好きだ。
この86分間に起こっているドラマのスケールを考えると身震いする。リアリティをまるで損なうこともなくこのダイナミズム。
脚本家としての潔さにも好感。観客を楽しませるのに男一人車一台、あとは電話>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
史実としての出来事やその実話らしさを担保にしてるこの手の作品に、どこかで空々しさを感じてしまうのは、多くの場合、その再現性の問題というより、公平性の問題であると思う。距離感といってもいい。
差別を逃>>続きを読む
ショーンペンもミシェルファイファーもダコタファニングもとても好きだが、これを観て涙してハッピーエンドに安堵してるだけの人間にはなりたくない。
障害と認定されようがされまいが、サムよりもはるかにバカで愚>>続きを読む
どことなくカウリスマキ風ではありながら、無難なやさしさ、悪く言えば厚かましい同情心みたいなものが漏れてしまっているせいで、作品としての強度に欠ける。
つまらなくはないけど、孤独死を扱うには軽くないか?
中高時代の一時期まさしく「豆と人参」のようだった太っちょはいつも『フォレスト・ガンプ』が一番好きな映画だと言っていた。影響か知らんが高校でも大学でもアメフトやってた彼に久しく会ってない。今頃どこで何し>>続きを読む
レオーネにしては意外と湿っぽい。爆破シーンの豪胆さとのギャップに萌える。
これはある意味すごい。
悪趣味と趣味が悪いのとではまるで違う。物語の稚拙さと平板なキャラクターが気になって、奥行のない映像を楽しむどころではなかった。
性転換してホルモンバランスとか諸々、文字通り別>>続きを読む
こちらもまた廉価版DVD。
近隣の自死にあやかって大家にたかり、酒盛りどんちゃん騒ぎに興じる長屋の男どもはたくましいけれど、女性陣はドン引き。そこら辺からもう既に不穏でもの悲しい。
以降作品全体が重>>続きを読む
学生時代はなんだか物凄く苦労して観たのだが、気付けば廉価DVDが発売されていた。
江戸の世俗に生きる庶民の活劇なのだけど、百萬両というとんでもない記号を軸に、色んな価値の転倒が起きる。一言で済ませ>>続きを読む
こちらも500円DVDで久々に。
憧憬と不信の二律背反みたいな今日氾濫しつくしたストーリーのさしずめプロトタイプのような。相変わらず即物的な真相にほとんど興味を示すことなく、心理の表象ばかりに引き>>続きを読む
修士卒論書いてた時期以来の鑑賞。あの頃は寝ても覚めてもヒッチコック漬けの日々だった。
警察も物語も物事の黒幕に迫っていく気がまるで無いという不条理サスペンス。76分の尺において結局は小市民ばかりが犠>>続きを読む
多分二回目。
セリフの戦闘力がいちいち高い。現代に生きる人間がおいそれと思いつくものではない。
しかしいくらなんでも生きていくのがハードモード過ぎる。反面フォードは人をあっさり殺す。センチに浸る暇>>続きを読む
ひとりの人間にも多面的な性格があるみたいなもっともらしい妄言はやめて、彼女について皆が同じことを思っているのにそれが同じ人間のことだとは思いもよらず、たとえそうだとわかっても結局彼女について誰しもが人>>続きを読む
クラシックとしてはかなりの長尺に伝記物の重みあり。軍人の物語の割に戦闘シーンは驚くほどあっさりしていて、カスター将軍の型破りで憎めない人物像の描写に比重を置いている。
結構話のわかるスー族酋長や、やた>>続きを読む
マーベルの大作映画においては、狂気といって差し支えない凄まじい全体のバランス。
数年ぶりに鑑賞。好きだ。
軌道なき家族映画。祖母が倒れ、「母」を失った3人がそれぞれの初恋と対峙しながら、互いにまるで干渉し合わないのが潔い。運命や縁なんてロマンチックな言葉とはかけ離れたところにあ>>続きを読む
5時から7時へ。白から黒へ。絶望から希望へ。
永遠に終わらないかのように思われる真昼の喧騒にもやがて黄昏のときが来て、誰しもに夜の静けさと安らぎはきっと約束されているのだ。気づけばまた朝が来るのだが。>>続きを読む
ゼロ・グラビティ以降の宇宙飛行士モノとしては特に目新しいものは発見できず。サバイバルものも最近はなんか食傷気味で。いっそ沖田監督の『南極料理人』くらい振り切ってたらまた面白かったと思うんだけど、それに>>続きを読む
数年ぶりに鑑賞。
こんな後味だったか?
一過性の思春期から、その後延々と引きずるポスト思春期への痛烈かつ華麗なる逆照射に、胸が焦げる。
未完成の身体が織りなす一心不乱の踊りに、生まれてから死ぬまでの>>続きを読む
何度見ても、ジャン=ピエール・レオーのスマートな躍動感には惚れ惚れする。
それこそ画面内所狭しと動き回り、周囲を振り落としかねないフルスロットルの思考を巡らしているが、しかし何者でもない。
レーサーで>>続きを読む
表情の見えない嗚咽で、あるところのカタルシスまで到達しているのは、それまでの抑制された演出と全然聞き取れないセリフの賜物。
扉の使い方がショットの強さの分かれ道。ギリギリの勝負。
個人的な趣向として>>続きを読む
ダメなとこは色々あるのだけど、何より男(とりわけ主人公のような)にとって大変都合のいいヒロインだなあという印象が強い。
それでも若干浮つくような瞬間もあるから、自分も所詮男だなあと思うのか、あるいは夏>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
こんなものじゃない。
僕が『キャロル』に期待していたのはこんな程度のものじゃない。
キャロルが終始何かを漂わせながら、物語は彼女の母としての我が子への愛情を自明の理として流したがために、キャロルの選>>続きを読む
人と人の距離が、説明可能な「役割」みたいなものに回収されることを拒む、そういう豊かさが山下敦弘作品にはあるね。
最近の夏帆がほっとけないので、付き合った子の中学の卒アルをこっそり覗くような心持ちで見>>続きを読む
最高だなあ。
喉のあたりまで言葉が出かかってるんだけど、あと一歩のところで言語化できない。
好きな音があって、なんで好きなのかをちゃんと説明できないのに似てる。
すごく自由で、感覚的で、つまらない思い>>続きを読む
久々に再見。
初期ヌーヴェルヴァーグのイメージに反して、街頭シーンは少なく、全編通して室内劇に近い。かなり個性的なアパルトマンと華美な美術、乱痴気騒ぎをとらえる画面の圧倒的な密度は、黄金期のクラシック>>続きを読む
響くような響かないような。フランクというキャラクターのエッジに対して、ホン上のサスペンスに鋭さがない。まあ覆面音楽家なんてそもそもそんな斬新な設定でもないって言えばそれまでかも。
田舎のロッジでのセッ>>続きを読む
がっつり噛み合う偶然の歯車に運ばれるだけの物語は、ややもするとあざとくも見え。コンセプチュアルなのはいいんだけど、予定調和に映ればそれは陳腐化しかねない。
偶然や運命の流転、循環といった主題を映画に誠>>続きを読む
本当に山崎氏はVFXだけやってればいいのに。難しいのはわかる、わかるからこそ、演出は他人に任せる英断てのもあるんじゃないですか?
名だたる俳優陣が奇天烈演出で総崩れの中、深津絵里がひとりで気を吐いてい>>続きを読む
波打ち際に横たわる男の骸から始まって、滴る雨水、酌み交わす酒、そこかしこに一寸先の闇、主人公を手招きするような死のイメージがこびりつく。移動手段の映画でもある。
ユアン・マクレガーは実はかなり好きな俳>>続きを読む
カウリスマキが人間に向ける眼ざしは、理屈っぽくなく、全然こじらせてないところがいい。たび重なる不運にすんでのところで屈しないキャラクターたちの感傷が、建物や家具、飼い犬、映りこむ事物の数々に対して、僅>>続きを読む