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リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白

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『リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』に投稿された感想・評価

【もうみんないないだろう。貴重】

みんな、あまり感情の起伏も見せずに、ものすごい話をさらっとする。無意味な惨殺はデフォルトで731、強姦、子殺し、生体解剖、さらに人肉食……。撮影時点で戦後55年、そして中帰連が戻ってきてからも45年ほど。そりゃ、話慣れているのだろう。みなさん80歳以上だから、ご存命の方はほぼいないに違いない。
話してる方はフラットでも、聞いてる方にしてというみりゃ「え、それ言っちゃうの?」というものすごい話ばかり。また理由がひどい。「やらないとなめられる」「仲間はずれになる」「むかついた」。聞きながら考えるのは「嗚呼、おれもそこにいたら同じことをするだろうな」ということばかり。そしてきっと、自分は仕方がないとか、命令されたとか言い訳しながら、のちに証言したりするのだろう。生き残れば。
なにをさておいても、戦争には行きたくない。子どもにだって行かせたくない。日本に戦争を起こしてほしくない。逆戻りは簡単だから。個人に強いられた行動だけど、個人には止められない。だからはじめからこんなことを強いられないようにしないといけない。
残虐なのは日本人だから、ということでもないだろう。独ソ戦はもちろん、戦争や戦闘での残虐行為は歴史的にみても枚挙に暇がない。つまり、これは人間の本性の一部なのだ。
だから、笑いながら、また無表情に、残虐行為を語る元日本兵には、帰国後の人生の厳しさを思うにつけても、ある程度の感謝とある程度の無念さは感じるが、安易に腹をたてる気にはならない(ただしこの映画を中国人が見たら、とんでもなく腹がたつだろうな)。
映画としてはスーパー単調。人はどんなものすごい話を聞いていても、ショックを受けていても、眠くなるのがよくわかった。自己防衛か。だめだな人間(おれの問題を人間に広げてみた)。
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「被害の体験は語り易いが、加害の体験は語り難い。しかし加害体験こそが戦争の真実、人間の弱さと恐ろしさを明らかにし、再び過ちを繰り返さぬための歴史の教訓を伝える。」冒頭のことばを引用
『ショア』が語るのは戦争被害の歴史。一方で今作が語るのは戦争加害の歴史。知らなくてはならないことなので、鑑賞している。そして、知られるべきことが語られている。普通の人がどのように鬼畜の日本兵になってしまったのかという帰還兵のことばに、打ちのめされた。
これ以降殺人や強姦にかんする凄惨な記述があるので、閲覧に注意してください。

ことばが意識を変える
人がおかしくなるときに、真っ先におかしくなるものは、ことばである。以前『ショア』のレビューで、SSがユダヤ人の死体を「デク、ボロ切れ」と呼ぶようゾンダーコマンドに命令したことを書いたが、今作でも同じことが言われている。日本兵は中国人を「チャンコロ、マルタ」という蔑称で呼んだ。それは中国人を人間以下、虫ケラと規定することである。日本兵にとって中国人を殺害することは「マルタを(何本も)倒すこと」であり、競われるものであった。軍医にとって中国人は人体実験の「材料」であった。
日本兵が赤子を抱える母親に命乞いをされたときに、とっさに思ったことが以下の引用である。「チャンコロのくせに良い思いをしてガキを作った。だから焼き殺してしまえ。」また別の語り手は、病気の娘の命乞いをする両親にこのように言った。「なに、こんなやつらがえらそうに。」そしてどの語り手も「罪悪感がなかった」「悪いこととは思わなかった」と口にする。
関東軍による中国人の「厳重処分」、これは殺害を意味するのだが、ナチスによるユダヤ人問題の「最終解決」も同様である。明確なことばではないゆえに、それを悪いことだと思わなくなる。
自分はどのようにことばを使っているのだろうかと反省した。

戦争に行く/行かざるを得ない理由
「満州は金稼ぎ、チャンスだと思った。」『華氏911』において、戦争に差し出されるのは貧しい人間だということが述べられているが、これと同じ構図である。
徴兵を内心嫌がっていたという教師は、徴兵忌避によってその家族が、非国民として除け者にされるために行かざるを得なかったことを述べた。また彼の生徒たちが出征時に見送りにきたことで、子どもたちのために戦うことが平和を招来するのだと死を覚悟したという。

不条理ないじめ(上下関係の叩き込み)
兵士は入隊後一週間は、お客様として扱われる。しかしそれ以降は、理不尽な理由(いいがかり)による暴力で徹底的に上下関係を叩き込まれる。例えば銃の手入れが悪い、掃除されていない、態度が悪いと、手ではなく鋲のついた靴で往復ビンタを食らう。新入り同士で殴りあうよう上官が指示し、それを拒否すると靴で殴られる。すると、殴られた新入りは痛みで別の新入りを殴る。セミが来たという理由で殴られることもあったそうだ。
他にも女郎の真似をさせることで自尊心を砕く「お女郎さん」や、非常に長い軍人勅諭の暗唱などを強制させられる。それに反抗しようとするが「お前は前科者になり、親が悲しむ」と言い返され何もできない。先ほど徴兵忌避によって、家族が非国民扱いされることを述べたが、儒教的思想の根強さと、それを弱みとして利用する意図がうかがえる。
日本兵が行っていた不条理な言いがかりやいじめは、中国人をろくに取り調べもしないで検挙し、殺害した態度にも通じる。

殺害への心的脆弱性とその克服
たとえ「チャンコロ」相手だとしても、初めて殺すことはためらわれる行為である。それでは日本兵たちはどのようにためらいを克服したのだろうか。
彼らは殺人の手段として多くは実的刺突、すなわち銃剣による刺殺を行った。木にくくりつけた中国人(みぐるみをはがされた婦人もあったという)に向かって10mほど走り、剣を突き刺すという。日本兵は恐怖に手が滑り、剣を刺すことができない。するとその上官が暴力をふるい、中国人が死ぬまで何度もやらされる。また「腰抜け」「意気地なし」となじられ続ける。やっとの思いで殺すと「おめでとう、これで一人前になった」と褒められる。息絶えた中国人の死体には竹やりが突き立てられ、冒涜されている。
ここで重要なことは、殺人は非道であるという意識を、殺人を強制することで徐々に変えさせるということだろう。中国人は人ではないから殺してもよい。殺さないなら痛い目にあわせてやる。殺さないお前は劣っている。殺すお前は一人前であり、誇らしい。
殺害ができるようになると徐々に、殺人が面白くなってくるという。興味で殺したり、競争で殺人ができるようになるという。そもそも軍隊とは「犯罪で出世するもの」なのだと語られていた。たとえ良心の呵責を感じても「戦争に非道はつきもの」や「これは俺がやったんじゃなく命令だ」として自分事として捉えなくなってしまう。
cf:殺せない人を「腰抜け」となじる点で、ナチスの銃殺と共通している『普通の人びと』p. 120参考
以下個人的に堪えたことば。「わたくしもね、カントの実践理性論の…読んでました。人格主義ということで、ヒューマニストのつもりでいたのですよ。こんなことが許されるのだろうかという思いがよぎったのですが、ヘマなやっちゃダメだと、要するに模範の通りやればいいだろうと自分に言い返して、現場行ってその通りにやったら簡単に首切り落とした。その瞬間、下っ腹にズシンと、なにか自信めいたものがわいたのです。」
cf: 実感、達成感が喜びに変わる→「終わったあと、しばらくは放心状態だったのですが、正気にもどると『ああ、おれもとうとう人を殺してしまった。おれも人を殺せるんだ』と思いました。」『私は「蟻の兵隊」だった』p. 23

全体主義と仲間外れ
これまで日本兵による上下関係の叩き込みが集団内の上下関係を強固にすることや、中国人を殺せない日本兵に「腰抜け」となじることにより、彼が集団内で劣っていることを示すと述べた。ここで見えてくるのは、圧倒的な全体主義とそれから外れてしまうことへの恐怖だ。
たとえば日本兵は中国人女性を強姦しないと仲間外れにされたという。だからみんなそうする。構図としては、集団のいじめとおなじである。あいつをバイキン扱いしないと、自分もバイキン扱いされる。
また人体実験では、看護婦は怖いという態度を示してはならず、生きたまま切り裂かれる中国人を見ながら笑っていたという。

嘘をついて殺害すること
それはナチスの殺害トリックと同じである(詳細はぷの『ショア』レビュー、どこへ行きどうなるのか分からせないことの欄を読んでみてください)。日本兵は「蔣介石とは違って仕事も給料も、食事も出します」と言い、農民の中から蒋介石の兵を引き出す。そうした人々をトラックで運び、日本刀で斬首する。
白状しない人たちに対しての拷問として、水責めを行い、焼き芋で皮膚を焼いた。

日本兵による民間人殺害、人肉食
中国人を捕まえたら全て捕虜として扱ったため、当然のように民間人殺害が行われていたという。「チャンコロ」は人間でないためだ。そして三光作戦(焼き尽くす、奪い尽くす、殺し尽くす)のなか「中国人をたくさん殺すことが、天皇に対する忠義であり、名誉だった」という。戦争は人を人でなくしてしまう。
民間人の住む家に火のついたコーリャンを投げ込んで入り口の扉を閉める。地雷探知機の前を歩かせる。食料をとりあげて、それだけは勘弁と追ってくる老婆を蹴飛ばし沼に放り投げる。「無住作戦」のもとに家に住まわせることを許さず殺害する。
「部落」において真っ先に目を付けられるのは中国人の女性だったという。民間人の女性を犯し、自分が達しそうになると射殺する。性行為を拒否した女性を井戸の中に落とし、後を追う子どもを一緒に手榴弾で殺害する。食料がないなか、犯した女性の肉を焼き、配給だと言って皆で食う。

アメリカによる人体実験のデータ利用
731部隊が実施した人体実験。敗戦後、石井四朗ら軍医幹部らが戦犯を免責されたのは、アメリカへの研究データ引き渡しの結果である。

日本に強制連行された中国人
日本が敗戦の色を濃くした頃、労働力として3万人もの中国人が日本に強制連行された。彼らは強制収容され、食料も水も与えられず、家畜小屋に閉じ込め殺されたという。初めて知った。

戦後中国による人道的配慮
中国は戦後「戦犯も人間である」として、勾留した日本兵たちに対して決して暴力を振るわず、十分な食事を与え教育するなど人道的支援を尽くした。彼らは裁かれたものの、中国人民への謝罪を行い、誰一人として死刑や無期懲役はなく釈放されている。しかし日本に帰国すると「中共帰りの洗脳組」という偏見を受け、就職差別を受け、ようやくありつけた牛乳配達の仕事でも牛乳を受け取ってもらえなかったという。帰還者が自身の加害体験の書籍を発表すると、パートナーに「(ただでさえも差別されているのに)なぜ自分の恥になるようなことを言わなければならないのか」と叱責されたという。帰還した兵士のほとんどは自らの加害体験について口を閉ざしている。
中国による人道的配慮を初めて知った。寛大な決断だ。死刑廃止や社会復帰などの人道的配慮について、これから知らなければならないと思う。

個人的に日本兵の非道な行いが描かれた『紅いコーリャン』や『鬼が来た!』に対する評価が変化した。というのも後者において、正直に言うとやりすぎ感が否めなかったからだ。改めて考えると、花屋のふるまいの変化が圧倒的な全体主義と集団からの村八分に対する恐怖、中国人への侮蔑によるものなのだと納得がいく。
どちらも反日映画と揶揄されることがあるが、日本兵による加害の証言を知ると、日本兵の非道なふるまいは描いても描ききれないのだと思う。
また反日映画という枠組みだけで考えてしまうと、それは事実を隠蔽してしまうことにもなる。反日映画という心的抵抗だけで判断するのは、日本人にとって不都合な真実を直視したくないだけなのではないか。

ただただ絶句で言葉も無い……
色んな情報媒体で、ある程度の中国で戦争中の日本軍を知ってはいたけど……
恐らく今までこれほど真実味を帯びた物は後にも先にも無いだろう……実際の元兵士達の吐き気がするような行為から心底悲しくなる事まで……証言の数々……

一番驚いたのはそんな戦犯な彼らが終戦後の中国で拘束され裁判で死刑ではなく懲役を受けて釈放……赦すという中国の対応が凄くて……今の反日感情とは、かけ離れている理念が当時にはあったということ……

映画と言うエンターテイメントとはかけ離れ過ぎていて……ただただ歴史の証言フィルムって感じ……かなりドン引きな作品

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