ちゃんと樹木のオマージュがあるあたり666号室を見といて良かったと思わせるが、こうも問題意識が変わるのかという感慨があるし、映画業界に良くも悪くも真人間が増えたなと思わせる。山師的な逸材が減ったというか…。
サービス満点なヴェンダース、そしてやたら芯のある話をする素敵なジェームズ・グレイに皆さん心奪われたことでしょう…。

これはもう我らがドゥニに包まれるのが全てというか、シンプルに号泣した。そういう世界に生きてるんだよー愛してる。それまで何の躊躇いもなく繰り出されるヴェンダースのスノビズムと老害感にあてられたり、スマホとかの映画制作技術を「新しい映画の”方言”」って呼ぶヨアヒムに励まされたり、「どんな巨匠も先達を越えられないと嘆いてたしトーキーやカラーやテレビの台頭のたびに映画は死んできたので映画は死がデフォルトであり本質」と動じないデプレシャンに親戚のおじさんみを感じたりしてたけど、ドゥニの2分くらいでわたしは生きていける。

でももちろん全員すごくよかった。どんなに意見が合わなくても楽しい。大好きな監督も二度と観るまいと思ってる監督も出てるけど全員いい。映画から除外してきた身体性に回帰するズロストヴスキ、思ったより身のこなしが軽いセレブレンニコフ、エリート主義上等なカンヌ的価値観とカンヌ的アーティストをボコボコに批判するサイバーグ、矛盾が美しいソレンティーノ、アフリカ系としての立ち位置の難しさを見せつつキラキラした野望を抱くアキングベード、どんな時もしっかり誠実に世界に語りかけるムンジウ(教授っぽくて大好き)、インディーズ作品の自由度の高さに今も希望を託すアサイヤス、作風そのまんまのテンションと楽観性のラーマン、そしてポエトリーリーディングみたいなロルヴァケルにまたほろりときた。何回泣かせるの…

キリルがとてもウィトゲンシュタィン

2022年のカンヌ映画祭に集まった監督たちに「映画は死にゆく芸術か？」を問う。

コロナ禍にテレビやショート動画の台頭、動画配信プラットフォームの隆盛に対して色々いってる人が多い。でもデプレシャンの既に映画は死んでいるという話が一番しっくりきた。こういう人は何がどうあれ映画を撮り続けるのだと思う。

キリル・セレブレンニコフは急に着替えて踊り出してイカれてる