美しきジーン・セバーグの魅力を再び堪能するために4Kレストア版を鑑賞。
ベリーショートなヘアスタイルにマリンボーダーのカットソーにプリーツスカート、スプリングコートのコーディネート。更にはボーダーのワンピースと本当に現代的でメチャクチャ素敵。
そんなジーン・セバーグ、プライベートでは公民権運動、ブラックパンサー党に関わるようになり、そのことでFBIに目をつけられ、人生をメチャクチャにされて、若くして亡くなってしまう。ただ、社会正義を熱心に擁護しただけだったのに。

「まったく最低だ」

「彼はなんていったの」

「あなたは本当に最低な女だと」

「最低だっていう意味が分からない」

このジャン=ポール・ベルモンドの死に様、ジーン・セバーグとのやりとりがとにかくカッコイイ。

そして今回「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」2作品レストア版のメチャクチャオシャレなポスターを入手出来たのが最大の収穫！ちゃんと部屋に飾ってますよ🤗

• #2022劇場とらキチ

この作品、前に観たのは2〜30年前(たしかレンタルビデオでした)で、あまりのオシャレさにかなりの衝撃を受けて、しばらくはポストカードを何種類か揃えて、部屋のインテリアにしていたワタクシ。

で、今回、劇場で観れるチャンス到来！ということで、久しぶりに鑑賞してみたところ、ところどころ覚えてはいたものの、こんなに覚えてないとは！と自分の記憶の無さにビックリ。
(前回観た「ディーバ」のレビューとほぼ同じ文章)
思っていたよりシンプルなストーリー(これって"ストーリー"と呼んでいいのかな？)でしたね。

いやはや、やりたい放題のベルモンドに、最初から最後まで、観ながらずっと心の中でツッコミっぱなし&笑いっぱなしで、ここまでめちゃくちゃな映画っていまだに無いんじゃない？と思っちゃいました。

ラストも最高で、観終わってからしばらくは興奮冷めやらず、例の"くちびるを親指でなぞる動き"を繰り返したのは言うまでもありません…。

【ワイシャツ】

レビューで、邦題タイトルが云々と批判めいたことを書くことはあるが、これは、オリジナル・タイトル（「息せき切って」）がかすむ名タイトルになった作品だ。

この「勝手にしやがれ」は前年公開のフランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」と並んで、ヌーヴェル・ヴァーグに道を開いた代表的な作品と言われている。

2022年9月にジャン=リュック・ゴダール監督が亡くなったことを追悼するリバイバル上映だったが、この作品は、たまに見返しても、なんか新鮮な気持ちで楽しめる大好きな作品だ。

ここには大作主義の映画作品とは異なる映画の素敵なあれやこれやがいっぱい詰まっているように思う。

冒頭の”B級作品映画会社モノグラム・ピクチャーズに捧ぐ”というのも膨大な資金を注ぎ込まずとも映画は制作できるという心意気のようにも思えるし、資金不足の映画会社に対する応援歌のようにも思えるし、大作主義に対する皮肉のようにも思える。

ヌーヴェルバーグは、即興演出や演技、そしてロケ中心の撮影などが大きな特徴として語られるが、この「勝手にしやがれ」は、それのみならず、多くの実験的な試みがなされている作品だ。

その代表はセリフだ。

感情や抑揚を抑え、表現は、時に象徴的、時に哲学的、時にレトリックを使い、そして、時には直接的で、どちらかというと、観るものの想像を掻き立てる舞台の台本のようでもある。

映画の名セリフにもなっていると思うが、
「望み！？不老不死を手に入れて死ぬことさ」
もそうだ。

自動車泥棒のフランス人男ミシェルと、駆け出しライターのアメリカ女パトリシア。

短い間の逃避行と、あのミシェルことジャンポールベルモンドの最後の表情からは想像できない本当は悲劇的であるはずの結末も、余計なスリルや感情を伴わず、観る側は、展開や登場人物の心の揺らぎに想像力を働かせなくてはならない。

「意味が分からない」
「最低って何？」

僕たち男女が言い争って、男が、最低だね…なんて言ったら、返って来そうな言葉だ笑

こんなふうに、セリフから読み解く感情にも楽しみがある作品だ。

ところで、パトリシアが、ホテルでミシェルのワイシャツを部屋着のように着ているのを見て、これを初めにやったのは「勝手にしやがれ」だったんじゃないかと改めて考えたりした。

僕が若い頃は、彼女が自分の部屋に遊びに来て、自分のワイシャツをパジャマや部屋着のように着るのは可愛いとかエロいとか、そんなことが話題になったことがあった笑