれていた。ある日、いつものようにカラダを売りに出掛けた先で警察のがさ入れに遭ったジェヨンは、微笑みながら2階から躊躇なく飛び降りる。ヨジンは彼女の命の危機を誰かに知らせようと思い立つが、信じられないことに知らせる先がわからない。2人は親友同士だったにも関わらず、互いの家族や背景を話さないまま、打ち解けていったのだから。

　少女は亡くなっていった少女への後悔や罪悪感を隠そうとしない。年端も行かない若者が死ぬのだから、この世に思い残した後悔は幾何だろう。モーテルの窓をぼんやりと眺めながら、事が終わるのをただひたすら待った少女は、手帳を使ってジェヨンの客と再会するばかりか、彼らと次々に汚れた逢瀬を重ねて行く。少女は男の身体や仕草に、ジェヨンの思い出を投影する。ヨーロッパ旅行に貯めていたお金もそっくりそのまま彼らに返すことで、彼女は親友の想いに応えようとする。インドのパスミルダに自らを重ね合わせる少女の奇行はやがて彼の父親の知るところとなる。映画はジェヨンの死から徐々に苛烈さを極める。法令順守の意識にひたすら忠実であるはずの父親の粗暴さは徐々にエスカレートし、超えてはいけないラインをあっさりと超えるのだ。

　父親と娘の唯一の会話の時間は、高校への送り迎えの時間だけだった。聖母マリアやマザー・テレサの話はすべて、母性の不在という深刻さを物語る。親友や母親には話せても、異性である父親に告げることの出来ない深刻な悩みが父娘の間に横たわり、父親は娘を断罪すべきなのに全てが春を買う男性へと向かう。高2の娘を持つ男の欺瞞を暴いた時、告発する側もされる側も共に恥じるべき自らの汚れた血を呪い狂う。父親の汚れた手、そして娘の穢れた身体、物語は苦悩と罪悪感を抱えた2人を母親の墓前へと向かわせる。娘が助手席で見た夢を、父親は何度実践しようと試みただろうか？片側を黄色に塗りたくられた石は彼女に一切の道筋を与えず、水たまりを避けようとして沼地に足を搦め取られる。ただただ父性の無力さだけがそこに横たわっている。

• #追悼キム・ギドク
• #1960-2020

映画思い出し鑑賞記憶Vol.171

本作はかめさんのレビュークリップ✨ありがとうございます☺️

これは昔、気軽に見始めて衝撃的な展開で本当に辛かった。絶望感の果て。何を求めるの？　女子高生2人と売春とその残酷な行方。それを知った怒りと哀しみの父の魂の彷徨。宗教的な人間の業と贖罪と輪廻。キムキドク恐ろしい。。

再見したい度50%
キムキドクの映画を観るにはかなりの覚悟が入ります。私は春夏秋冬そして春が好き。