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LOST LAND/ロストランドの作品紹介

LOST LAND/ロストランドのあらすじ

難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。二人は家族との再会を願い、叔母と共に遠く離れたマレーシアへ旅立つことに。パスポートを持てない彼らは密航業者に導かれるままに漁船へと乗せられる。自然の猛威や人身売買の危機に阻まれながらも、姉弟は過酷な道のりを必死に乗り越えていく。

LOST LAND/ロストランドの監督

藤元明緒

原題
HARÀ WATAN/LOST LAND
公式サイト
https://lostland-movie.com/
製作年
2025年
製作国・地域
日本フランスマレーシアドイツ
上映時間
99分
ジャンル
ドラマ
配給会社
キノフィルムズ

『LOST LAND/ロストランド』に投稿された感想・評価

3.9
「ここにいていい」を探す旅

ロヒンギャは、主にミャンマー西部ラカイン州に暮らしてきたイスラム系少数民族であるといわれる。
けれど長くミャンマーで「自国の民族」として認められず、多くの人が国籍を持てないまま生きてきた。

国籍がないことは単にパスポートがないだけではなく、自由に移動できず、教育や就労や結婚や医療にまで制限が及ぶ。
「そこに生きている」のに、「制度の上では存在しない者」にされてしまう。

今作はロヒンギャの現実を、幼い姉弟の旅を通して描く作品である


舞台はロヒンギャの難民キャンプ。
5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラは、家族との再会を願い、叔母とともに遠く離れたマレーシアを目指す。
けれど、彼らには正規の移動手段がない。
パスポートを持てない彼らは、密航業者に導かれるまま漁船に乗せられ、危険な旅へと踏み出していくーー


ドキュメンタリータッチの今作

脱北を扱った映画を思い出す。
国を出るための“コーディネーター”や“案内人”は、救いの手であると同時に、貧困ビジネスや詐欺、人身売買の入り口にもなりうる。
そこには善意だけでなく、露骨な搾取が混ざっている。
逃げるしかない人たちの弱さにつけ込む人間がいる。
でも、その手を借りなければ逃げることさえできない。
その構造があまりにつらい。



この映画は幼い姉弟を中心に描くため、ロヒンギャの人々はほとんど一貫して「保護されるべき被害者」として映る

もちろん、シャフィとソミーラに罪はない。
子どもたちがこんな目に遭うこと自体が、どう考えてもおかしい。

けれど、ロヒンギャ問題には前述の問題以外にも、
ラカイン州の歴史、植民地期から続く人の移動、ラカイン仏教徒側の不満、ロヒンギャ側の武装組織、周辺国の移民政策や治安問題、密航ビジネス…いくつもの問題が複雑に絡み合っている。

単純な被害者/加害者の構図だけでは語れないことも、問題を難しくしている。

今作はそういった背景は知らせず、ただ幼い被害者の逃避行として見せることには、少し危うさも感じてしまう。

この映画だけを見ると「なぜここまでのことが起きているのか」よりも、ロヒンギャという言葉だけが一人歩きして「かわいそうな子ども」という印象だけが強く残ってしまうかもしれない。

その意味では、背景説明の少なさには少し不誠実さもあるのかもしれないが、問題を理解するための答えではなく、調べ始めるための入口になる映画になることが大切なのだと思う。


とはいえ、5歳と9歳の子どもに、国籍法も、民族対立も、武装組織も、国際政治も分かるはずがない

彼らには空腹と恐怖と疲労、そしてお互いの手を離さないことだけだ。
幸せな国に生まれていたら、こんなことにはならなかったのに。。。と、そう思ってしまう場面が何度もあった。


特に姉ソミーラの姿があまりにいじましい。
まだ9歳なのに、弟を甲斐甲斐しく面倒見て、泣きそうになりながらも必死に前へ進もうとする。
その姿は、ショーン・ベイカー監督作品に出てくる子どもたちのように、無垢で、たくましく、そしてこちらの胸を容赦なく抉ってくる。
演技なのを忘れてしまい、胸が痛いシーンが沢山ある。

また、今作の中で印象的だったのは、ロヒンギャの人たちが子どもに一様に優しいことでもあった。
過酷な状況の中でも、子どもを見る目だけは柔らかい。
そのことが救いであると同時に、より苦しくもある。
こんなに子どもを大切に思っている人たちが、なぜ自分たちの子どもをこんな危険な旅に出さなければならないのか。
守る為に危険な旅に出すしかない辛さが苦しい。



ニュースでロヒンギャ問題について知っているつもりだった

難民キャンプの映像やミャンマーの迫害の話も見てきたはずだった。
けれど、この映画を観て、自分はずっと“分かったふり”をしていただけだったのかもしれないと思った。

世界には難民問題が多すぎる。
戦争も、迫害も、飢餓も、災害も、毎日のように流れてくる。
あまりに多すぎて、一度ニュースを通過したものを、深刻に考え続けることができなくなっている。
それは冷たいという感情ではなく、ダンバー数のように人間が心から抱えられる他者の数には限界があることも感じてしまう。

けれど、ニュースでは“難民問題”としてひと括りに通り過ぎてしまったものが、今作のように映画になることで、ひとりの子どもの顔になったように思う。

ソミーラが弟の手を引く。
シャフィが姉を見上げる。
そんな彼らの姿がずっと目に焼き付いてしまう映画だった。



『ロスト・ランド』というタイトルが響いてくる

失われているのは、故郷としての土地だけではない。
国籍であり、法的な居場所であり、「ここにいていい」と言ってくれる制度そのものなのだと思う。

ロヒンギャの人々は、
ミャンマーでは国民として認められず、
バングラデシュでは難民キャンプで暮らし、
タイでは捕まれば送還の危険があり、
マレーシアでも不法滞在という不安定な立場に置かれる。
どこかへ逃げても、本当に受け入れられるとは限らない。
移動しても、移動しても、足元の地面は自分のものにならない。

日本にもロヒンギャの人たちは暮らしている

特に群馬県館林市には、日本国内でも大きなロヒンギャのコミュニティがあるという。
けれど、日本にいるからといって、全員がすんなり難民として認められているわけではない。
日本の難民認定制度の厳しさに加え、ロヒンギャ問題は対ミャンマー外交や経済関係、ミャンマー政府側の見解とも絡み、ここ日本においても単純な話ではない。

難民として認められた人もいれば、人道的配慮による在留資格で暮らす人もいる。
なかには、なお不安定な立場に置かれている人もいる。
言葉の壁、就労、生活の不安、子どもの教育など、逃れてきた先にもまた別の困難が続いている。

『ロスト・ランド』というタイトルは、どこへ行っても確かな居場所を持てない人たちの宙ぶらりんな生を指しているように思える。


遠い国の悲劇では終わらない。

日本で暮らすロヒンギャの人たちだけではなく、そのほかにも難民申請をしている人々はたくさんいる。
彼らが日本の社会やコミュニティに馴染み、参加できるような仕組みや教育の制度設計が、少しずつでも充実していくように願うばかりだ。

できることは少ないかもしれないが、知らないままでいることと、知ったうえで考え続けることの間には、きっと小さくない差があると思っている。

今作は、その効果を信じている作品なのだと思う。



ネタバレあーだこーだnote
https://note.com/chinaco_cinema/n/n0c1695fed607
新鋭・藤元明緒監督の最新作で、昨年の第82回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で、日本人初となる審査員特別賞受賞を含む三冠獲得やレッドシー国際映画祭では最高賞を受賞。

この作品は、フィクションです。

しかしながら、フィクションとは感じさせないリアリティがあります。この作品に描かれた内容は、実際に、ロヒンギャの方々に起きた事実や実体験が元になっています。主人公の兄弟を含め、約200名のロヒンギャの方が出演しています。彼らの表情、彼らの語る体験は、事実に基づくものです。

2026年4月13日には、インド洋のアンダマン海で、ロヒンギャの難民とバングラデシュ人を乗せた船が転覆し、子どもを含む約250人が行方不明となった、というニュースが、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際移住機関(IOM)から発表されました。

この作品に描かれていることは、現在も起きていることです。

第38回(2025年)東京国際映画祭で鑑賞後、監督の共同取材をさせていただいた記事を掲載しています。よければ、どうぞ。
https://newspicks.com/news/16497417/
4.0
国連に「世界で最も迫害されている民族のひとつ」と位置付けられているロヒンギャ。ミャンマーの西部に移住するイスラム系少数民族だが、ミャンマーから国籍を認められず、無国籍として激しい迫害や差別を受けてきた。2017年国軍による掃討作戦で75万人以上がバングラディッシュに逃れ、現在も118万人以上が劣悪な環境の難民キャンプで生活している。日本でも群馬県館林市に200〜300人のロヒンギャのコミュニティが存在していると記事で読んだことがある。

12年間ミャンマーを中心に東南アジアで活動している藤元明緒監督がメガフォンを撮った本作は、日本とミャンマーを舞台にした「僕の帰る場所」と2作目の「海辺の彼女たち」に続く長編3作目。世界の映画祭で高く評価されている。

故郷を追われた難民の幼い姉弟が家族との再会を求めて命懸けで国境を越える姿を描いた本作。難民たちの過酷な密航の旅路を子どもの視点から映し出し、容赦ない現実の映像の数々に言葉を失う。

難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。家族との再会を願い、叔母とともに遠く離れたマレーシアに向かう。パスポートも持つことが出来ない彼らは密航業者に導かれるまま漁船に乗せられ、自然の猛威にさらされ、警備隊による追跡に怯え、人身売買の危機に追い込まれ、それでも過酷な道のりを必死に乗り越えて行く。

実際のロヒンギャの証言のもとに製作された本作は、主演を務める本当の姉弟である2人をはじめ、キャスト総勢200人を越えるロヒンギャたちを起用。本物の姉弟だからこその自然な日常の会話や仕草がナチュラルに映し出されてドキュメンタリーのような雰囲気を出している。演技未経験ゆえに殆どアドリブだったような2人の姿が愛おしく、リアリティ溢れる悲惨な姿に胸が苦しくなる。

決して救いのない終わりかた。幼い子の行く末を心配せずにはいられない。誰がこの人たちを助けられるのだろうか?辛い作品ではあるけれど、同じ地球で生きる人たちの現実の厳しい物語を知ることが出来た。

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