"私はコレでいいの…コレで満足…幸せ…"

そう思っていたエテロ…雑貨店を営む48歳、独身…

ブラックベリーを摘み、ブラックバードの囀りに聞き惚れていたその時…崖から落ちそうになり死にかけた時、エテロの心に何かが引っ掛かる…

そんな時に配達にやってきたムルマンと突発的に人生で初めて男性と肉体関係を持つ…

その経験を境に、エテロの運命がほんの少し変わっていく…

ジョージア人の作家であり、フェミニズム活動家のタムタ・メラシュヴィリによる小説を映画化した本作。

毒を吐きまくる茶飲み友達、女性同士のカップル、青い髪のロックな少女…本作には実に様々な女性たちが登場しますが、あくまでも自分を貫こうとするエテロの姿には感動すら覚えます。

穏やかで美しいジョージアの風景、ポップな調度品とは裏腹に、作品全体を包むオフビートな感覚は新鮮なのです。

男性で唯一登場してくるのが、エテロと思わぬ形で愛し合う事になるムルマン。

エテロが遅れてきた青春を謳歌するのに対して、孫までいるムルマンにとって、エテロは男として復権させてくれたミューズなのかもしれません。

遊びではなく本気で愛したムルマンの想いを冷静にぶった斬るエテロの姿勢が何となく痛快に感じましたが、ラストのびっくら展開に対するエテロの表情が実に秀逸なのです。

心は青春とは言え、身体は否応無しに中年から初老…エテロとムルマンの絡みは生々しく、人によっては鑑賞に耐えられないと思うところがあるやも知れませんが、コレもまた人間らしいのでは…

第19回（2024）大阪アジアン映画祭コンペティション作品。
カンヌ国際映画祭監督週間選出
3/9(土) 16:00　ABCホール 残席あり

ジョージア映画。48歳単身の女性に、とあるきっかけで人生の転機を迎える物語。非婚者が多い現代を投影した、また、女性映画でもある。
時に人生の転機は突然訪れ、年齢には関係なく、また、その年齢だからこそ感じるところもある。ブラックバードの鳴き声は、西欧では春の訪れを感じると言われているそうです。
2024年3月3日＠シネ・リーブル梅田＠大阪アジアン映画祭

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【これが私の生きる道】

ジョージア女性エテロ(48歳独身)のエロス。
生き方を自ら選ぶ強さ、それを他人に押し付けない姿勢が素晴らしい。

原作「Blackbird Blackbird Blackberry」は、ジョージアの作家タムタ・メラシュヴィリによるベストセラー小説らしいです。
二つ目のBlackbirdは、主人公そのもので、集団内の異質な存在を表しているように思います。
一つ目のBlackbirdとBlackberryは映画の冒頭に出てきます。
主人公を包み込み癒す、黒ツグミとブラックベリーという自然の象徴でしょう。
川の音と鳥のさえずりで映画がはじまり、主人公を落ち着かせる形で同じ自然の音で映画が終わることからも明らかでしょう。
自然音に癒され人生を肯定する前向きになれる映画です。

僕はこの映画を、岸野令子さん(映画パブリシスト)&住田明世さん(元町映画館理事)によるトーク付上映で観ました。
中年による真面目な恋愛映画とも、ブラックユーモア映画ともとれる本作。
日本語のタイトルでもある「私は私」、私の生きる道を自ら選んでいるけど、同じ村の女性たちにもそれなりに気配りしたり、世代の違う女の子とも対等に接したりする主人公への共感が語られていました。
それと、おそらく意味のある選曲がされていると思うのですけど、「歌詞が字幕翻訳されておらず残念だ」と観客の一人が言われていた意見は、僕も同感です。

最後に、PUFFYの曲に「これが私の生きる道」というのがありますけど、その歌詞に
｢悪いはね、ありがとね、これからも、よろしくね｣
というのがあって、この映画にピッタリです。